『するーっ。お前っ、もう!俺に飼われろっ!一生雌として俺が傍で可愛がってやる!オイッ!自分じゃ、こんな風に口でっ、できないだろうっ!』
『ぁっ!っく、ふぅ…う、あっ!ひっ』
ヨルが俺の乳を、いつものように口でよしよししてくれる。
否、今日のこれは“よしよし”なんて優しいモノじゃない。乳を食われている。歯を立てられ、爪で力いっぱい抓られ、痛い。痛い筈なのに、俺の体はもう、狂っているので、その痛みさえも気持ちよかった。
『よる、よる、よるっぁん!はずか、しい。はずかしい、もう熱い、怖いっふっ。ヨル、見られたく、ないっ。はじゅかしいっ、乳もふくっ、ふくれてっ……あなも、おれ、おすなのにっ。よるよる……み、みないで』
『何が見られたくないだっ!何が見ないでだっ!?お前はいつも平気そうな顔をしていただろう!種まきだ、何だと!笑って! 俺はっ!俺はなぁ!』
俺は、いつの間にか服を剥ぎ取られ、夜の草原でヨルに馬乗りにされていた。全部脱がせるのが面倒だったのか、脱いだ服が両手首で引っかかり、まさにそのせいで両手の自由も利かなくなっていた。
これじゃあ、恥ずかしくとも何も隠せない。全部、全部、ヨルに見られている。ヨルの、こんな獰猛な目は初めてだ。
『スルーっ!お前っ、俺が此処から去ったらどうする気だっ!こんな体を抱え、一人で満足できる筈もなくっ!』
ヨルに言われ、俺は腹の底が一気に高い所から落とされたような感覚に陥った。ヨルが、居なくなる?ヨルが、居ない?
チュッとわざと吸われている音を立てて、ヨルが俺の乳を吸う。ヨルは言っている。自分ではこんな事出来ないだろう?と。それもそうだ。そしたら、俺はどうしたらいいんだ?
ヨルが居なくなったら、眠れなくて一人で目を瞑ってヨルの幻だけで生きていけるか?そんなの、そんなの――。
『っいや、いやだっ!よる、よる、よるっ!ずっと、ここに居てっ。一生居てくれっ。さみしい、さみしい。おれと、いっしょに、いて』
『っクソ!スルーっ!おい、お前、俺に見られるのが恥ずかしいのに、いいのかっ!?こんなに顔を赤くして、目なんかっ、潤ませてっ!?恥ずかしいだろ!?俺はお前を、いつもこうして“見る”ぞっ!』
ヒクつく穴には、ヨルのモノがしっかりと埋め込まれ、何度も何度も最奥を突かれる。そうだ、そうだ、そうだ!これが欲しかった。ヨルの雄が、欲しかったんだ。
俺は恥ずかしいのに、どうしても自分の欲望を止める事が出来ず、自身の足をヨルの腰に巻き付けた。もっと、もっと傍に居て欲しい。
恥ずかしいけど、それより離れられる方が、もっともっと嫌だ。
『っそばに、いて。みて、いいから。はじゅかしくてもっ、がまんする……っはぅっ』
『なぁっ!おい!するー!』
ヨルが、俺の勃ちもせず、ダラダラと種とも言えぬ液体を垂らす、俺の雄に触れてきた。もう、ここは雄じゃない。でも、もうヨルが触ってくれるなら、どこもかしこも気持ちいい。どこもかしこも、恥ずかしい。
もう、頭が熱さにヤられて、クラクラする。
『俺がっ、教えてやるっ!おいっ!目を伏せるな!?俺を見ろっ!スル―!』
熱い、顔もずっと。ヨルの顔が、恥ずかしくて見れない。見れないのに、でもヨルが見ろと言うと、弾かれたように顔を上げてしまう。従ってしまう。
『ぅぅっ。よる、おしえて、くれ。おれは、あたまがくるったのか?ほんとの、かわり、ものに、なった?』
『……バカがっ!』
ヨルは俺の中に自分の雄を押し込めたまま、一旦動きを止めると、眉間の皺を深くした。『はぁっ、はぁっ』と激しい呼吸音が、ヨルの口から漏れ出る。雄は雌に挿れたら、種を蒔ききるまで、止まれない生き物だ。あぁ、ヨル。動きたいだろう。キツいだろう。雌の、俺の中で、我を忘れて動きたいだろう。
『よ、る?』
種を出したいだろう。
雄は、雌の中に、出したいと思う……なら、この今、ここで言う雌は誰だ?雄を求めて、気持ちを発情させていたのは、どいつだ。
『普通はっ!恥ずかしいんだっ!普段は他者に見せない部分を、好きな相手に晒さねばならないっ!これが、どうして逆に恥ずかしくないのか、俺には分からなかった!いつもいつも俺ばかり恥ずかしい想いをしている事が、腹立たしかった!何が“狂った”だ!?だとしたら、俺はっ、はなからお前に狂っているぞ!』
『ふぁ』
そうなのか?ヨルもずっと恥ずかしかったのか?ずっと、俺に狂っていたのか?俺だけが、おかしいんじゃなかったのか。
『スルー!お前は俺の雌だ!それの、何がおかしい事があるかっ!恥じらえ!俺に見られたくないと、目を逸らせ!逸らさせなどしないが、雄はそういう雌に興奮する!今の俺がそうだ!いいか!?スルー!お前はもう雄じゃないっ!俺の』
——-雌だっ!
納得した。あぁ、納得した。そうか、俺はもう完全にヨルの雌だから、変なんかじゃなかったのか。
『っふ、っはぁ。ぁんっ、よる、よるよるよる』
『するー、あぁっ。くそ、くそっ!お前の中は、どうしてこう……気持ちが良いんだっ!くそ!』
そして、それと同時に酷く安心した。なぁんだ。ヨルも同じだったのか、と。俺のコレが普通なのか、狂っているのかなんて、最早どうでもいい。ヨルと同じなら、もう何だってよかった。
どうやら、俺はいつの間にか正真正銘、ヨルの雌になっていたらしい。道理で雄では気持ち良くなれないはずだ。
ヨルが、俺を雌に変えたのだ。世の中、俺の知らない事がたくさんあるものだ。俺は雄として生まれて、雄の役割を果たした後、別の雄から雌にされた。
種まき遊びなんてして遊び過ぎたせいだろうか。いつの間に、俺達の“種まき”は“交尾”に変わっていたのだろう。
『スルー、おれの、やしきにこい。もう、お前を一人で、させやしない。俺はそんな、甲斐性のない雄ではないからだっ』
『っぁっひ。ぁん。っふぅぅ』
『おい、答えろっ!お前は、俺の群れに入ってもらう!否は聞かん!頷け!おいっ!』
いや、ヨル。むりだ。もう、お前がなにを言っているか、俺には一つも分からないんだ。なぁ、もう今はどのくらい時間がたった?ヨルの背負っていた、月が、今はもうどこかへ行ってしまった。
『っく、スルーっ』
そう、俺が最後に聞いたのは、もう、全部俺で埋め尽くされて、人間ではなくなった、獣のヨルの唸り声だけだった。
〇
この日、俺はヨルから“恥ずかしい”を教わった。ヨルとの種まき……いや、交尾が、昔の俺では考えられないくらい恥ずかしい。
何故か、今は裸も見られるのが恥ずかしいのだ。
あぁ、もう。恥ずかしい、恥ずかしい!
恥ずかしいは、疲れるから嫌いだが、俺が恥ずかしがると、何故かヨルはとても機嫌がよくなり、物凄く雄が元気になってしまう。
——-スルー、さぁ。もっと恥じらえ。
そう言って笑うヨルの、それまでとは違った目と姿に。何故だろうか、俺は何やら、とんでもない狼の本能を目覚めさせてしまったと、腹の下がゾワゾワするのだった。
スルーお父さん(28)にして、やっと本当の羞恥心を知る、でした。
ましゅまろ教本さんから頂いた、素晴らしいネタからの試みでした。自分の初めての感情にスルーを弱らせて、その普段見れないスルーの姿に、こう、ヨルのテンションを上げさせてみたのですが。
ヨルのテンションが上がり過ぎて、私は目をシパシパさせる羽目になりましたね。
さて、このお話はIFとして【本編】のスルーとは別物として、捕らえてくださるとありがたいです。スルーに羞恥心はまだ早い。にこ。