13:ふりんのキューピッド①

シリーズお喋りまとめ

【ビロウ×イン】シリーズ

副題【ふりんのキューピッド】

 

 

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IFシリーズ

ビロウ×インの世界線。今回は過去編。

ビロウの奥さん&その好きな人達との悲喜こもごも。

 

◎簡易登場人物紹介◎

 

イン

純粋天然主人公。ビロウのペット。

 

ビロウ

元捻くれ貴族。インの飼い主。

 

バット

インの酒場の常連。インと同い年。

ビロウの妻、レスの想い人。

レスの屋敷で働いていた平民。

 

 

レス

ビロウの妻。ビロウと同い年。

バットの想い人。気が強い。

結婚なんてしたくなかった。

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【好きな人が結婚しちゃったの!?】

 

イン(17)・バット(17)

 

バンッ!

客『マスター!』

イン『あぁっ!どうしたの?まさか、前言ってた好きな子が?』

客『結婚してしまいました…!俺が弱いばっかりに、彼女の…レスの手を取れなかった。俺はっ、弱虫だ!』

イン『バット君。君はこれからどうするの?』

バット『俺は……』

 

 

バット『俺は平民で、彼女は貴族。俺には彼女を守る力なんて一つもないけど、でも幼い頃から、ずっとずっと一緒だったんだ。俺はレスの傍を離れたくない!』

イン『っ!俺!俺はキミを応援したいよ!俺に出来る事はあるかな!?』

バット『いえ……こんな話を聞いて貰えるだけれ有難いんんです』

 

 

イン『そっか……なんだろうね。身分って。同じ人間なのに、どうして好きな人と一緒に居られないんだろう』

バット『マスターも貴族の友達を追いかけて、首都に来たって言ってましたね』

イン『うん。みのほどをわきまえろって言われたけど』

バット『身の程か…そんなの、弁えきれるなら苦労しない』

 

 

イン『バット君。話なら聞くからいつでもおいでよ?何か出来る事があったら遠慮なく言って』

バット『マスター、ありがとう。こんなの話せるの、マスターしか居ない。屋敷や家にバレたら、きっと俺は不貞罪で、相手の家からもレスの家からも殺されてしまう』

イン『……殺されるの?貴族って、怖いな』

 

 

 

【好きな人と、結婚したかったね】

 

イン(17)ビロウ(16)

 

ビロウ『(あー、最近ほんと家に帰りたくねぇ。レスのヤツ。アイツ性格キツ過ぎ。お前だけじゃねぇんだよ。別に好きでもねぇヤツと結婚させられてんのは、こっちも一緒だっての……)』

 

がちゃ

 

イン『わぁっ!ビロウだ!いらっしゃい!今日も来てくれたんだね!嬉しいよ!』

 

 

ビロウ『…あぁ』

イン『ビロウ。なんだか疲れてるね。何かあった?ほらここに座って?火を付けたからもう温かいよ。あと、温かい飲み物持って来るね!』

ビロウ『(対応が)あったけぇ』

イン『でしょう?ビロウが来たら嬉しいなーと思って温かくしておいたんだよ』

ビロウ『(…かえりたくねぇ)』

 

 

イン『ビロウ。どうかした?話なら聞くよ』

ビロウ『いや…俺の話はいい。それより、お前がなんか、話せ』

イン『はい、ビロウ。えっと、何かあったかなぁ』

ビロウ『最近、店の方はどうだ』

イン『楽しいよ!同い年の友達も出来たし!』

ビロウ『オイ、変な気起こすなよ。お前は俺のペットだからな』

 

 

イン『(へんなき?)はい。俺はビロウのペットだって分かってるよ?』

ビロウ『わかってんならいい。それで』

イン『えっと、そう。ビロウに聞きたいんだけど、貴族と平民は、絶対に結婚出来ない?』

ビロウ『んなもん、出来る訳ねぇだろ。お前、俺と結婚したいのか?無理だかんな。身の程を弁えろ』

 

 

イン『はい!分かってる分かってる!俺じゃなくて…』

 

——こんなのバレたら、俺は殺される!

 

イン『…お話を読んだの!貴族の女の人を好きになった、平民の男の人のお話!女の人は結婚しちゃって、どうしようって言ってる所で終わったから』

ビロウ『お前、恋愛小説なんて読むのかよ。下らねぇ』

 

 

ビロウ『貴族にとっては結婚はお役目だ。好きだの嫌いだの言ってられねぇんだよ』

イン『じゃあ、ビロウも”お役目”だから結婚したの?』

ビロウ『あぁ。もちろんだ。じゃなきゃ誰があんな女と結婚するかよ』

イン『ビロウも好きな人と結婚したかったね』

ビロウ『はっ、んな夢、一度も見ちゃいねぇよ』

 

 

イン『ビロウ。俺に出来る事があるなら言ってね。結婚はお役目だけど、俺の所はお役目じゃないから、好きにしたらいいからね。今日は泊まっていく?』

ビロウ『(泊りてぇ)いや…俺には次の役目があるからな……今日は帰る』

イン『次のお役目?』

ビロウ『何でもねぇよ(子供なんて言えねぇよな)』

 

 

——-一言——-

はいじ「ビロウ、まだまだこの頃は、自惚れ屋の気質が大分残っている。インの事も大いにペット扱いしているが、自然と高頻度で店に足が向いている事に、ビロウ自身苦々しく思っているところあたりです。そして、何故か理由は分からないけど、子供を作るというお役目を、インに言い辛く思っていますね」

 

 

 

【俺にまかせて!】

イン(19)・ビロウ(18)

バット(19)・レス(18)

 

バンッ!

 

 

バット『ますだぁぁっ!』

イン『どどどっ、どうしたの!?バット君!?そんなに泣いて!』

バット『っひく、うわぁぁん!』

イン『ほら、落ち着いて!温かいミルクだよ!』

バット『この店でっ、いぢばんづよい、ざけをくだざいっ!』

イン『いや、待って!まずは話してごらん?どうしたの?』

 

 

バット『れすにっ、ごどもが、でぎだっで……』

イン『わぁっ!おめでとう!赤ちゃんだね!』

バット『ぜんぜんっ!おめでだくないっ!あんだ、いやなきぞくの、ごどもを、はらまざれでっ!れすっ、ないてたっ!づらいって!』

イン『あぁ…(赤ちゃんが出来て、おめでたくない時もあるんだ)』

 

 

イン『ほら、まずは落ち着いて。暖かいミルクだよ』

バット『まずだー。あり、がど』

イン『相手の貴族がどんなに嫌なヤツだとしても、そのお腹の中の赤ちゃんは、レスさんの赤ちゃんだよ。きっと凄く可愛い子だよ!』

バット『お、俺は……そうは、思えない。俺とレスの子じゃなきゃ……憎いだけだ』

 

 

イン『あぁ…でも、でもね。バット君。赤ちゃんは、その……悪くないから』

バット『そんなのっ!分かってる!でも、じゃあ俺のこの気持ちはどうすればいいっ!?レスに会いたいのに、全然会えない!結婚する前は、毎日毎日会えたのに、今じゃたまに窓の外から眺める事しかできないんだっ!レスに会いたい!俺はっ!レスに会いたいんだ!』

 

イン『…』

——-うぇぇん。オブに会いだいよぉ。ざびじいよう。

 

 

イン『わかった。二人はさ、離れ離れだから辛いんだよね?一緒に居たら、きっともう少し辛くなくなる?』

バット『……も、もちろんだ。けど、けど。外で、は、人に見られるかもしれない…もう、俺はどうなってもいいけど……もし、バレたらレスにまで迷惑が』

イン『人に見つからず、バレなきゃいいんだね?そして、二人っきりで会えたらいいんだ』

バット『え?』

 

 

イン『この店さ、お昼の時間は誰も居ないんだよ。俺も昼間は買い出しに行ったりで殆ど居ないし。もし、二人に都合がつくなら、昼間、決まった時間に、この店と奥の俺の家を使いなよ』

バット『えっ!えぇ!?』

イン『ここって表に面してないでしょ?だから、昼間でも人はあんまり来ないし』

 

 

バット『ま、マスター。それは嬉しいけど……もし、バレたら、マスターも危ない……貴族に逆らったら、どうなるか。そ、それでも?それでもいいの?』

イン『……ぐう。本当はこの店も、俺のって訳じゃないんだけど。俺とこの店の飼い主も、昼間は絶対近づかないし……きっと大丈夫!』

バット『(か、飼い主?)で、でも』

 

 

バット『でも、どうして…マスターはそこまで?俺、ただの店の客なのに』

イン『友達だよ!この首都に来て、俺は友達なんて居なかったのに、バット君が友達になってくれた。だから、すぐ馴染めたんだ!感謝してるんだよ!』

バット『マスター…』

イン『それにね』

 

——オブぅ、オブぅ。うえぇぇん。

——なんだ、また泣いてんのか。

 

 

イン『バット君って、俺に似てるし。泣いてたら誰かが声を掛けてあげなきゃ可哀想だよ』

バット『っっ!!うわぁん!ありがどうっ!まずだー!もう、おれだち、どもだちだよぅ!うぇぇんっ!』

イン『俺はずっと友達だと思ってたよ。ほら、ほら。とりあえず、レスさんに会えるかどうか、後は君次第だよ』

 

 

バット『ぁい。おれ、がんばって、れずに、会えるように、じばず』

イン『あと、赤ちゃんはもう……恨まないように、二人の子供って事にしよう!』

バット『え……いや。さ、さすがに…その考え方は、むり』

イン『そうかな。赤ちゃんは皆可愛いから、そう思った方が幸せだと思うよ!俺、昔は妹に赤ちゃんが出来たら、俺の子供って事にして育てようと思ってたし!』

バット『…手マスターって時々凄い事言うよね』

 

 

——–一言——–

はいじ「ふりんの斡旋をするイン。そして、そのふりんの斡旋相手が自分の飼い主である事を、この時のインはまだ知らない。そして、やっぱり他の雄の子供は基本的に受け入れられない雄の性、バット。雄の性を凌駕する母性を持つイン」

 

 

 

【赤ちゃん?やったー!】

※ビロウ祭りで掲載していた【ビロウの子供】の加筆版です。

 

 

ビロウ『イン。子供が出来たぞ』

イン『わぁっ!!ビロウの!?わぁっ!赤ちゃんだ!見たい見たい!』

ビロウ『まだ出て来ねぇよ。春だと』

イン『おめでとう!おめでとう!春生まれなんていいね!きっと可愛い子だよ!はああっ!』

 

 

ビロウ『(コイツ、もしかしたら一番喜んでるんじゃないのか?)』

イン『春……春かぁ!早く春にならないかなぁ!男の子かなぁ、女の子かなぁ!』

ビロウ『(……イン、俺に子供が出来て嫌じゃねぇのかよ)』

イン『ビロウは、男の子と女の子。どっちがいい?』

 

 

ビロウ『んなもん決まってんだろうが』

イン『どっち!?』

ビロウ『男だ』

イン『男の子!いいね!きっと、ビロウに似て格好良くなるよ!でも、どうして?』

ビロウ『どうしてって……跡取りに要るからだ』

 

 

イン『あ、これも、もしかして……お役目?』

ビロウ『そうだ。結婚と子供……男の子を作るのは、俺達貴族の一番基本的な役目だ。そこを果たさなきゃ、まず一人前と認められない』

イン『……ビロウは、そんな事をしなくても、充分一人前だよ』

 

ビロウ『お前に一人前扱いされてもな』

イン『……きっと、可愛い男の子だよ。俺、そう思うよ』

ビロウ『可愛いかどうかなんて、別にどうでもいい』

イン『……可愛いよ。ビロウの子だよ。きっと、優しい子だ。早く会いたいね』

ビロウ『どうだかな』

 

 

ビロウ『なぁ、イン。お前、俺に子供が出来て嫌じゃねぇのか』

イン『どうして?赤ちゃんが出来る事は、嬉しい事だよ。ビロウの子ならなおさら。俺はペットだから抱っこさせて貰えるか、分からないけど……(ちら)』

ビロウ『(コイツ……本気で喜んでやがるな)』

 

 

イン『俺は……ニアの面倒を見てきたから、赤ちゃんの扱いは上手なんだよ。お世話も得意だなー。どんなに泣いても、慣れっこだなー(ちら)』

ビロウ『分かった。もし産まれたら、たまに。ごく、たまに……連れて来てやるよ』

イン『っっっ!!やったーーー!ありがとう!赤ちゃん楽しみだね!』

 

 

ビロウ『うっせーな。黙れ』

イン『はいっ!っふふ。ふふふ』

ビロウ『……(なんで、だ)』

イン『ははっ!今日はお祝いのお酒を開けよう!』

 

 

ビロウ『(なんで……あの家の誰よりも、俺よりも……コイツは喜んでいる?自分の子でもねぇくせに)』

———……可愛いよ。ビロウの子だよ。きっと、優しい子だ。早く会いたいね。

 

ビロウ『俺の子、だからか……?』

 

 

 

——-一言——-

はいじ「狂う片鱗を、実はこの辺りから醸し出しているビロウであった」

 

 

 

【あなたが、レスさん?】

 

バット『紹介するよ。彼女が、レスだ』

イン『あっ、こ、こんにちは。レスさん(あわわわ。か、可愛い!ニアくらい、かわいい!)』

レス『……』

イン『?』

 

 

バット『レス?』

レス『ねぇ、この人は本当に信用できるの?バット。私、貴方に会えるのは嬉しいけど、貴方に何かあったら、もう生きていけないのよ』

バット『レス……気持ちは分かる。けど、この人は信用していいよ。だって、俺の……友達だから』

 

 

イン『(ニア、元気かなぁ)あ』

 

 

イン『あっ!』

レス『なっ、なに?』

イン『ごめんなさい!そこ、寒いでしょう!こっち!こっちに来て!ここ!暖炉の近く!そして、これ!温かいミルク!レスさん!赤ちゃんが居るんだから?寒い場所はダメだよ!』

 

 

レス『べ、別に。寒くないわよ』

イン『いやだ!来て!』

レス『いやだって……あっ!ちょっ!触らないで!無礼者!』

バット『マスター!?』

イン『あとで!あとで、みのほどはわきまえますから!ここに座って!』

レス『なんなの!?この人!』

 

 

レス、フワフワのひざ掛けとホットミルクを持たされ、暖炉の椅子へ

 

 

レス『別に、ここまでしなくていいわよ』

イン『ダメだよ!赤ちゃんは最初の方が一番……一番危ないんだ』

レス『危ないって?』

イン『村では、妊娠したばっかりの女の人は、その、よく、赤ちゃんが、あの』

レス『……別に、どうなってもいいわよ。こんな子』

バット『……』

 

 

イン『あぁぁぁ』

レス『えぇ、もう。なによっ?あんた、さっきから何なの!?別にアンタには関係ない子でしょう!』

イン『赤ちゃんは皆可愛いのに……レスさんも可愛いから、絶対に可愛いのに』

バット『マスター、確かにレスは可愛いけど。でも、その相手は……』

 

 

イン『お父さんが嫌な貴族でも、お母さんはレスさんじゃないか!いいから!体を大事にしてよ!もう!温かくして!』

レス『わかった、わかったよ……。もう、バット。この人一体何なの?』

バット『普段はもっと落ち着いたマスターなんだけど』

 

 

イン『だって。レスさんが、思いの外可愛いくて……俺の妹に似てるから』

バット『思いの外……マスターって、ほんと正直だよね。顔の良い人好きだし』

レス『……』

 

 

イン『なんだか、妹に赤ちゃんが出来たみたいで、ほっとけないんだ!』

レス『私、貴方の妹じゃないわ』

イン『もう!そんな事ばかり言って!体を大事にしてくれないんだったら、ここから追い出すよ!どうするの!?』

 

 

レス『えぇぇ。大事にしなきゃなのに、追い出しはするのね……わかったわよ。もう、私達が人目を気にせず会えるのは……ここだけだもの。言う事を聞くわ』

バット『そうだね。体を大事にしてほしいのは、俺も同じだ。確かに、そのお腹の子は置いておいても……君は大事だから』

レス『バット……』

バット『レス……』

 

 

イン『(ニア、赤ちゃん出来たかな?)』

 

 

——–一言——–

はいじ「しばらくして。え?出て行ってくれない?とレスから言われて、インは買い出しに出かけるのであった。こうして、妊娠中、そこそこ悪阻もなく元気だったレスは、人目をはばかってバットとの逢瀬を繰り返したのであった」