お喋りシリーズ
恋人の居ぬ間に⑤~ウィズ出張中の2週間~
——–前書き——–
こちらは【現代版】とも言える「ビロウシリーズ」です。
ウィズが仕事で2週間の出張に出てしまった、そんなアウトの2週間を追います。
この2週間、アウトはたまたま他の酒場で出会った、ウィズの双子の兄弟であるビハインド(前世:ビロウ)と共に過ごす事になるのですが、最終的にどうなるのか、私も分かりません!
———————–
【弟発見!】
——アウト、今日もビハインドの酒場のプライベートルームにて。
ビハインド「さすがに、この狂い方はねぇだろ」
アウト「っ!」
ダダッ!
ビハインド「んだよ。どうかしたか」
アウト「アボードの声がするっ!」
ビハインド「アボード?」
ちら
アウト「やっぱり…何でアイツこんな高い店に」
ビハインド「あぁ……騎士の上役達か。よく来るぜ。うちの得意客の一つだ」
アウト「上役…?アボードはまだそんなに出世してないと思うけど」
ビハインド「アボード?あぁ、アイツか」
アウト「知ってるのか?」
ビハインド「あぁ、いつも年寄り達に気に入られて、終わる頃にはグッタリしてるからな」
アウト「アボードも大変だなぁ。上からも下からも横からも気に入られるもんなぁ」
ビハインド「どういう関係だ?」
アウト「弟だよ」
ビハインド「はぁっ!?嘘つけ!?全然似てねぇし、マジでそうだとしても、お前が弟だろっ!?」
アウト「一体何なんだ…ウィズといい。俺は一体何歳に見えるんだよ」
ビハインド「ガキだろ。19……いや18か?」
アウト「……嘘だろ。本気か?」
ビハインド「一応、酒を呑んでるからな。成人してねぇなんて事はねぇだろうな」
アウト「俺、今年で27歳なんだけど……」
ビハインド「……はぁっ!?嘘ばっかついてんじゃねぇ!?お前が俺より年上!ありえねぇっ!」
アウト「ホントだよ。身分証みるか?」
ビハインド「……う、わ。マジだ」
アウト「なぁ。俺って、そんなに若く見えるか?」
ビハインド「勘違いするなよ。その”若く見える”は決して良い意味じゃねぇ。年相応に見えねぇって言う、圧倒的に悪い意味だからな!?その辺、間違うんじゃねぇぞ!?」
アウト「やっぱりビハインドは分かりやすくて親切だなぁ」
ビハインド「オイ。そうやって何でも他人の言葉を好意的に受け止めてんじゃねぇよ。青臭いガキじゃねぇんだから」
アウト「そうか?自分がどう思われるかを顧みず踏み込んだ事言ってくれる人間は、親切じゃないか?」
ビハインド「…はぁっ」
——-一言——
はいじ「人は見方次第でどうとでも変わるのであった。アウトは基本属性、他人を肯定的にしか見ない」
【みすぼらしいって校則違反なの!?】
——–今日は別の酒場のプライベートルーム
アウト「今日はビハインドに驚くべきものを見せます!」
ビハインド「へぇ(この手のハードルを自分で上げてくるやつ、だいたい自滅すんだよな)」
アウト「……でも、それよりまず俺がびっくりした」
ビハインド「あ?」
アウト「今日はいつもの店より豪華過ぎて、この格好で来た事を後悔した」
ビハインド「うちで一番高けぇ店だかんな。普通なら、テメェのそのみすぼらしい格好じゃ、入れねぇよ」
アウト「確かに……みんなドレスとか、凄く高そうなスーツだった。俺の服は3着で1銅貨」
ビハインド「おいっ!?マジで安すぎだろ!?やめろよ!着るモンくらい、少し見栄えを考えろ!仮にもアイツの恋人なんだろうが!金だけは持ってんだから、買ってもらえよ!」
アウト「たぶん、俺って何着てもあんまり変わらないし。あんま興味ないし」
ビハインド「……ありえねー。着るモン一つで変わるっつーの!後で、裏に来い!服見繕ってやる!」
アウト「えー。ビハインドの選ぶ服って高そうだし。着るとこないし、いらねー」
ビハインド「勘違いすんな!あんまみすぼらしい格好されっと、店の品位が下がるんだよ!此処に居る間だけ身に着けてもらう!」
アウト「えー。面倒だなー」
ビハインド「学窓の制服だと思え!お前は此処じゃ校則違反だ!」
アウト「そ、そんな校則違反がっ」
ビハインド「そうだ。場所によっちゃ、安すぎるとか、品がねぇって事自体が相手に失礼になる事があると心得ろ」
アウト「はっ、はい!」
——-一言——–
はいじ「思わずペット時代のインのようになるアウト」
【3巻が出ましたー!】
ビハインド「で?まずはなんだ?俺を驚かせてくれんだろ。早く言え」
アウト「あぁ!そうそう!」
アウト「じゃーん!」
ビハインド「お。それは」
アウト「びろうかけるいんの話がな!こないだの催事で売り出したら、予想よりいっぱい売れたから、友達が3巻を描いてくれた!もちろん!俺は今回も手伝ったし、今回もびろうの担当!」
ビハインド「さすが俺。作り話になっても売れるんだな」
アウト「だなー!凄いなー!おぶかけるいんよりは売れてないけど」
ビハインド「っち」
アウト「でも。びろうかけるいんにはコアな愛好者がいっぱいいるって、友達は言ってたぞ!」
ビハインド「どういうフォローだ」
ビハインド「まぁ、いい。それ寄越せ。お前が着替えてる間、読んでてやるよ」
アウト「あのな、あのな!」
ビハインド「テメェが上手く描けた所は、後で聞いてやる。早く行って来い。もう、従業員は待機させてる」
アウト「いつの間に!?」
ビハインド「俺くらいになると、先の先を読んで行動するんだよ」
アウト「じゃあ、3巻の話ももう分かってるのか!?すごいな!」
ビハインド「……さすがにソレは分かんねーよ。おら。さっさと行け!」
アウト「あとで!あとで話聞いてな!」
ビハインド「あいあい」
——-読書中——-
ビハインド「……作り話の癖に、ところどころ史実に基づくコレは一体なんだ。アンダーと言い。ペイスと言い。なんで、死んだアイツがその名前を……ウィズか?いや、アイツがわざわざ俺の息子の名前を言う訳ないだろう……それに自分と他人の女との間に生まれたガキの話なんか、する訳ねぇし。なんなんだ、これは」
———————-
【アウト、高い服を着る!】
アウト「すっげー!動きやすいなー!これ!」
ビハインド「お、来たか。似合ってんじゃねぇか」
アウト「そうか?高い服だから、絶対動きにくいかと思ったんだけど、予想と全然違った!それに、高いから俺に似合わないと思ったけど、俺、ちょっと格好良く見える!」
ビハインド「……根本からその誤った認識を正せ。高いから似合う似合わない、なんて事はねぇよ。むしろ、金を他よりかけられて作られてるからこそ、服の方がこっち側に合わせてくれるんだ。だからこそ、高い服を着れば見目が抜群に良くなりやすい。高いから似合わないんじゃない。自分の体に合ってねぇ、センスのねぇもんが似合わねぇんだ。まぁ、一概に高けりゃいいってもんじゃねぇけどな」
アウト「はーーーー」
ビハインド「体に合った服は、言わば鎧だ。それだけで、相手に下に見られずに済む。お前は今日ここで、どの客にも見劣りする事はしねぇ。堂々としてろよ」
アウト「はあああああーー!かっこいい!」
ビハインド「だろ。ほら、メモしろ」
アウト「うん!」
ビハインド「(冗談抜きでメモし始めるところが、また)」
アウト「♪(にこにこ)」
ビハインド「っし、今日はテメェに特別に魚を出してやろう」
アウト「ん?魚?いや、俺、あんまり金ないから、食べ物はいらん」
ビハインド「食う魚じゃねぇから安心しろ。お前が食われる」
アウト「俺が……食われる?」
ビハインド「きっとビックリするぜ。お前は」
アウト「おおおっ!なんだろうな!俺が食われる魚……なんだろう」
ビハインド「っくく。そこで、この本の話も聞いてやるよ!来い!」
アウト「おー!」
——–別のプライベートルームにて。
アウト「っふ、あははははっ!うあっ!くすぐったー!あははははっ!さかなが、おれのあし、たべてるー!あはははっ!」
ビハインド「おい、もう少し大人しくしろ!ガキみてぇに騒ぐな!良いモン着せても、お前のその態度が、クソ過ぎる!」
アウト「ひー!こそこそするー!足の裏がこそこそするー!あはははっ!」
ビハインド「オイっ!服に謝りやがれっ!」
アウト「あははははっ!きもちいー!楽しいなー!」
ビハインド「……っは、ったく」
——-一言——
はいじ「アウト、ビハインドにドクターフィッシュの経験をさせてもらう。ウィズとは違い、どんどん色々なところに連れていってもらってます。ビハインドも、アウトの反応が面白いので、色々連れまわすのでした。双子なのに正反対」