ウィズ×アウト②-1

ウィズ×アウト 第2弾

【不機嫌なウィズ】

※こちらは小説形式のお話です。

 

—―前書き—–

ウィズとアウトの情事。

ウィズはアウトの意識が少しでも自分自身から逸れる事を良しとしない。

たとえそれが、自分自身の姿を映す鏡であっても。そんなお話。


 

【不機嫌なウィズ】

 

 

 

 ウィズは物凄く俺の事を愛している。だから、俺がウィズ以外の何かに気を取られると、物凄く怒るし、不機嫌になる。

 

 俺の中に居るタオルのウィズに対してもそうだ。

 俺はマナの中でもウィズと離れたくないので、ウィズを作って一緒に居るのに、それすらウィズは気に入らないらしい。

 

 ウィズ曰くこうだ。

 

「俺は“この”俺以外がお前の関心を引くのが、非常に不愉快なんだ」

 

 うん、ちっとも分からない。

 ウィズは“俺”以外と言ってはいるが、タオルのウィズも、元々はウィズだ。俺からしたら既に俺はウィズにこれ以上ないってくらい夢中だからこそ生まれた「タオルのウィズ」なのに。

 

「あ!」

 

 そういえば“夢中”って“ゆめのなか”って書く事に、その時気付いた。

 

 あぁ!そうか!夢の中にも現れるくらいその事について考えてしまうら、そう言う気持ちの事を“夢中”って言うのか!

 そう、俺はとても凄い事に気付いてしまったので、ウィズにも教えてやることにした。ウィズは賢くて、きっとこの事も知っているに違いないのだが、俺は自分の口でその事をウィズに伝えたかったのだ。

 

「俺はウィズに夢中だから、マナの中にまでウィズが居るのに!ほら、夢の中って書いて夢中って言うだろ?俺はウィズに“むちゅう”なんだよ!」

「っ!」

 

 上手い事言った!

 その時の俺は確かにそう思った。けれど、ウィズはどうやらそうは思っていなかったようだ。その瞬間俺の体はウィズに抱きしめられ、いつの間にか裸でベッドに横たわっていた。そこからは、よく見る見慣れた天井がウィズ越しに映りこんだ。

 

「(あ)」

 

 いつも見上げているから、すぐに目がいく。右上の方にある小さな丸いシミ。それはよく見ると、ウサギの形に見えるのだ。うん、今日もあるウサギのしみ。

 

 そんな事を考えていると、俺はいつも知らぬ間に服を全て脱がされていた。

 

「アウト、何を見ている。何を気にしている。どうして俺の方を見ない。お前は俺に夢中なのだろう?」

「っぁ」

 

 そう、ウィズの余裕の無さそうな声が俺の耳にスルリと入りこんでくる。ほんの少しだけウィズから意識を逸らしただけだったのに、ウィズの猛追は容赦がない。

 

「っふ、ぅんん」

 

それと同時に、ウィズの口が俺の耳朶と耳の中に舌を這わせてくる。ゾクリと背筋に雷が落ちたような感覚が走った。

 気持ちい、気持ちい。

 

「なぁ、アウト。俺に夢中なお前は、一体何を見ていた?」

 

 正直、その声だけで俺の体は完全にウィズを受け入れる体勢に入った。最初は裸にされるのも、ましてやそこから体に性的な意味合いで触られるのも、恐怖でしかなかったのに。

 今では怖い山を乗り越え、乗り越えた先にあったのはウィズに夢中の気持ちよさだけだった。

 

「ほら、アウト。約束破りか?」

「えと、」

 

 ウィズとの約束。

 25個にまで増えた約束の中には【互いに隠し事はしない】というモノがある。けれど、正直隠している訳でもなく、ただただ大した事のない内容すぎて、ここでわざわざ口にするのが躊躇われるだけだ。

 でも、だからと言ってここで口を閉ざせば、ウィズはきっと怒る。怒って、きっと明日のお出かけの約束を潰しても、俺を抱き潰すだろう。

 

 それは嫌だ!明日はウィズと一緒に古市に行くのだから!

 

「あそこ。あそこにあるシミ」

「シミ?」

 

 俺がウィズの肩越しに腕を伸ばす。伸ばして天井の、あの兎型のシミを指さした。

 

「あれが、兎に見えるっていつも思ってた……だけ」

「…………」

 

 俺は口にした途端、余りのしょうもなさに恥ずかしくなった。ウィズもきっと聞いた事を後悔しているに違いない。だって、俺が「兎のシミ」と口にした途端、ウィズの眉間に深い皺が刻まれたのだ。

 

「アウト」

「ごめん、つまんない事言った」

 

 先程まで熱くなっていた体が、シュンと下がってしまった。でも、ウィズとの約束破りは出来ないから言うしかなかったのだ。でも、何か適当に嘘をついてもっとマシな事を言えばよかった。

 でも!25の約束の中には【嘘を吐かない】というのもあるし……。

 

 あぁ、俺は一体どうすれば良かったんだ!

 

 そう、俺が完全に呆れてしまったであろうウィズの下でアワアワとしていると、突然、ウィズが俺の背中とベットど隙間に手を滑りこませた。そして、そのまま俺の体はウィズによって起こされると、気付けば俺はウィズの腕の中に抱え込まれていた。

 

「ウィズ?」

「不愉快だ。お前は、いつも俺との情事中に、あのシミに意識を奪われていたんだな」

「え?え?」

「まったく、油断も隙もあったもんじゃない」

「ウィズ、どこ行くんだ?」

「毎回同じ場所で抱くから、周囲に気を取られる余裕が出来てしまうんだな。気付かなかった。今日から毎日場所を変えよう」

 

 え。

 俺は素っ裸のままウィズに抱えられて、目を瞬かせた。場所を変える?俺がウサギのシミに気を取られていたから?え?

 

「マンネリ化は夢中の中の余裕を生む、か。覚えておこう」

 

 そう言って俺が立たされていた場所はシャワー室だった。シャワー室の鏡の前。

俺はウィズによって鏡の前に立たされると、鏡越しに写るニコリと笑ったウィズと目があった。

 

「アウト。さぁ今日は此処で交わろう。立っていれば他に気を取られる余裕も生まれないだろうし、乱れる自分の姿に恥じ入るアウトに、俺も夢中になれる」

——–さぁ、俺のアウト。存分に恥ずかしがってくれ。

 

 ウィズはその形の良い指で、既に立ち始めていた俺の乳首を思い切り摘んだ。