<小話3>:甘い星とお祝いの歌

 

ツイッターおしゃべりまとめ

〇前世&金持ち父さん・貧乏父さん編〇

 

 

【登場人物】

 

スルー(27)

身長165cm。体重49キロ。基本的に貧乏なので太るに太れない。

 

ヨル(30)

176cm。体重62キロ。三十路を過ぎてから、油こいものがもたれるようになってきた。

 

イン(10)

134cm。体重30キロ。基本的に貧乏な上に、何かに夢中になると、食事をおろそかにするので太るに太れない。

 

オブ(10)

138cm。体重35キロ。食事があまり好きではなかったが、村に来てから頑張って食べている。

 

 

 

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スルー『甘い星ってどんな味だ?』

ヨル『甘い』

スルー『甘いってどんな味だ?』

ヨル『また訳のわからない事を』

スルー『甘い物というのは殆ど食べた事がないからな。俺の“甘い”で合ってるのか知りたい。春の花の蜜を吸ったら出る甘さか?』

ヨル『……明日持ってきてやる』

スルー『ホントか!?』

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ヨル『ほら』

スルー『これが甘い星。いろんな色があって、小さい。表面はぼこぼこしている。匂いは…甘い』

ヨル『(珍しく反応が静かだな)』

スルー『これは食べ物なのか?』

ヨル『当たり前だろう』

スルー『綺麗で可愛い。これは、もったいなくて食べれんな…うちで飼おう』

ヨル『飼う…だと?』

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ヨル『食べろ』

スルー『俺の次に可愛いから、これはもう家族だ』

ヨル『……食べなければ溶けるぞ』

スルー『とける?』

ヨル『ああ。そういうモノだ』

スルー『……こんなに可愛いのに』

ヨル『また持ってきてやる。だから、食べるんだ』

スルー『お前ら可愛いのに。ごめんっ』

ヨル『どんな心境だ』

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スルー『………こんな、甘いモノ、生まれて初めて食べた。これが“甘い星”か。あぁっ、甘いってこういのを、言うのか』

ヨル『(この男は、こんなに静かに恍惚とするのか)金平糖だ』

スルー『こんぺいとう。そうか、そうか……甘い、甘いなぁ。甘いのは……あぁ、素晴らしいな』

ヨル『っ、その声やめろ』

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スルー『インがお前の事を夜、お前の息子の事を月みたいと言っていたぞ!俺もそう思う!お前ら親子は素敵だなぁ!』

ヨル『そんなおかしな事を言うのは、お前ら親子くらいだ』

スルー『そうか?俺はおかしいとは思わないけどな!ヨル、お前はそろそろ自分に自信を持て!お前は素敵だ!』

ヨル『…』

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ヨル『お前ら親子にそんな事を言われても意味などない。お前がどんなに俺を素敵だなんだと言おうと、無意味だ』

スルー『そうか…無意味か』

ヨル『っ』

スルー『俺は自分の意見に自信がある。だから、お前が無意味ではないと思える相手から、素敵と言われる日もきっと遠くないはずだ』

ヨル『っ』

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ヨル『………………』

スルー『さて、今日はもうたくさん歌ったし、もう帰るか!明日も朝から畑に行かねばならんしな!』

ヨル『……っ!』

スルー『あ!こんぺいとうは、甘くて素敵だったぞ!また、明日な!ヨル!』

ヨル『……っ

 

……む、無意味では、ない。無意味などでは……はぁぁ』

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執事『旦那様。今日はお早いお帰りでしたね』

ヨル『酒を、頼む』

執事『最近、飲まれていないようでしたので…ワイナリーに全て仕舞ってあります。お部屋でお待ちください』

ヨル『…やはり、いい』

執事『それが良いと思います。酒はその一瞬しか、思考を鈍らせてはくれません』

ヨル『そう、だな』

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スルー『なぁオブ。お前にとって意味のあるものってなんだ?』

オブ『なに急に』

スルー『いいから!オブの意見が一番参考になるんだ!』

オブ『意味のあることは…インかな』

スルー『へえ!ならイン以外は無意味か?』

オブ『いや、そこまでは言わないけどまぁ似たようなモノかな』

スルー『ふうむ』

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スルー『それならオブ。お前が一番褒められて嬉しいのはインか?』

オブ『だから何なの?!』

スルー『お前の意見が一番参考になるんだ!』

オブ『なんのだよ…。あー、そうだね。僕はインにすごいって言われる為に頑張ってる』

スルー『お前ほんとにイン好きだなー!』

オブ『うっ、うるさいなぁ!』

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スルー『あんまり参考にならないなぁ』

オブ『何なんだよ……あ』

スルー『ん』

オブ『イン程じゃなかったけど』

スルー『おお』

オブ『お父様に…よくやったって言われた時は……嬉しかったかも』

スルー『おぉ!そうか!やっぱり父親に褒められると嬉しいのか!』

オブ『イッ、インが一番だから!』

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—-そうか。無意味か。

 

ヨル『(どんな顔で会えばいいん…)』

スルー『おーい!ヨル!ヨル!ヨル!おーい!』

ヨル『……はぁ。心配するだけムダか』

スルー『ん?なんか言ったか?』

ヨル『なにも』

スルー『なぁ!そんな事より、ヨル!今から俺はお前の父親になるぞ!』

ヨル『……何がなんだか』

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スルー『俺は今からお前のお父さんだ!ほら!お前は素敵だぞ!最高だ!よしよし』

ヨル『っ』

スルー『息子にとって父親は無意味じゃないからな!だから、俺は今お前にとって無意味じゃない!ヨルは素敵だ!嬉しいか!?無意味じゃないか?!』

ヨル『……っふ』

スルー『笑った!』

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イン『ここで、まわる!』

オブ『えっ、まって。なに?その動きはなに?』

イン『これはね、今度村で婚姻のお祝いがあるから、そこでオレはお父さんの歌に合わせて踊るんだ!その練習!』

オブ『いつ!?僕も見たい!インの踊り!』

イン『花嫁さんを見る日だよ?』

オブ『あ、うん。ソレもみるみる』

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スルー『オブ!お前も婚姻のお祝いに参加するのか!それなら、お前も今後俺の声の虜だろうな!』

オブ『え?なに?スルーさんも、何かするの?お願いだからインの踊りの邪魔だけはしないでよね』

スルー『……お前はどこまでいってもインの愛好者か。俺は歌うんだよ。俺の歌に合わせてインが踊るんだ』

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オブ『へぇ、スルーさん大丈夫?まともに歌える?っていうか“歌”ってわかる?お願いだからインの踊りの邪魔だけは』

スルー『おいおい!オブ!お前…え!?インは俺の息子だぞ?父親である俺は基本的にインの全て上だ!』

オブ『お願いだからインの踊りの邪魔だけは!』

スルー『そ、そこまでか…?』

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スルー『イン、ここでお前も少し歌に入ってこい!』

イン『わかった!』

スルー『お前が声変わりする前で良かった。ま!声変わりしても、一緒に歌いたい歌がたくさんあるけどな!』

イン『オブはこないだ声変わりしてたよ?』

スルー『あっはは!あれは血筋的にきっと歌はてんで駄目だろうな!』

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ヨル『随分と楽しそうだな』

スルー『俺はいつだって楽しいが!』

ヨル『いつもに増して、という意味だ』

スルー『さすが俺の愛好者!俺の繊細な変化にすぐ気付くとは!特別に婚姻の式典で歌う予定にしてる歌を披露しよう!』

ヨル『婚姻の式典』

スルー『インと二人で歌って踊ってお祝いするのさ!』

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ヨル『変わり者のお前が、か?』

スルー『変わり者だからこそさ!普段とは違うお祝い事や祭りには駆り出されるんだ!なにせ!俺の歌だけは皆認めてるからな!』

ヨル『……歌だけ、か』

スルー『俺はインと二人で歌って踊るのは楽しみで仕方がない!』

ヨル『…お前は、強いのか鈍いのか。まぁいいか』

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はいじ「多分、そろそろ本編の前世編の方にもスルーが少しだけ登場しそうです。このお父さんが、最終的に病に臥せったインを見捨てる判断をする、その瞬間を書くのが、こう……楽しみですね!」