長編お喋りシリーズ
(こちらは、最後までお喋り形式です)
外伝:アウトの赤ちゃん帽子
———前書き———–
ある日、アウトとプラスは雑貨屋さんで、とある可愛らしいモノを見つける。二人でそれぞれ買ったフワフワの可愛らしいモノは、アウトとプラスの心をフワフワにしたが、けれど、周囲にあらぬ誤解を生む事になる。
そんなお話。
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【赤ちゃん帽子を買う成人男性2人】
プラス「この帽子はかわいいな!俺にとても似合いそうだ!」
アウト「赤ちゃん用の帽子だぞ」
プラス「買う!」
アウト「いや!だからこれは赤ちゃん用で!プラスにはちょっと小さいし…ホントに被るのか?無駄遣いにならない?」
プラス「これから冬だし、寝衣として使う!」
アウト「…いいかも!」
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アウト「じゃあ、俺も……俺も、か、か、買う!確かに暖かそうだし!」
プラス「こっちには!う、うさぎが!やっぱり俺はこっちにする!アウト、お揃いにするか?」
アウト「俺はくまがいい。このクタッとしてるのが……いい」
プラス「よし!決まりだ!買いにいこう!」
店員「(何だ、あいつら)」
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※補足
はいじ「お金を上手に貯められない二人」
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【赤ちゃん帽子をかぶる成人男性2人】
寮の鏡の前
アウト「やっぱり被るっていうより、乗っかるって感じになったな」
プラス「けど!アウトも俺も乗ってるだけで似合ってる!素敵だな!」
アウト「それに、乗ってるだけでもあったかい…」
プラス「毛もこ達が頭の上に居るみたいだ…」
アウト・プラス「「ふわふわで、きもちいい」」
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※補足
はいじ「あまりの手触りの良さに、アウトはこの帽子をカバンに入れて持ち歩くようになります」
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【赤ちゃん帽子の産む誤解】
バイ「トウ…ちょっといいか」
トウ「どうした。何かあったか?」
バイ「深刻っつーか…アウトの部屋に、赤ちゃん用の帽子があってさ」
トウ「は?」
バイ「いや、ナイとは思ってる。思ってるけどさ、アウトってなんか、ちょっと他とは違う体質になってたりするみたいじゃん……?」
トウ「…まさか」
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バイ「ほら、ウィズって気持ち悪いじゃん?」
トウ「まぁ。そうだな」
バイ「粘着質だし、しつこいし、束縛屋だし、マナも濃いし…なんか色々濃そうじゃん?」
トウ「…言うな、気持ち悪い」
バイ「変態×特異体質って…ほら?」
トウ「待て待て、落ち着くんだ。バイ。それは、荒唐無稽が過ぎるだろ!」
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バイ「俺からはとても聞けなかったからさ……ちょっ、お前。ウィズにそれとなく聞いてきてくれよ」
トウ「さすがのお前の頼みでも、嫌過ぎるんだが」
バイ「ほら、もしマジでおめでたかったら……やり方聞いてこいよ。出来たらお前の子供を産んでやるからさ。な!」
トウ「……っく。わ、わかった」
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※補足
はいじ「赤ちゃん帽子、あらぬ疑いをうむ」
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【赤ちゃん帽子は誰のモノ】
トウ「あのさ、ウィズ」
ウィズ「なんだ」
トウ「……なと言ったらいいのか」
ウィズ「なんだ?今日はえらく早く店に来たかと思えば、言いたい事があるならハッキリ言え。お前には回りくどい言い方は無理だ」
トウ「なら、単刀直入に聞くが……お前ら子供でもできたのか」
ウィズ「……は?」
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ウィズ「それは、俺と誰の子を想定して話している?」
トウ「…お前と、アウト」
ウィズ「はぁっ、諦めろ。お前とバイの間には、今世では子供は作れん。いつまでも未練がましく縋ってどうなる」
トウ「ちっがう!違うんだ!どうやら、アウトが赤ん坊用の帽子を買っていたらしく」
ウィズ「贈答用だろ」
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トウ「部屋に普通に置いてあったらしい。心当たりはないのか?アウトは特異体質なんだろう?そしてお前は色々気持ち悪いし!なんか色々濃そうだろうが!あり得るんじゃないのか!?」
ウィズ「言うに事欠いて何を!誹謗中傷も良いところだっ!心当たり云々は……あるに決まってるだろうが!恋人同士だぞ!」
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トウ「なんだ、結局お前も知らないのか。バイが聞いて来いというから、こんな気色の悪い話をしたのに……ウィズ、お前は本当にアウトの事を何も知らないんだな」
ウィズ「ぐっ。な、なんだと?」
トウ「もし、“そう”だとしても、お前には前科があるし、アウトも言えないのかもしれない」
ウィズ「…」
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※補足
はいじ「思えば、くまさん帽子からえらく遠くまで来たものだなぁ」
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【赤ちゃん帽子への追及】
アウト「あー、今日も疲れたー」
バイ「(おっ!もう、トウ居んじゃん!あの顔は聞いたな!今晩はご褒美をやろう!)おじゃましまーす!」
ウィズ「……アウト!俺との約束の1番目2番目を言ってみろ!」
アウト「あっ!えっと……1番と2番?えっと、嘘をつかない!我慢しない!」
バイ「子供との約束かよ」
ウィズ「アウト、お前俺に対して何か我慢している事はないか?」
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アウト「我慢?ないよ?俺は約束破りはしてないけど」
ウィズ「俺に隠し事はなしだ!さぁ、俺が待っているうちに、ちゃんと言え!でなければ、今夜は手酷くするぞ!」
トウ「待て。アウトが戸惑ってる」
バイ「うわぁ。拗らせきてんな。トウ、お前何言ったんだよ?」
トウ「いや、俺は別に普通に」
アウト「え?え?なに?」
ウィズ「座れ」
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アウト「俺は…ウィズに、これから怒られるのか?」
ウィズ「お前次第だ。…なぁ、アウト。お前は今、特殊な体質を持っているな?」
アウト「う、うん」
ウィズ「最近、体に変化はないか?例えば…悪阻とか」
アウト「つ、つわり?二日酔いじゃなくて?つわり?」
ウィズ「身に覚えがあるんじゃないか?」
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【俺達の情交を笑うな】
アウト「身に覚え?…あっ!こないだウィズと週末2日間まるまる情交してたりしたから?あんまり長時間、ウィズのが俺の中に入ってると、俺の場合、妊娠する可能性があるってこと!?そういうこと!?」
バイ「おいおいおい」
トウ「凄まじい体力だな」
ウィズ「……それは関係ないっ!自覚はないのか?お前、赤ん坊用のモノを買ったと聞いたぞ!?」
バイ「2日間はヤベェよ。長いとかの問題じゃないし」
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アウト「トウは短いんだよな?」
トウ「みじかっ……え!?ば、バイ?」
バイ「ちょっ、アウト!言うなって!トウが、気にするだろうが!昔からコイツはその辺ケアしてやんねーと、落ち込み方が半端ねぇんだよ!」
トウ「短……え。普通って何だ……?」
ウィズ「“情交”に普通などない。二人こそが答えだ!」
バイ「この勢いがこえーわ」
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ウィズ「お前ら二人が裏で何を話しているか、よく分かった」
アウト「…お、おこった?」
ウィズ「アウト!25の約束に1つ追加だ!?」
アウト「っまって!メモするから!あれっ?手帳は?どこ入れたかな?」
アウト、鞄から手帳を探し出す為に、鞄に入っていた、ありとあらゆる物をカウンターに取り出した。そこには、あのアウトがプラスと購入した、クマの赤ちゃん帽子も飛び出したのであった。
バイ「あっ!!出たー!赤ちゃん帽子!」
アウト「ん?」
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バイ「出たー!赤ちゃん帽子!しかも持ち歩いてるー!」
アウト「なんだよ。いいだろ。別に」
バイ「いいだろって……え?なんで?そんなん持ってるから、俺はてっきりアウトがウィズの変態のせいで妊娠したのかと思ったんだよ!」
ウィズ「バイ、お前。俺をなんだと思ってる」
バイ「変態だよ!?」
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アウト「ウィズは変態じゃない。俺に夢中で寝ないだけだ!ずっと俺を観察してブツブツ言うだけ!」
ウィズ「……もう止めろ」
トウ「俺はバイに夢中だが寝てしまう」
バイ「寝ていいよ!?寝ろ!ちっ、めんどくせぇな!アウトが短いとか言うから、当たり前の事ですら落ち込み始めちゃったよ!
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【なんで、赤ちゃん帽子?】
バイ「アウト、今は各々の情交スタイルについてはどうでもいいっ!なんだ、その明らかに赤ん坊用の帽子は!?」
アウト「雑貨屋で見つけて、かわいいし、暖かそうだから買った」
バイ「赤ん坊の帽子を?そんな事ある……?いや、アウトならアリ、なのか?」
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ウィズ「どうせ被れないだろうに」
アウト「うん、かぶれないけど。なんだろう、この帽子の顔と、手触りがさ。仕事で失敗したり、怒られた後のサカサカな心の時に触ると…ふわふわになれるんだ」
バイ「26歳とは思えない思考回路…」
アウト「歳なんて関係ないさ。心はカサカサよりフワフワがいいだろ?」
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バイ「なんていうか、アウトの考えた方って……なんか、こう……平和だよな」
トウ「そうだな。アウトみたいな奴ばかりだったら、俺達の仕事はなかっただろうな」
バイ「争いのない世の中…フワフワの世界」
アウト「馬鹿にするな!頑張れば被れるんだからな!?」
ウィズ「そこを、頑張るの……か?」
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バイ「あーあ。妊娠してたら面白そうって思ったけど違ったみたいだな」
アウト「男の俺が妊娠する訳ないだろ!バイはおめがばーすの見すぎだ」
バイ「アウトなら有り得そうだと思ったんだけどな。もしウィズの変態お陰で妊娠する事があったら報告しろよ?」
アウト「わかった」
ウィズ「わかるな!?」
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おわり
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【後書き】
アウトのくまさん帽子から、情交や性癖の暴露大会をしていた事がバレたバイとアウト。その後トウは暫く元気が出ず、ウィズはウィズで、情交中に、毎度合いの手の如く“これは、バイには言うなよ”と口にするようになったそうです。