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「っぁひぅ、うぃず、うぃず。もう、むり。たてな」
「っは、気持ちいか?アウト、こうするといつもより深く、繋がれる」
「っぁん!」
俺はあれから何度ウィズにイかされただろう。
いつもは横になって行う情事が、今日は全て立ったまま。だからこそ、全ての動きに余裕がなくなってしまう。
今はウィズに右足を持ち上げられ、そこにねじ込むようにウィズのモノが俺の奥深くをつく。
「っくそ、あぁっ!気持ちよさそうな顔をしているな、アウト。俺も、お前の中が暖かくて気持ちよくて仕方がないっ」
「っぁ、ぁぁぅぅ」
どうやらウィズ自身も、場所を変え、立って行う行為に興奮しているようで、鏡越しに映り込む俺の姿を、何度も手でなぞった。
そうすると、不思議な事に、俺が直接触れられているわけでもないのに、なんだか直接撫でられ、可愛がられているような気がして物凄く満たされた気分になるのだ。
「うぃず、うぃず、っひん。きもち、おれも。もっと、シて」
「っく、いつもよりっ、締まるなっ、立っているからか?それとも、鏡にうつる自分に興奮するから?」
「うぃず、もっと、さわって、いっぱい、ぜんぶ」
「あぁ、こんなに乳首まで赤くして。触れてやれなくてわるかった」
片足を持ち上げられ、ぷくりと立ち上がった赤い血首がウィズによって触れられる。先端を弾かれたり、根本から摘まれたり。ともかくウィズの与えてくる全ての行為が快楽へと繋がる。
「アウト、そんなにトロンとした表情をして。なんて、かわいいんだ」
「……ぅえ」
鏡のせいで、いつもは見えない結合部や、イキすぎて立ち上がりきれず、けれどダラダラと精液ではない透明な液体を垂れ流す自身も、全てよく見える。
そして、別にウィズの言うように可愛くはない、だらしない俺の顔も見える。
「ぅぅぅ」
可愛くない俺を可愛いと言うのは、ウィズにとってはいつもの事だ。けれど、こうしてだらしなく口を開き、涎を流しながら虚ろな目をする俺の姿を見せつけられながら言われる「可愛い」は堪らなく、俺の心をギュウッとする。
「かわいくない、かわいくない。いやだ、いやだ。もうかがみ、いやだ」
「あぁっ、こんなアウトの表情は初めて見るな。いつもは気にした風でもないのに……良い、好い、いい……!」
ウィズのいつも以上に興奮した姿が鏡にハッキリと映る。そして、それまで片足を持ち上げるのに使っていた左手を離し、今度は俺のだらしなくイき続けるモノに触れてきた。
「アウト、目を閉じるな、鏡を見ろ。その顔を、もっと俺に見せてくれ。可愛い、堪らない。ほら、お前のここは気持ちが良いと素直に告げてくれている。見ろ?なぁ、可愛いじゃないか」
「っふぅ、っぁん、やめ、みたくなっ。いま、さわったら、らめ、ふぅぅ」
ウィズの腰が激しくぶつけられながら、前を優しく扱かれる。やっぱり鏡に映るのは汚い顔をした俺の顔。
目を閉じようにも、ウィズが「閉じるな」と、ギュッと目を閉じる度に声を掛けてくるので、バカな俺はボーッとする頭で従ってしまう。ウィズの言葉は、俺には逆らえない力が宿っている。
「あうと、あうと、あうとっ。かわいい、お前は……なんでそんなにかわいい?なぁ、教えてくれ。俺はもう、わからん。なぁ、あうと」
耳元で何度も何度も呼ばれる俺の名。俺の好きな低く落ちついている筈のウィズの声は、今や発情期の獣のような熱と劣情を帯びていた。
「かわいく、な。かわい、くない。おれ、かわいくない」
俺はいやいやと頭を横にふりながら、鏡に両手をついた。その拍子に腰をウィズに突き出すようなカタチになり、動きやすくなったのかウィズの腰に激しさが増す。目の前にはぐちゃぐちゃの自分の顔。
もう、いやだ。
俺はボウッと意識の遠のくなか、ふと鏡に映る自分の上を見た。
そこには、普段はこの体勢では見る事の叶わぬ、必死に俺の中に自身の雄をねじ込むウィズの姿が映っていた。そのウィズはとても雄々しく、普段のどこか理知的な雰囲気を漂わせるウィズとはまるで異なる姿だった。
「っっっっ!!」
なんて、すてきなウィズなんだ!
それを見た瞬間、俺はそれまでの「いやいや」と必死に拒否していた気持ちがパンと弾けて消え去った。
「ぁ、ぁ、あぁ、うぃず、うぃず」
俺の目には、もう汚い俺の事なんか映っちゃいなかった。
きっと、今の俺の目にはアバブがよくビィエルを漫画の濡れ場を描く時に使う「はーとまーく」の形がついているに違いない。
これは、ウケがセメに夢中になっている時に、せりふや、いろんなところに飛んでいる甘いスウルの実を逆さにしたようなカタチのモノだ。
「あっ、すてき。かっこいい。うぃず、もっと、もっとみたい」
「アウト?」
俺は鏡越しに映るウィズに、鏡につけていた両手を縋るように持って行った。すると、俺の様子の変化に気付いたのか、鏡越しのウィズがチラリと此方に目をやる。
「あぁっ、うぃずが、みた。こっち、みてくれた。すてき。あぁ、かっこいい。すき、すき。うぃず」
「……」
俺は鏡に顔を寄せると、目を閉じてウィズの映っていた場所に口付けを落とした。頭の中に何度もあの雄の顔をしたウィズを思い浮かべる。ただ、もちろん口付けをしても柔らかい感覚などはない。
あるのは冷たいガラスの感触だけだ。
「ちゅっ、ん。ふあ、ぺろ」
けれど、とっくの昔に頭のイカれてしまっている俺には、もう何も分からない。何度も鏡に口付けを落とし、舌を這わせるうちに、温度も上がって温かくなってきた。その生で、俺は本当にウィズと深い口付けをしているような気になっていたのだ。
「うぃず、すき、すき。かっこいい。すてき。だいすき」
そう、俺が何度も何度もうわ言のようにウィズに「だいすき」の気持ちを発散させていた時だった。
「っうあ!」
俺の体が勢いよく引っ張られ回転させられていた。目を開けば、そこには不機嫌そうなウィズの姿。そして俺の体は繋がったままウィズと向かい合う状態になっていた。
「……気に食わん」
「へ?」
「なぜ、俺を見ない?アウト」
「え?」
「鏡の俺になどに夢中になって……この浮気者が。お前は目を離すとすぐにこれだ!」
俺はウィズに繋がったまま叱られながら、けれど一つも訳が分からなかった。だって、鏡に映るウィズもウィズだ。俺はウィズに夢中だったのに。
「俺を見ろ!アウト!口付けをするなら俺にしろ!愛を囁くなら俺の耳元で、だ!」
「……はぃ」
けれど、頭のぼんやりとしていた俺は、もう何も理解できないままただウィズの言葉にうなずいた。ただ、目の前に俺の格好いい素敵なウィズが居るのは変わらない為、俺は怒るウィズの顔を両手で挟み、その目いっぱいのはーとを飛ばして、ウィズに口付けをした。
「うぃず、すき」
「……あぁ、それでいい」
その後、俺は更に激しくウィズに体を貪られ、たくさんのはーとまーくをシャワー室で飛ばしまくった。
たぶん、次にアバブのゲンコウを手伝う時は、俺のはーとを描く腕は、きっと物凄く上手になっているに違いない。
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目覚めた。
目覚めたそこは、もちろんシャワー室ではなく、いつものウィズとの寝室だった。
「あれ?」
けれど、天井を見上げてみてもあの、ウサギの形をしたシミは綺麗サッパリ消えてしまっていた。そして、俺はそのままチラとベッド脇にある時計に目をやる。
その瞬間、俺の頭に雷鳴が落ちたような衝撃が走った。
「……っは!もう休み終わった!?」
「アウト、もう少し寝ていろ。俺の腕から出るな」
「……ぐふぅ」
余りに激しくし過ぎて、俺とウィズが床につき目覚めたのは、既に丸1日が経過した、夜中だった。
おかげで、今回も結局古市には行けなかった。
【後書き】
はい。ウィズの鬼の執着心の生む、鬼の独占欲のお話でした。
きっと、これは相手がアウトでなければ、ただの監禁バットエンド要素のCPになっていたかもしれません。ただ、アウトなお陰で無事に溺愛CPに収まっているギリギリCPなのでした。
ちなみに、こちらはツイッターで「どのCPでR18を見たい?」というアンケートの結果、【ウィズ×アウト】になっているのですが、共通で書こうとしていたテーマは「鏡越しにキスする」という設定でした。
なので、「オブ×イン」&「ヨル×スルー」だった場合鏡がないので「川に映る相手の顔にキスをする」になっていたと思われます。
以上です。