———-幕間————
【アウトのマナの中で】
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ヴァイス『さて、僕の新作はどうだった?イン!』
イン『ぶきようごうまんひねくれきぞくかけるじゅんすいへいぼんむらびと?の話?面白いよ!凄く続きが気になるね!』
オブ『は?なに、その腹立つ組み合わせ』
ヴァイス『ん?僕が今ハマって書いてるCPのBL小説だよ?僕は字書きだからね!インの読書の練習に丁度良いだろ?』
イン『今ね、びろうに子供ができたところ!いんがびろうの子供を可愛がってるよ!』
オブ『……なんだって?』
ヴァイス『そんな怖い顔しないでよー!ビロウとインなんてよくある名前だし!』
イン『おぶも出てくるよ!』
オブ『おい!絶対偶然じゃないだろ!?どんな話!?ちょっと貸して!』
ヴァイス『いいよ。これが1巻さ!是非、オブにも感想を聞かせて欲しいね!これは、インの昔話に着想を得てるからさ!』
オブ『それ!完全に偶然じゃないだろ!?』
イン『このお話の俺と同じ名前のいんは、大人になってるから、なんか読んでると嬉しいんだー!』
ヴァイス『ささ!読んで!読んで!インはこっち。最終話だよー!』
イン『もう終わっちゃうの!?残念だなー』
オブ『はぁっ!?何コレ!?序盤からあり得ないんですけど!?』
ヴァイス『ふふ、本当にソレは、あり得ない話、かな?』
オブ『は?』
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外伝:イン、選択の時
~ビロウの鳥かご~
——-前書き——–
此方は、前回の続き【首都にて】の後、とうとう、インがオブとの再会を果たすお話です。オブに置いていかれて、数年。インの中で、オブは一体どうなっていたのか。
やっと、ビロウシリーズ終了です!
(激注意!)
不器用傲慢捻くれ貴族×純粋平凡村人
すなわち、がっつり【ビロウ×イン】です。本編からすると、NTR要素がある内容になっておりますが、R18の描写はありません。但し、これから、っぽい事をするんだろうなぁという描写はあります。
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【ビロウの不安】
——–約束の時
ビロウ『そろそろ、か』
イン『どうしたの?疲れてるの?』
ビロウ『……いや、なんでもない』
イン『ビロウ。顔色が悪いから、今日は早く休んだ方が良いよ』
ビロウ『あぁ、そうだな』
ビロウ『(俺の予定では…もう、そろそろ。インを、オブに会わせても良い頃だ。それなのに…)』
ビロウ『(オブの愛するインを、俺が手籠めにして飼ってやったと知ったら、アイツは一体どんな顔をするか楽しみだった筈なのに……俺をに憎むアイツを見たかった筈なのにっ)』
イン『ビロウ?ベッド綺麗にしたから、寝な?』
ビロウ『(この気持ちは、一体なんだ。俺は、”何を”恐れている?)』
——※補足——-
はいじ「インがオブを選ぶ可能性を想像し、震えるビロウ。完全にインに狂わされていたと、本人も知る由もない」
〇
イン『ビロウ?大丈夫?』
ビロウ『イン……お前』
イン『なあに?どうしたの。ビロウ。何か怖い事でもある?』
ビロウ『イン、お前……今でもオ』
——-オブに、会いたいか?
——-オブに会ったら、お前は俺から離れていくか?
ビロウ『っ!(今、俺は何を思った?)』
イン『ん?』
ビロウ『(俺は、インの飼い主だ。インは俺のペットで、それ以上でも、それ以下でもない。そして、インは俺のモノだ。その俺が、一体何を恐れるというんだ)』
イン『ビロウ、ビロウ。どうしちゃったの?具合が悪いの?』
ビロウ『い、いや……イン。今日は……屋敷に戻る』
イン『……はい』
ビロウ『(コイツは俺を止めない。行かないで、とは言わない。俺が、そう躾てきたからだ。それなのに、何故……俺は頷くインにすら、こんな訳の分からない気持ちになる?)』
イン『(……ビロウ。どうしちゃったんだろう?)』
店の前でしばらく立ち尽くすイン
??『インっ!』
イン『ん?』
〇
【再会】
イン『あれ?』
??『インっ!やっぱりインだ!!やっぱり、生きてたっ!』
イン『あれれ?』
??『イン、本当に……っ会えてよかった!やっぱり、俺は間違ってなかった!インは、生きてたんだ!』
イン『どうしたの?ビロウ。何か忘れ物?』
??『……は?』
??『待って。イン……俺だよ。分からない?』
イン『ビロウ?今日は様子がおかしいよ。どこか具合が悪いんじゃない?』
??『な、にを…イン。俺は、ビロウじゃない』
イン『やっぱり、今晩はうちで休んでいって。俺、心配だよ』
??『っ!イン!いい加減に冗談はよしてくれっ!俺だ!オブだっ!』
イン『……オ、オブ?え?えぇっ!?オブ、なの!?あの!?オブ!』
オブ『インっ!やっと思い出してくれた!?探し出すのが遅くなってごめん……本当に、会いたかった……!こんな近くに居るなんて……』
イン『わぁっ!オブ!大人になってるから気付かなかったよ!格好良くなったねぇ!』
オブ『インも大人になって。でも、昔と全然変わってない。ずっと、ずっと……あの頃のまま。……かわいい』
イン『ふふ、オブ!俺の事覚えててくれたんだね!嬉しいなぁ』
オブ『忘れてたのは、インの方じゃないかっ!』
次の瞬間、俺の体は、泣きそうな顔のオブによって、力強く抱き締められていた。
〇
【ビロウの自覚】
ビロウ『(……俺は、どうしたいんだ。インは、もしかしたらオブの事なんて、どうでも良くなってるんじゃねぇのか。別に会わせる必要なんて、ない、だろ。そうだ、インは頭が悪い。数年前の約束なんて、もう覚えちゃいない)……このまま、インは俺の』
———覚悟できる。オブに会いたいから。
ビロウ『っ!イン……イン。イン!お前は俺の、だろう?俺のペットで、俺の……インっ!』
俺は、屋敷に向けていた足を止め、踵を返した。何故か、嫌な予感がした。インの元へと行かねば、と本能が叫んだのだ。
そして、酒場の前で俺が目にしたのは、オブに抱きしめられる、インの姿だった。
その瞬間、俺の目の前は真っ暗になった。
その時になり、俺はようやく気付いたのだ。
———俺が、インを愛しているという事に。
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——–
—-
オブにきつく抱きしめられた瞬間。俺の鼻の奥に、嗅ぎ慣れない匂いがスルリと入り込んできた。
くんくん。
この香りは、ビロウのモノではない。それはそうだ。だって、今、俺を抱き締めているのは“ビロウ”ではない。“オブ”なのだから。
それを自覚した瞬間、俺は自分の持っている精一杯の力で、オブの体を押しのけた。押しのけて、数歩、オブから距離を取るように後ろへと下がる。
———-俺以外にその体を触れさせるな。
『……はい』
ビロウ。
俺はビロウの声が耳の奥で聞こえるのを感じると、深く、深く頷いた。ビロウの言う事は全部“はい”なんだ。俺はビロウの“ぺっと”だから。俺にとっては、ビロウが一番で……俺には、ビロウだけだから。
『なっ、イン?どうしたの?なんで、そんな……』
押しのけたオブが、驚いたような顔で俺を見ている。その顔は、やっぱりビロウそっくりで、俺はさっき、様子のおかしかったビロウの事を思い出して心配になってしまった。
『オブ。店が開いてる時間を説明するね』
『え、な……なに?』
『お店が開くのは夕方から。この入口の看板が出たら、開きましたって事だよ。そして、おしまいは日付をまたぐ時間』
『ちょっ……待って!イン!何の話をしてるんだ!?』
そう言って、オブがまた俺の目の前まで近寄ろうとしてきた。近寄ろうとするだけじゃない。俺の腕に、またその手を伸ばしてくる。
あぁ、もう。だから、ダメなんだってば。俺はビロウのモノだから。オブでも勝手に触ったらいけないのに。
『オブ、あんまり近寄らないで』
俺はオブの手を避けるように、腕を引く。そして、更にオブから距離を取るように後ろに下がった。今度はもっと遠く。そうじゃなきゃ、オブはすぐに俺に触れようとしてくるから。
『っ!な、何を……イン?だよね?なんで、どうして!俺を拒絶するんだよ?意味が分からないっ!イン、イン、イン、イン!』
『オブこそどうしたの?オブは約束を守りに来てくれたんでしょ?』
『約束っ!?何の事だ!?俺は、ただインに会いたくてっ!』
何の事だ。
今、ハッキリとオブはそう言った。その瞬間、俺は心のどこかで「あぁ、やっぱりな」と、物凄くガッカリした気持ちになってしまった。
———-おぶ。俺は、絶対に首都に行くから。首都で、お店を開いて、オブが来るのを待ってるから。
———-絶対に、俺の、お店に、来てね。約束。やくそくね。
『俺に、』
やっぱり、オブは俺との約束なんて覚えちゃいなかった。それもそうだ。わかっていた事だ。だって、オブは俺には何も教えてくれなかった。教えてと頼んでも、教えてはくれなかった。
『会いたかったの?』
二人で一緒に居れる場所を探そうって言った時も、オブは俺を叩いて拒絶した。俺はバカだから、いいねって。待ってるだけは楽でいいねって。本当は酒場だって、オブと一緒に作ろうねって言ってたのに。
その夢だってバカにするみたいに笑った。
サヨナラする日も、俺の事、見てもくれなかった。
『じゃあ、良かったね。会えたよ。ほら、インだよ。オブ。会えて良かったね』
唯一した“あの”約束。お客さんでもいいから、俺の店に来てって言った約束すら、オブの中では消えていた。もう、オブの中に、“あの日の俺”は、何一つ残っていなかったのだ。
『……いん?怒って、るの?俺が、インを置いて、いったから?』
『ううん。怒ってないよ。何を怒る必要があるの?何もないよ。オブ、会えて良かった。元気そうで、本当に良かった。気が向いたら店にも来て。あ、でももうこれは“約束”じゃないから。来なくても大丈夫』
俺は、ふと、店の入り口に看板が出しっぱなしになっていた事に気付いた。仕舞い忘れていたようだ。早く片付けないと。
『もう店じまいだから。オブ、気を付けて帰ってね』
『……ビロウか?』
それまで、酷く投げやりになっていた俺の心が、オブの口から出た“ビロウ”という名前に、フワリと柔らかくなった。
あぁ、そうだ。ビロウ。ビロウは明日は来てくれるだろうか。
今日は凄く様子がおかしかったけど、明日は平気になっているといい。赤ちゃんも一緒に来てくれたら、それは最高に素敵だ。
『ビロウが、インをこんな風にしたのか……アイツがっ!』
『……オブ?』
オブが拳を握りしめて、俺の肩を掴んだ。今度は避けられなくて、それどころか俺の体は店の壁に勢いよくぶつけられた。
背中が痛い。肩が痛い。オブが怖い。そして、また体を触られた。
それが堪らなく、気持ち悪かった。
『全部、アイツのせいなんだろっ!?イン!じゃなきゃ、お前が俺にそんな事を言う筈がないっ!ないんだよ!?』
『なんで!?なんで!オブ!痛いよ!離してよ!?こわいよ……』
——-ビロウ。
俺がビロウの名を口にした瞬間、目の前のオブの目がはっきりと絶望の色に染められるのが分かった。俺はどうやら、オブを傷付けたようだ。けれど、そんな事は、今の俺にはどうでも良かった。
オブの後ろに、一人の人間が立っているのに気付いたからだ。真っ暗な夜の中、灯りも少ない場所に立っているにも関わらず、俺にはすぐにそれが誰だか分かった。