シリーズお喋りまとめ
【ビロウ×イン】シリーズ
副題【ふりんのキューピッド】
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IFシリーズ
ビロウ×インの世界線。今回は過去編。
ビロウの奥さん&その好きな人達との悲喜こもごも。
◎簡易登場人物紹介◎
イン
純粋天然主人公。ビロウのペット。
ビロウ
元捻くれ貴族。インの飼い主。
バット
インの酒場の常連。インと同い年。
ビロウの妻、レスの想い人。
レスの屋敷で働いていた平民。
レス
ビロウの妻。ビロウと同い年。
バットの想い人。気が強い。
結婚なんてしたくなかった。
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【好きな人が結婚しちゃったの!?】
イン(17)・バット(17)
バンッ!
客『マスター!』
イン『あぁっ!どうしたの?まさか、前言ってた好きな子が?』
客『結婚してしまいました…!俺が弱いばっかりに、彼女の…レスの手を取れなかった。俺はっ、弱虫だ!』
イン『バット君。君はこれからどうするの?』
バット『俺は……』
バット『俺は平民で、彼女は貴族。俺には彼女を守る力なんて一つもないけど、でも幼い頃から、ずっとずっと一緒だったんだ。俺はレスの傍を離れたくない!』
イン『っ!俺!俺はキミを応援したいよ!俺に出来る事はあるかな!?』
バット『いえ……こんな話を聞いて貰えるだけれ有難いんんです』
イン『そっか……なんだろうね。身分って。同じ人間なのに、どうして好きな人と一緒に居られないんだろう』
バット『マスターも貴族の友達を追いかけて、首都に来たって言ってましたね』
イン『うん。みのほどをわきまえろって言われたけど』
バット『身の程か…そんなの、弁えきれるなら苦労しない』
イン『バット君。話なら聞くからいつでもおいでよ?何か出来る事があったら遠慮なく言って』
バット『マスター、ありがとう。こんなの話せるの、マスターしか居ない。屋敷や家にバレたら、きっと俺は不貞罪で、相手の家からもレスの家からも殺されてしまう』
イン『……殺されるの?貴族って、怖いな』
【好きな人と、結婚したかったね】
イン(17)ビロウ(16)
ビロウ『(あー、最近ほんと家に帰りたくねぇ。レスのヤツ。アイツ性格キツ過ぎ。お前だけじゃねぇんだよ。別に好きでもねぇヤツと結婚させられてんのは、こっちも一緒だっての……)』
がちゃ
イン『わぁっ!ビロウだ!いらっしゃい!今日も来てくれたんだね!嬉しいよ!』
ビロウ『…あぁ』
イン『ビロウ。なんだか疲れてるね。何かあった?ほらここに座って?火を付けたからもう温かいよ。あと、温かい飲み物持って来るね!』
ビロウ『(対応が)あったけぇ』
イン『でしょう?ビロウが来たら嬉しいなーと思って温かくしておいたんだよ』
ビロウ『(…かえりたくねぇ)』
イン『ビロウ。どうかした?話なら聞くよ』
ビロウ『いや…俺の話はいい。それより、お前がなんか、話せ』
イン『はい、ビロウ。えっと、何かあったかなぁ』
ビロウ『最近、店の方はどうだ』
イン『楽しいよ!同い年の友達も出来たし!』
ビロウ『オイ、変な気起こすなよ。お前は俺のペットだからな』
イン『(へんなき?)はい。俺はビロウのペットだって分かってるよ?』
ビロウ『わかってんならいい。それで』
イン『えっと、そう。ビロウに聞きたいんだけど、貴族と平民は、絶対に結婚出来ない?』
ビロウ『んなもん、出来る訳ねぇだろ。お前、俺と結婚したいのか?無理だかんな。身の程を弁えろ』
イン『はい!分かってる分かってる!俺じゃなくて…』
——こんなのバレたら、俺は殺される!
イン『…お話を読んだの!貴族の女の人を好きになった、平民の男の人のお話!女の人は結婚しちゃって、どうしようって言ってる所で終わったから』
ビロウ『お前、恋愛小説なんて読むのかよ。下らねぇ』
ビロウ『貴族にとっては結婚はお役目だ。好きだの嫌いだの言ってられねぇんだよ』
イン『じゃあ、ビロウも”お役目”だから結婚したの?』
ビロウ『あぁ。もちろんだ。じゃなきゃ誰があんな女と結婚するかよ』
イン『ビロウも好きな人と結婚したかったね』
ビロウ『はっ、んな夢、一度も見ちゃいねぇよ』
イン『ビロウ。俺に出来る事があるなら言ってね。結婚はお役目だけど、俺の所はお役目じゃないから、好きにしたらいいからね。今日は泊まっていく?』
ビロウ『(泊りてぇ)いや…俺には次の役目があるからな……今日は帰る』
イン『次のお役目?』
ビロウ『何でもねぇよ(子供なんて言えねぇよな)』
——-一言——-
はいじ「ビロウ、まだまだこの頃は、自惚れ屋の気質が大分残っている。インの事も大いにペット扱いしているが、自然と高頻度で店に足が向いている事に、ビロウ自身苦々しく思っているところあたりです。そして、何故か理由は分からないけど、子供を作るというお役目を、インに言い辛く思っていますね」
【俺にまかせて!】
イン(19)・ビロウ(18)
バット(19)・レス(18)
バンッ!
バット『ますだぁぁっ!』
イン『どどどっ、どうしたの!?バット君!?そんなに泣いて!』
バット『っひく、うわぁぁん!』
イン『ほら、落ち着いて!温かいミルクだよ!』
バット『この店でっ、いぢばんづよい、ざけをくだざいっ!』
イン『いや、待って!まずは話してごらん?どうしたの?』
バット『れすにっ、ごどもが、でぎだっで……』
イン『わぁっ!おめでとう!赤ちゃんだね!』
バット『ぜんぜんっ!おめでだくないっ!あんだ、いやなきぞくの、ごどもを、はらまざれでっ!れすっ、ないてたっ!づらいって!』
イン『あぁ…(赤ちゃんが出来て、おめでたくない時もあるんだ)』
イン『ほら、まずは落ち着いて。暖かいミルクだよ』
バット『まずだー。あり、がど』
イン『相手の貴族がどんなに嫌なヤツだとしても、そのお腹の中の赤ちゃんは、レスさんの赤ちゃんだよ。きっと凄く可愛い子だよ!』
バット『お、俺は……そうは、思えない。俺とレスの子じゃなきゃ……憎いだけだ』
イン『あぁ…でも、でもね。バット君。赤ちゃんは、その……悪くないから』
バット『そんなのっ!分かってる!でも、じゃあ俺のこの気持ちはどうすればいいっ!?レスに会いたいのに、全然会えない!結婚する前は、毎日毎日会えたのに、今じゃたまに窓の外から眺める事しかできないんだっ!レスに会いたい!俺はっ!レスに会いたいんだ!』
イン『…』
——-うぇぇん。オブに会いだいよぉ。ざびじいよう。
イン『わかった。二人はさ、離れ離れだから辛いんだよね?一緒に居たら、きっともう少し辛くなくなる?』
バット『……も、もちろんだ。けど、けど。外で、は、人に見られるかもしれない…もう、俺はどうなってもいいけど……もし、バレたらレスにまで迷惑が』
イン『人に見つからず、バレなきゃいいんだね?そして、二人っきりで会えたらいいんだ』
バット『え?』
イン『この店さ、お昼の時間は誰も居ないんだよ。俺も昼間は買い出しに行ったりで殆ど居ないし。もし、二人に都合がつくなら、昼間、決まった時間に、この店と奥の俺の家を使いなよ』
バット『えっ!えぇ!?』
イン『ここって表に面してないでしょ?だから、昼間でも人はあんまり来ないし』
バット『ま、マスター。それは嬉しいけど……もし、バレたら、マスターも危ない……貴族に逆らったら、どうなるか。そ、それでも?それでもいいの?』
イン『……ぐう。本当はこの店も、俺のって訳じゃないんだけど。俺とこの店の飼い主も、昼間は絶対近づかないし……きっと大丈夫!』
バット『(か、飼い主?)で、でも』
バット『でも、どうして…マスターはそこまで?俺、ただの店の客なのに』
イン『友達だよ!この首都に来て、俺は友達なんて居なかったのに、バット君が友達になってくれた。だから、すぐ馴染めたんだ!感謝してるんだよ!』
バット『マスター…』
イン『それにね』
——オブぅ、オブぅ。うえぇぇん。
——なんだ、また泣いてんのか。
イン『バット君って、俺に似てるし。泣いてたら誰かが声を掛けてあげなきゃ可哀想だよ』
バット『っっ!!うわぁん!ありがどうっ!まずだー!もう、おれだち、どもだちだよぅ!うぇぇんっ!』
イン『俺はずっと友達だと思ってたよ。ほら、ほら。とりあえず、レスさんに会えるかどうか、後は君次第だよ』
バット『ぁい。おれ、がんばって、れずに、会えるように、じばず』
イン『あと、赤ちゃんはもう……恨まないように、二人の子供って事にしよう!』
バット『え……いや。さ、さすがに…その考え方は、むり』
イン『そうかな。赤ちゃんは皆可愛いから、そう思った方が幸せだと思うよ!俺、昔は妹に赤ちゃんが出来たら、俺の子供って事にして育てようと思ってたし!』
バット『…手マスターって時々凄い事言うよね』
——–一言——–
はいじ「ふりんの斡旋をするイン。そして、そのふりんの斡旋相手が自分の飼い主である事を、この時のインはまだ知らない。そして、やっぱり他の雄の子供は基本的に受け入れられない雄の性、バット。雄の性を凌駕する母性を持つイン」
【赤ちゃん?やったー!】
※ビロウ祭りで掲載していた【ビロウの子供】の加筆版です。
ビロウ『イン。子供が出来たぞ』
イン『わぁっ!!ビロウの!?わぁっ!赤ちゃんだ!見たい見たい!』
ビロウ『まだ出て来ねぇよ。春だと』
イン『おめでとう!おめでとう!春生まれなんていいね!きっと可愛い子だよ!はああっ!』
ビロウ『(コイツ、もしかしたら一番喜んでるんじゃないのか?)』
イン『春……春かぁ!早く春にならないかなぁ!男の子かなぁ、女の子かなぁ!』
ビロウ『(……イン、俺に子供が出来て嫌じゃねぇのかよ)』
イン『ビロウは、男の子と女の子。どっちがいい?』
ビロウ『んなもん決まってんだろうが』
イン『どっち!?』
ビロウ『男だ』
イン『男の子!いいね!きっと、ビロウに似て格好良くなるよ!でも、どうして?』
ビロウ『どうしてって……跡取りに要るからだ』
イン『あ、これも、もしかして……お役目?』
ビロウ『そうだ。結婚と子供……男の子を作るのは、俺達貴族の一番基本的な役目だ。そこを果たさなきゃ、まず一人前と認められない』
イン『……ビロウは、そんな事をしなくても、充分一人前だよ』
ビロウ『お前に一人前扱いされてもな』
イン『……きっと、可愛い男の子だよ。俺、そう思うよ』
ビロウ『可愛いかどうかなんて、別にどうでもいい』
イン『……可愛いよ。ビロウの子だよ。きっと、優しい子だ。早く会いたいね』
ビロウ『どうだかな』
ビロウ『なぁ、イン。お前、俺に子供が出来て嫌じゃねぇのか』
イン『どうして?赤ちゃんが出来る事は、嬉しい事だよ。ビロウの子ならなおさら。俺はペットだから抱っこさせて貰えるか、分からないけど……(ちら)』
ビロウ『(コイツ……本気で喜んでやがるな)』
イン『俺は……ニアの面倒を見てきたから、赤ちゃんの扱いは上手なんだよ。お世話も得意だなー。どんなに泣いても、慣れっこだなー(ちら)』
ビロウ『分かった。もし産まれたら、たまに。ごく、たまに……連れて来てやるよ』
イン『っっっ!!やったーーー!ありがとう!赤ちゃん楽しみだね!』
ビロウ『うっせーな。黙れ』
イン『はいっ!っふふ。ふふふ』
ビロウ『……(なんで、だ)』
イン『ははっ!今日はお祝いのお酒を開けよう!』
ビロウ『(なんで……あの家の誰よりも、俺よりも……コイツは喜んでいる?自分の子でもねぇくせに)』
———……可愛いよ。ビロウの子だよ。きっと、優しい子だ。早く会いたいね。
ビロウ『俺の子、だからか……?』
——-一言——-
はいじ「狂う片鱗を、実はこの辺りから醸し出しているビロウであった」
【あなたが、レスさん?】
バット『紹介するよ。彼女が、レスだ』
イン『あっ、こ、こんにちは。レスさん(あわわわ。か、可愛い!ニアくらい、かわいい!)』
レス『……』
イン『?』
バット『レス?』
レス『ねぇ、この人は本当に信用できるの?バット。私、貴方に会えるのは嬉しいけど、貴方に何かあったら、もう生きていけないのよ』
バット『レス……気持ちは分かる。けど、この人は信用していいよ。だって、俺の……友達だから』
イン『(ニア、元気かなぁ)あ』
イン『あっ!』
レス『なっ、なに?』
イン『ごめんなさい!そこ、寒いでしょう!こっち!こっちに来て!ここ!暖炉の近く!そして、これ!温かいミルク!レスさん!赤ちゃんが居るんだから?寒い場所はダメだよ!』
レス『べ、別に。寒くないわよ』
イン『いやだ!来て!』
レス『いやだって……あっ!ちょっ!触らないで!無礼者!』
バット『マスター!?』
イン『あとで!あとで、みのほどはわきまえますから!ここに座って!』
レス『なんなの!?この人!』
レス、フワフワのひざ掛けとホットミルクを持たされ、暖炉の椅子へ
レス『別に、ここまでしなくていいわよ』
イン『ダメだよ!赤ちゃんは最初の方が一番……一番危ないんだ』
レス『危ないって?』
イン『村では、妊娠したばっかりの女の人は、その、よく、赤ちゃんが、あの』
レス『……別に、どうなってもいいわよ。こんな子』
バット『……』
イン『あぁぁぁ』
レス『えぇ、もう。なによっ?あんた、さっきから何なの!?別にアンタには関係ない子でしょう!』
イン『赤ちゃんは皆可愛いのに……レスさんも可愛いから、絶対に可愛いのに』
バット『マスター、確かにレスは可愛いけど。でも、その相手は……』
イン『お父さんが嫌な貴族でも、お母さんはレスさんじゃないか!いいから!体を大事にしてよ!もう!温かくして!』
レス『わかった、わかったよ……。もう、バット。この人一体何なの?』
バット『普段はもっと落ち着いたマスターなんだけど』
イン『だって。レスさんが、思いの外可愛いくて……俺の妹に似てるから』
バット『思いの外……マスターって、ほんと正直だよね。顔の良い人好きだし』
レス『……』
イン『なんだか、妹に赤ちゃんが出来たみたいで、ほっとけないんだ!』
レス『私、貴方の妹じゃないわ』
イン『もう!そんな事ばかり言って!体を大事にしてくれないんだったら、ここから追い出すよ!どうするの!?』
レス『えぇぇ。大事にしなきゃなのに、追い出しはするのね……わかったわよ。もう、私達が人目を気にせず会えるのは……ここだけだもの。言う事を聞くわ』
バット『そうだね。体を大事にしてほしいのは、俺も同じだ。確かに、そのお腹の子は置いておいても……君は大事だから』
レス『バット……』
バット『レス……』
イン『(ニア、赤ちゃん出来たかな?)』
——–一言——–
はいじ「しばらくして。え?出て行ってくれない?とレスから言われて、インは買い出しに出かけるのであった。こうして、妊娠中、そこそこ悪阻もなく元気だったレスは、人目をはばかってバットとの逢瀬を繰り返したのであった」