19:【ビロウ×イン】スルー登場編②

 

どうして、ペイス、ばっかり!

 

スルー『ほら!こんなに、俺が抱っこできるほど小さくなって!』

ペイス『っ!離せっ!離せよ!なんなんだっ!お前は!』

スルー『でも、この嫌そうな顔は…確かにオブだよな。ほーら、ほーら!』

 

アンダー『…いやっ!』

イン『アンダー?』

 

たっ、たっ、たっ。

 

アンダー『いん!ぼくも、して!』

 

 

スルー『おっ、アンダー。どうした?』

アンダー『いん!ぼくも、だっこして!』

ペイス『おろせっ!』

スルー『ふふっ、みんな可愛いなぁ!』

 

きゃっきゃっ

 

イン『…ザンさん、あの、お父さんはきっと』

ザン『分かっている。あれが…わざとだと言う事くらい。まったく…照れ隠しだろうな』

 

照れ隠しも程ほどにしなよ!

 

ザン『…スルー』

 

きゃきゃっ

 

 

イン『あの、ザンさん』

ザン『どうした、イン』

イン『代わりに俺の事抱き締めますか?俺、お父さんに似てるし。子供の時みたいに、お父さんっぽい事いいます』

ザン『イン。君はもう少し自分を大事にしなさい』

 

スルー『あははっ!』

 

イン『…お父さん(握り拳)』

 

は……?×2

 

 

ビロウ『おい、オブ。不誠実かぁ?』

オブ『黙れよ、三下が』

ビロウ『っは、その三下に出し抜かれて今のお前があるんだろうが。笑えんなぁ?』

 

イン『あぁっ!久しぶりじゃないかっ!ザン!会いたかったぞ!再会を祝して二人でこれから一晩中ダンスでも踊ろうじゃないかっ!』

 

オブ・ビロウ『!?』

 

 

さぁ、ザン!ダンスをしよう!

 

ザン『イン?』

イン『何を言ってるんだ!俺はスルーじゃないか!久しぶりで俺の顔も忘れたのか?なぁ、ザン?』

ザン『くっ(これでは…)』

イン『さぁっ!きっと踊っていたら俺の事も思い出すだろうさ!さて、俺と踊ってくれないか?』

ザン『っ(オブの事を言えないではないか)』

イン(ぱち!)

 

インの魅力的なウインク(ぱちん)

 

 

オブ『ちょっ…イン!そんな、まるでスルーさんみたいな事を…クソっ!しかも、父さんとなんて…ていうか、あれはイン、なのか?』

ビロウ『ったく。夫の目の前で他の男と踊ろうとするなんて。しかも相手はオブの親父さんと来たか。…つーか、待てよ。インで合ってるんだよな?』

オブ・ビロウ『え?』

 

ヨル、それは違う!

 

 

—-再会のダンスを踊ろうじゃないか!

 

スルー『え』

アンダー『どう、したの?いん?』

ペイス『?(急に下ろされた)』

 

—-俺はスルーさ!

 

スルー『…違う』

アンダー『いん?』

 

—-ぱちん!

 

スルー『ザン!それは違う!違うぞ!それは俺じゃない!わっ!と、取られる!インにヨルがっ!』

 

心地の良い方へ

 

イン『(にこ!)』

 

膝をつき手を差し伸べられるザン

 

ザン『…』

イン『さぁ、躊躇う事はない!見た目も性格も同じなんだ!何を迷う必要がある!君たち親子は真面目過ぎる!心地の良い方へと向かうといい!』

ザン『…』

 

オブ『…心地の良い方を』

ビロウ『ここに辿り着くのが遅かったな、オブ?』

 

 

男は若い子の方が好きなのさ!

 

 

スルー『あぁぁぁ!ヨルヨルヨルヨル!』

ザン『っ!?』

 

どどどどど!

 

スルー『そいつは違う!同じように見えるけど違うぞ!それはインだ!俺の顔をしてはいるが、ヨルと一緒に沢山遊んだ事を知ってるスルーはこっちだ!俺だ!』

イン『これから一緒にたくさん遊ぶから、俺でも構わないだろう!』

 

 

スルー『ダメだ!イン!お前はなんて悪い大人になったんだ!人のヨルを取るなんて!後、俺の真似を即刻やめろ!』

イン『なぜ?最初にお前が彼を無視したんだろう?彼だって年寄りのお前より若い俺の方が良い筈さ!店の客が言ってたぞ?男はいくつになっても若い子が好きだと!」

 

オブ・ビロウ『…』

 

スルー『俺は年寄りじゃない!年寄りだけど年寄りじゃない!確かに、俺はもうすぐ死ぬかもしれないけど!ヨルは俺のだ俺のだ俺のだ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!インがヨルを取る取る取る!』

(アラフォーの盛大なばたばた)

 

 

ヨル、俺がホンモノって分かるのか?

 

 

スルー「インがヨルを取る!取る取る!親不孝めーー!」(どったんばったん)

 

ヨル(ザン)「スルー?まったく、ここは村の原っぱではないぞ」

スルー「…ヨル?」

ヨル「あぁ、そうだ」

スルー「…俺の方が本当のスルーだと分かっているのか?」

ヨル「お前はそれを本気で言ってるのか?」

 

ヨル、若い俺でなくてもいいのか?

 

 

スルー『男は若い方がいいって、さっきインは言っていたぞ』

ヨル『ならば、それはお前にも言える事だろう』

スルー『何を言っている。俺はヨルがいい!』

ヨル『……はぁ。つまり、そう言う事だろう』

スルー『……む?』

ヨル『つまり、俺は”お前に”会いたかったという事だ』

スルー『!!』

 

親孝行できたね!

 

 

スルー『あはははっ!そうかっ!良かった!俺もヨルにずっと会いたかったんだ!抱擁をしよう!ヨル!』

ヨル『…あぁ』

ぎゅううっ

 

ビロウ『インの父親は、オブの親父さんとデキてんのか…これじゃ飼えねぇな。お前も親父を見習ってればなぁ?』

オブ『…っく』

 

イン『はー、良い仕事したー』

 

 

いん、は、ぼくのーーーー!!

 

 

アンダー「いん、ふたりになった」

ペイス「二人じゃないだろ。あれは、インのお父さんだって」

アンダー「インの、おとうさん?」

ペイス「そうだ」

アンダー「ちがうよ!どっちも、ぼくの、インだよ!」

ペイス「怖いよ、おまえ。ごうよく過ぎるだろ。一人はおれのお爺様のだ」

アンダー「ぼくの!」

 

タッ

 

スルー「ヨル!」

ヨル「スルー」

 

ぎゅぅぅ

 

アンダー「いん!」

スルー「ん?」

アンダー「いんは、ぼくの!ぼくの、だよ!」

ヨル「…」

ペイス「おい、この人はおれのお爺様のだ!」

ヨル「…」

 

ビロウ「さて帰るか。イン。”俺達の”家に」

オブ「お前…」

イン「待って、お父さんが」

 

アンダー「あ、あ!」

 

だっ!

 

アンダー「いん!いんは、ぼくの!」

イン「ん?」

ビロウ「……アンダー、お前調子に乗るなよ」

アンダー「ひっ」

ペイス「おい、こっちのインはお前のお父様のだろ!」

オブ「……ペイス、口を慎みなさい」

ペイス「っひ」

 

アンダー「あ、あ、あ、あーー!いんー!いんー!」

 

ばたんばたん!

 

 

やっぱり男は若い方が良いって合ってるな

 

 

アンダー『ひっく、い、んー!ふたり、とも、ぼくの、だよ、ひっく、ひぐ。ぼくの、』

ペイス『…丸くなった。すごいな、お前』

 

ビロウ『っくそ、貴族として躾なおさねぇとな』

オブ『まったく、親の顔が見たいな』

ビロウ『あ”ぁ?!』

 

ザン(ヨル)『あれは…』

 

イン『…あぁ』

スルー『…あぁ』

 

イン『っはぁっ!かわいい!アンダー!』

だっ!

ビロウ・オブ『は?』

 

スルー『俺は未だかつて、こんなに他人から求められた事があるだろうか、いや……ない!』

だっ!

ザン『っえ!?』

 

ペイス『こんなに人は丸くなれるのか』

アンダー『っひう。いんー』

 

イン・スルー『可愛い子!おいで!』

 

アンダー『う?』

イン『こんなに俺の事が好きなんて!ほら、抱っこしてあげる!』

スルー『全身全霊で俺が好きか!ほら、俺はお歌を歌ってあげよう!』

アンダー『あっ、あっ!きょう、こっちのいんもあっちのいんもいっしょに、いっしょにぼくの、おふとんで、ねて!』

 

イン・スルー『寝る寝る!』

 

ビロウ『はぁっ!?最近忙しかったから、俺とだろうがっ!?どれだけ我慢してたと思ってんだよ!アンダー!おいっ!』

オブ『(ビロウ、殺してやりたい)』

ザン『久々に会えたのだが(屋敷に来るんじゃないのか)』

 

ペイス『かえろ』

 

結局、三人で寝ました。

 

【スルー登場編 おわり】