ツイッターお喋りまとめ
〇前世&金持ち父さん貧乏父さん〇
【婚姻の宴までの前日譚編】
〇前書き
はいじ「こちらのお喋りには、次頁から始まる番外編「婚姻の宴話」までの皆のお喋りを含みます。ちなみに、10歳だったイン達も今や11歳。ニアは9歳。ビロウ10歳。スルー28歳。ヨル31歳。エア33歳。地味に、地味に時間が進んでいる世界です。季節は春先となっております」
スルー(28)
実は7人兄弟の長男。
歌と踊りが大好きな貧乏人。頭はキレるが、その表現方法が独特な為、他人にはなかなか伝わり辛い。他人で唯一、話を遮らずに聞いてくれる、ヨルの役に立ちたいと、ずっと考えている。
ヨル(31)
4人兄弟の末っ子。
スルーとの関わりで、少しだけ自己肯定感が高まった人物。地味にスルーからの抱擁を待ち望んでいる。あとは、仕事の合間にスルーへの貢物を考える時間が、日に日に増えていっている。
イン(11)
スルーの息子。ニアの兄。
妹のニアと違って余り要領がよくない。よくない故に、一生懸命なんでも頑張る。声変わり前に歌える歌を、今はスルーから沢山習っている。スルーとは親子だが、殆ど友人のような関係。
オブ(11)
ヨルの息子。
ともかくインが好き。インに格好良い所を見せる為に、毎日必死に木登りと、かけっこを頑張っていたお陰で、体調を崩さなくなった。以前より、父親との仲が良くなった。
エア(33)
4人兄弟の3番目。
ヨルの兄。ビロウの父。
本当は根暗だが、それはダサイと思って必死に陽キャで隠している。ヨルの事は心底ダサイ奴とバカにしている。
ビロウ(10)
エアの息子。
体も弱く、性格も暗いオブの事を心底バカにしている。インをバカにするのが大好き。
ただ、ミーハーで驚くほど惚れっぽい。
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ヨル『お前でも、照れる事があるのだな』
スルー『…あぁ、俺も自分で驚いている。“恥ずかしい”というのは、こんなにも落ち着かない気持ちなのだな』
ヨル『まるで、恥ずかしく思った事がないような口ぶりだな』
スルー『ない。俺は“恥知らず”なんだ』
ヨル『言葉は合っているが、その言い方はやめろ』
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オブ『あれ、イン?インが屋敷まで来てくれるなんて珍しいね。もしかして俺に会いに来てくれたの?』
イン『ううん、違うよ!』
オブ『あ、そう(そんな笑顔で全否定しなくても…)』
イン『オブの家からたまに馬が出てくるでしょう?馬が見たくて』
オブ『馬?なんで?』
イン『かっこいいから!』
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オブ『イン、ほら。あーん』
イン『あーん』
スルー『え?何をしているんだ?ちょっ、なんでオブはインの口の中に指を突っ込んでる!?どんな遊びだ!怖いぞ!お前ら!』
オブ『うるさいな。インの歯がう蝕してないか見てるんだよ。遊びじゃない。インがう蝕したら大事だからね』
イン『はうはうは』
スルー『ふうむ!そうか!それならオブ!俺も』
オブ『見る訳ないだろ!?』
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スルー『イン差別だ!』
ヨル『また、オブか』
スルー『オブが、インの口にだけ指を入れて俺には入れてくれないんだ!』
ヨル『俺の息子は一体、村で何をしているんだ…』
スルー『どうやら、うしょくとやらの検査をしてるらしい』
ヨル『う蝕…あぁ。そういう事か。それなら、俺がしてやろう。口を開けろ』
スルー『っ!嫌だ!』
ヨル『……っいいから開けろ!』
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ヨル『オイ!口に指を入れて欲しかったんだろ?ほら、早く開けろ!』
スルー『~~っ!嫌だ!』
ヨル『スルー!お前まだお返しが出来ないなどと訳の分からないことを考えて……』
スルー『っは、うう』
ヨル『スルー…お前もしかして』
スルー『はう、っうう』
ヨル『照れているな?』
スルー『あぁ……』
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ヨル「ほら、今日の分だ」
スルー「いっ、いらん!何でヨルは、そう俺に何かモノを渡そうとするんだ!俺は何も返せないと言っているだろう!」
ヨル「返しなどいらんと、俺も何度も言っている筈だが?これは、練習だ。ほら、早く受け取れ」
スルー「いっ、いくら俺の愛好者とは言え……それは何だ?」
ヨル「気になるか?」
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スルー『き、気にならない』
ヨル『お前が受け取らないのであれば、これは捨てるしかないな』
スルー『まっ、待て待て!それはいけない!その何か分からかいモノが可哀想だ!見せてみろ!』
ヨル『ほら』
スルー『これは…種?種にしては大きいような、それに変な形だな』
ヨル『種だ』
スルー『なんの種なんだ?』
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ヨル『植えて、お前が育ててみれば、春先には分かる』
スルー『……これは、その。変わった形だが、よく見ると俺の次に可愛いから、うちで飼う』
ヨル『そうだな』
スルー『お、お返しはするぞ!春になったら、咲いたナニカを苗にして、ヨルに持っていく!』
ヨル『まったく、強情な。……いいだろう』
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<解説>
はいじ「ヨルは、余り高価なモノをスルーに渡すと、この場所に来なくなると分かっている為、貢ぐアイテムは絶妙に断り辛いモノを選んでおります。例を挙げるとするならば、切手、酒瓶、羽ペン等を今まで上げています。そこに今回、お花の種new!といった所です。この日から、スルーは庭の一角に植えた種の様子を、毎日観察するようになります」
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ヨル『インを家に泊めたい?』
オブ『は、はい。ダメでしょうか』
ヨル『ダメではない。ただ、それによって起こり得る不都合について、お前は分かっているから、今まで誰も屋敷に呼ばなかったのだろう』
オブ『……一人を特別扱いすると、非難の矛先が、その一人に向く』
ヨル『そうだ。だから…』
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オブ『(やっぱり、ダメか……分かってた。インだけっていうのが明らかになりすぎると、皆から影で何か言われる。しかも俺じゃなくて、インが。地位って面倒だな)』
ヨル『だから、バレないようにやれ』
オブ『え゛っ!?いいんですか!?』
ヨル『後はもうお前の手腕だ。上手くやりなさい』
オブ『………!はいっ!』
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ヨル『(……はぁ。そうだ。対等な地位の関係であれば、一人への特別扱いなど何の問題もない。が、そこに身分の差が生まれると、途端一人への特別扱いに“寵愛”などという言葉が使われるようになる。…こんな事もスルーは最初から、本能的に理解している)…普通、金と権力には擦り寄るモノだろうに。まったく、アイツは』
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イン『オブ!覚えてる!?村で結婚の宴の日!オレがお父さんと踊って歌う日だよ!』
オブ『もちろん!僕は賢いからそんな大切な日の事は忘れようとしてと思っても忘れられない!』
イン『オブも見に来てくれるよね?』
オブ『当たり前だよ!何があっても見に行くから!』
イン『オレ!頑張って踊るね!』
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ヨル『最悪だ』
オブ『どうしたんですか?お父様』
ヨル『兄さんが、エアが来る』
オブ『えっ!ど、どうして?』
ヨル『知らん。どうせ碌な事じゃない。…ちなみに息子も連れて来るそうだ』
オブ『え゛っ!?ビロウも?!いつですか!?』
ヨル『水の月3妃日』
オブ『そ、その日は……』
ヨル『ああ』
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オブ『……』
ヨル『……』
オブ『あの、僕は……その。あの。行く所があって』
ヨル『いいのか』
オブ『え?』
ヨル『きっと、お前が此処に居なければ、ビロウはお前を探しに行くだろう。あいつらの目的は俺達だ』
オブ『……っ』
ヨル『最悪だ』
オブ『最悪だ』
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ヨル『……』
スルー『ヨル?どうした?今晩は元気が少ないな。俺の歌で元気を増やすか?』
ヨル『悪いが、お前の歌では、元気は増えない』
スルー『なら、どうすればヨルの元気は増える?あ!抱擁か?』
ヨル『いや、少し助言を、くれないか』
スルー『じょ、助言!?俺がか!?いや…俺は、変わり者だから』
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ヨル『お前は、またそんな事を……なら、もう話を聞くだけでいい。聞いてくれないか』
スルー『…き、聞くだけなら』
ヨル『もうすぐ、会いたくない奴が此処へ来る。心底会いたくない。本当に嫌な奴だ。昔から俺を末っ子だからと馬鹿にしてくる』
スルー『…それは、ヨルにとって“意味のある者”か?』
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ヨル『いや、ない。全くない』
スルー『なら簡単さ!どうでも良い奴の言葉は聞かなくていい!嫌なヤツに何か言われてる時も、沢山ある“好きな事”を考えて過ごすといいんだ!村長の説教の時なんか、いつもそうやってる!だから、俺は最近、説教の時はヨルの事を考えて過ごしているぞ!』
ヨル『……』
スルー『だからヨルも俺の事を考えて過ごすといい!』
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ヨル『まったく。お前は結局、俺に助言をくれてるじゃないか』
スルー『っ違う!これは助言ではない!俺の体験談だ!…なぁ。ヨル、元気は増えたか?』
ヨル『そうだな。そこそこといった所か。まぁ、あと一つ揃えば完璧になる』
スルー『なんだ?』
ヨル『抱擁をくれるか』
スルー『っもちろんだ!』
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エア『ったく、田舎の僻地でアイツは一体何をやってるんだ。本家の集まりにも来ず、お陰で俺が兄さん達に色々言われた。避雷針は避雷針らしく、役割を全うしてもらわないと』
ビロウ『お父様、楽しそうですね』
エア『当たり前だ。俺は弱い奴と、弱い者虐めが大好きなんだからな』
ビロウ『オレもです』
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オブ『イン、ごめん。婚姻の宴の日、もしかしたら僕は、行けないかも』
イン『えっ!えっ!ど、どうして?オブはオレが歌って踊る所を見てくれるんでしょう?』
オブ『嫌なやつが僕に会いに来るんだ。だから僕が婚姻の宴に行くと、きっとソイツも宴に来る。みんな嫌な想いをするかも』
イン『……』
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イン『オブ。その嫌な奴からオブは守ってくれないの?嫌なことされてる、オレ達をオブは黙って見てる?』
オブ『っ!そ、そんなことさせないよ!僕がインを守るよ!そのために頑張ってるんだから!』
イン『ならいいじゃん!嫌な事なんてないよ!オブが守ってくれるんだから!』
オブ『………うんっ』
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エア『俺が会いに行ったらアイツどんな顔をするんだろうな。一見、表情変わらないけど、嫌がってるのバレバレなのがいいんだよ。あぁっ、早く会いたいもんだ』
ビロウ『息子のオブはまだ分かりやすいです。すぐ泣きそうになるし。あれで本当に年上かと疑いたくなる』
エア『ったく。あの親子、性格が暗いんだよ。だから自分が虐めの標的にされてるって事に気付いてないのがまた面白い』
ビロウ『ふふ。俺も早く会いたいです』
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スルー『ヨル。お前の会いたくない者は何故、お前に会いに来るんだ?』
ヨル『さぁな。向こうは俺を下に見て蔑んでいるようだからな……俺が本家に戻らない事に腹を立てて、文句の一つでも言いたいのだろう』
スルー『下に……』
ヨル『俺は兄弟の中でも末っ子だからな。いつも馬鹿にされてきたのさ』
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スルー『きっと、その子は』
ヨル『俺の兄だ。子供ではない』
スルー『いや、子供だ。自分よりも下がいるのだと、自分に言い聞かせて必死に立っている小さな子供だ』
ヨル『……アイツらは、兄達はいつも自信に満ち溢れているように見えるが』
スルー『本当に自信に満ち溢れている者は、下など顧みない』
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ヨル『!』
スルー『人は上下ともなると、距離を上手く測れなくなる生き物だ。足元に居ると信じていた者が、実は冷静になって同じ目線に立ってみれば、自分より遥か前を行っているという事もある。相手の弱虫に合わせて、自分を無理やり下に持っていく事はない。ヨル。冷静に同じ目線に立ってみろ。案外大した事など無いのかもしれないぞ?』
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スルー『だって、ヨルはそうやって俺を“変わり者”扱いせずに、す、すっ、すばらしいって言ってくれたじゃないか!それは、ヨルが冷静に“同じ目線”で俺を見てくれたからだ。本当の強者は強ぶらない。今のヨルのように!ヨルお前はもう弱虫じゃないから、大丈夫だ!』
ヨル『スルー……俺は、』
スルー『さぁ、ヨル。抱擁をしよう』
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ヨル『(俺は“ヨル”ではない。本当の名前の自分でも、スルーの言うように、俺は強者になれるだろうか。あぁ、出来る事なら俺はずっと“ヨル”がいい。こんな俺が弱虫でなくて何だというのだろう。あぁ、スルー。スルー。俺は、お前に本当の名前を呼ばれるのが怖い。けれど、呼んで欲しいとも思う。なんて、矛盾なんだ)』
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イン『お父さん!オブも婚姻の宴に来てくれるって!途中来れないって言ってたけど、頼んだらやっぱり来てくれるって言ったよ!オレ頑張って、歌って踊らなきゃ!』
スルー『へえ!やっぱりオブはインの筋金入りの愛好者だな!』
イン『そう!オブはすじがねいりのオレのあいこうしゃだよ!』
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イン『婚姻の宴、楽しみだなー!オレ、いつもは着ない服を着せてもらえるんだよ!』
オブ『やっぱり絶対に行かないと!もうビロウの事なんて、本当にどうでもよくなった!』
イン『オブはオレのすじがねいりのあいこうしゃだから、一番前で見れるようにお願いしておくね』
オブ『えっ、あっ、ありがと』
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スルー『オブは婚姻の宴に参加するそうだが、お前はやっぱり難しそうか?』
ヨル『どうだろうな。けれど、そうか。オブは行くのか』
スルー『ヨル。明日は一人で頑張れるか?』
ヨル『無理だと言ったら、お前が側に居て、俺を助けてくれるのか?』
スルー『……』
ヨル『悪い。今のは忘れてくれ』
スルー『…助けたい。俺はヨルの手助けがしたい!』
ヨル『っ!』
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スルー『俺はヨルを助けたい。俺はどうしたらヨルの助けになれる?教えてくれ』
ヨル『……俺の、見える所に居てくれ』
スルー『それなら尚の事。婚姻の宴に参加しろ。ヨル。そこには俺も居るから』
ヨル『…』
スルー『……なぁ、内緒だぞ?明日は元々ヨルの為に歌うつもりだったんだ。花婿と花嫁には悪いがな。だから、是非、ヨルには聞いて欲しい』
ヨル『……考えて、おく』
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番外編【金持ち父さん、貧乏父さん】
(婚姻の宴話~当日編~)