番外編4:茂木君は気持ち悪い

≪前書き≫

 

【番外編3:人間とは欲深な生き物である】の続きです。

R18となっております。

キリリクを受け付けた豆乳さんに、茂木君はどんな性行為をお願いするのか。

行為自体は温いですが、ともかく茂木君が気持ち悪いです。

 

どうぞ。

 

 


 

 

 俺の神は慈悲深い。

 

 

茂木君は気持ち悪い

 

 

 

 俺の神は慈悲深い。

 

 

『今日はこれから、茂木君の……キッコウさんの言う事を何でも聞きます!』

 

 神は居て下さるだけで十分尊い存在なのに、それを超えて俺に与えようとしてくる。しかも、その理由が、また尊くて萌える。

 

『だ、ダメだよ!あんまり不公平だと、その……また俺、いつか、キッコウさんに見捨てられたら……嫌だし』

 

 神は、俺が一度消えた事を、未だに引きずっているようで、未だにその事を夢にも見るそうだ。

 

『たまに、夢に見るよ。【このアカウントは存在しません】って。俺、何回も何回も確認した。通知の欄から飛んでみたり、キッコウさんのアカウント名で検索したり。でも、見つからなかった。悲しくて、苦しかった』

 

それを、狭いベッドで共に横になりながら悲しそうな顔で俺本人に言ってくるのだから、本当に堪らない。

 最高の俺だけの神様は、俺の付けた傷のせいで未だに苦しみ続けている。

 

 その事実を思うだけで、俺は一晩に二回、いや三回はヌける。ただ、もし今の俺が十代半ばだったとしたら、五回はヌけた筈だ。

実際、十五歳の頃、豆乳さんにSNSアカウントを作るよういお願いした時の『キッコウさんだけにしか見られたくありません』のメールの一文で、五回ヌいた事があるのだから。

 

『っはぁ、っはぁ。ははっ!豆乳さん。あなたって本当に最高だ!』

 

自分でも思う。俺は何て気持ち悪い男なんだ、と。いやらしい映像を見るワケでもなく、いやらしい文章を見るワケでもなく。ただメールの一文。その一文の向こうに、俺は俺に寄りかかる神様の姿を彷彿として、気持ちが昂らせる。

 

 ただ、そんな俺も神様から「エッチな事でも何でもする」なんて言われればそれは直接の快楽を得たいもので。その時の俺は考えた。何をして貰おうかと。ポイントは、コレがそのまま神の手によってBL小説に書き下ろされるという事だ。

 

リクエスト小説の題材となる性行為ならば、そう。俺は――。

 

「っん」

「ん。どうぞ」

 

 触る前から、既に完勃ちするペニスを豆乳さんが、目を瞬かせながらジっと見つめる。あぁ、その視線だけでイきそうだ。

 

「わ、あ」

「どうですか?」

「お、っきいです」

 

今、豆乳さんはベッドに座る俺の足の間に、膝と両手を床について座っている。ただ、視線だけは俺のペニスに絡みつくように向けられていた。無意識だろうか。スンスンと鼻を鳴らす姿は、まるで子犬か何かのようだ。

 勃起するペニスを前に、まず匂いを嗅ぐなんて、なんてこの人はエッチなのだろう。

 

「あの、キッコウさん」

「どうされました?」

 

 豆乳さんの頬にうっすらと勃起するペニス越しに、豆乳さんは躊躇いなく言った。

 

「本当に、フェラだけでいい?」

「ええ、大丈夫です」

「挿れなくていい?」

「はい」

 

大勢の前や、慣れていない人間の前では喋るのに台本が必要な癖に、こんな卑猥極まりない場面で「挿れなくていい?」といういやらしい言葉は、平気な顔で口にする。

 

「本当に?フェラだけでお礼になる?」

「なります。安心してください」

 

普段から目にして、性描写でも使う言葉だからだろう。意外にも豆乳さんは卑猥な言葉への耐性が強かった。

 

『キッコウさんの、おちんちん。すごくっ、俺のナカでビクビクしてる。おっきぃ。きもちい。しゅきぃっ』

『もっと、おく、いっぱい突いてっ』

『きっこ、さぁん。好き。もっと、せーえき、欲しいっ』

 

 昼間に吐く普通の言葉は、オドオドとしてぎこちない癖に、卑猥な言葉はスムーズに口にするなんて!

まったく、なんて萌えるキャラ設定なんだ。これだから、作品だけではなく、豆乳さん自身も神だと言うんだ!

 

「今日は豆乳さんも、俺が口でイかせて差し上げますので」

「俺はいいよ。コレはキッコウさんへのお礼だから。俺のはあとで、自分でするよ」

「いいえ。そういう、リクエスト小説なんです。お互いにフェラでイかせ合う。いいですか?」

 

 俺が豆乳さんの頬に手を添えながら言うと、くすぐったそうに目を細めた。俺の神様は、どうしてこう動作の一つ一つが可愛いんだ。先程の夕飯の時の会話だってそうだ。

 

『貴方は【まろやか毎日】の記念すべき一人目に感想を送ってくれた方です。ありがとうございます。キリリクを受け付けました』

 

 最高に可愛くて、尊くて堪らない。あぁっ、最高最高最高最高最高。

 

 俺のペニスが記憶の中の豆乳さんを思っただけでフルリと震えた。完勃ちだと思っていたのに、どうやらまだまだだったらしい。まるで早く咥えてくれと言わんばかりに、俺のペニスは豆乳さんへと擦り寄っていく。まったく、本体同様困ったものだ。

 

「んっ、わかりました。挿入ナシの行為重視ですね」

「はい、よろしくお願いします」

「ふふ。俺の初めてのキリリクだ……うれしいなぁ」

 

 頬に触れる昂ぶりに擦り寄る豆乳さんの姿に、俺の頭はトんだ。俺の神様は可愛い。もう、それしかない。

 

「っふーーー」

 

最早、興奮気味の脳は語彙力を完全に消失……いや焼失している。脳内が興奮で焼き切れて、言葉が出てこない。でもいい、ここから語彙なんて無用の長物となる。

 

快楽の前には、語彙力なんて無くて当たり前だ。

 

 

        〇

 

 

ちゅっ、ぺろっ。んっじゅるっ。

 

「んっふ、っはぅ。っむぅ」

「っはぁ。気持ちいですよ、豆乳さん」

「っん、ひゃい。ちゅっ、ちゅっ。っはん」

 

豆乳さんは、最初は舌で控えめに。まるでアイスか何かでも舐めるようにゆっくりと下から上に舐め上げた。そのうち、顔をペニスの側方に寄せ、俺の大退部に両手を尽きながら、全体をまんべんなく舐める。

 陰毛に触れる豆乳さんの息が気持ちが良い。

 

ちゅっん、っっふう。ちゅるっ、じゅっ、ちゃぷ。

 

ぴちゃぴちゃと舐め上げながら豆乳さんの唾液が俺の高ぶるペニスに流れ落ちる。そう、最近気付いたのだが豆乳さんは唾液が多い。お陰で何をするにも滑りが良いし、いやらしい。

 

「っぷはっ、ん、ちゅっ」

 

ピチャピチャと卑猥な水音が、控えめな動きの割に酷く激しく俺の耳を突く。キスをしていても、いつも豆乳さんの唾液は彼の口元を伝って落ちてくる。

 

『ん、もったない』

『むぅ』

 

俺はそんな唾液ですら、神の一部だと、いつも余すところなく舐め取る。すると、いつも豆乳さんは恥ずかしそうに目を伏せ、口を尖らせるのだ。あぁ、堪らない

そういえば。唾液を直接口に入れて貰った事もあった。

 

『豆乳さん、俺に貴方の唾液をください』

『え?』

 

最初はなんで?と戸惑っていた豆乳さんだったが『こういうプレイも小説ではアリなのでは?』と言うと、可愛い笑顔で俺に唾液を呑ませてくれた。

そして、もちろんその直後に更新された小説のR18部分には、受けが攻めに唾液を飲ませる場面が、それはもう素晴らしい描写力で描かれていた。最高だった。

 

俺のせいで、豆乳さんのR18部屋は、日を追うごとにマニアックさが増している気がする。ただ、今や大手投稿サイトに読者が移行している中にも関わらず、豆乳さんのサイトの……特にR18部屋は、未だに一日のアクセス数が安定して一定水準を超えている。

 

堪らない。俺達の性行為に、世の中の腐女子達は皆、

 

『ははっ、最高』

 

興奮しているんだ。

 

 

「っきっこうさ」

「っはい、どうされました?豆乳さん」

「……ちゃんと。こっち、みて」

「っふふ。すみません。寂しい思いをさせましたね」

 

 俺が若干意識を飛ばしていたせいだろう。俺のペニスに一生懸命舌を這わせていた豆乳さんが、少しばかり不機嫌そうな顔で俺を見上げていた。

 

「おれ、キッコウさんの為に頑張ってるから……」

「はい。すみませ」

「俺のこと、かまって。ちやほや、して」

「っはは!はい!もちろんです!豆乳さん!気持ちいですよ!お上手です!堪らない!」

「ふふ」

 

 俺の“ちやほや”に豆乳さんが満足そうに微笑む。たったこれだけで、豆乳さんはすぐにご機嫌になる。豆乳さんは嬉しそうに裏筋を舌で一気に舐め上げると、フェラを止めて感じ入るように言った。

 

「キッコウさん、すきだ」

 

あぁ、大変だ。まだ俺の昂ぶりは完全ではなかったようだ。あまりの神の可愛さに、剛直が更に強さを増した。

 

「んっ、っふちゅっ。っんんんっ」

「っは」

 

 豆乳さんは、俺がきちんと自分に意識を向けた事を確認すると一気にその口の中に俺の全てを咥え込んだ。いや、全ては無理だ。しかし、俺のペニス全体がヌルリと生暖かい豆乳さんの口内に包まれる。亀頭が豆乳さんの喉奥に触れる感覚に襲われた。

 

 あぁ、堪らない。このまま喉奥にそのまま吐き出してしまいたいっ。

 

「っはぁっ!っく」

「っふう、んっん。っひゅん。んっっ」

 

 じゅるじゅるじゅぽっ

こういう突然の緩急の激しさ堪らないのだ。先程までは子供がアイスを舐めるような仕草だった癖に、今は雄の全てを絞り取ろうと必死にむしゃぶりついてくる。

 

「んんんっっふぅっ!」

「っはぁっ」

 

豆乳さん描く物語と同じ。緩いペースの物語だったかと思いきや、急に展開が激しさを増し、意識を一気に持っていかれる。

 癖に、なる。

 

 俺は襲い来る射精感に堪える事なく、一気に豆乳さんの中に精を放った。

その瞬間、豆乳さんが涙を流す瞳の奥で、チラリと俺の顔を見た。その目は快楽と、享楽に濡れているにもかかわらず、どこか冷静で。

 

「っく」

 

 その目こそ、豆乳さんの作家としての目だ。俺の……攻めのイく姿を、絶対に逃すまいとする、貪欲な作家の目。

 あぁ。この目で見られると最高に、興奮する。

 

「っはぁ、っはぁ、っはぁ」

「むく、ん。っふぅ……っはぁ。キッコウさん、きもちよかったですか?」

「……はい、最高、でした」

 

この快楽は、後から小説として描くにあたって与えられた資料であり、ネタでもある。

そういう前提が、いつも豆乳さんの中にはあるせいか、どんなに激しい突き上げの中、激しい嬌声や淫語を口にする中でも、ここぞという時に向けられる、俺への観察眼は凄まじい。

 

『キッコウさん、その表情。凄く格好良くて、素敵です。今度小説に使わせて貰います』

 

 まるでそんな風に言われている気さえする。

 神様はいつもどんな時も、俺という一介の人間をネタにしてその指先で転がす。そして、また一つ新しい作品を作り上げるのだ。

 

 

 

 その日、俺は三回、豆乳さんの口の中でイった。後半二回はイマラチオでイかせて貰った。豆乳さんは苦しそうに、俺を見上げてポロポロと涙を零していた。可愛い。いや、申し訳ない。やっぱり、ナカを突く要領で、思わず腰を振りたい衝動に駆られるのだ。

 

 まるでサル。まるで思春期。

でも、全てが終わると、豆乳さんは肩で息をしながら満足そうにニコリと微笑んでくれる。口の横から垂れる俺の精液とのコントラストで、俺は再び勃起した。

 

もう救いようがなかった。

 

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——–

—–

 

 

「はい、茂木君!一昨日のフェラをし合う行為重視のリクエスト小説、出来たよ!【慇懃無礼】の受け視点です!」

「え?もうですか?」

 

 最近、俺達は職場に入る前に公園で待ち合わせるようにしている。どうせ、大豆先輩はバスの関係で早く着くのだ。俺が少し早く職場に着くようにすれば毎朝二人だけの時間が十五分は得られる。

 

「うん!キリリクは、早く消化しなくちゃだから!次のキリバンが来るかもだし」

 

 そう言ってチラと此方を見てくる大豆先輩は、今日も今日とて神だ。神神しい。輝いている。可愛い。堪らない。

 

「次のキリバンも、俺が踏んでも?」

「うん!もちろんだよ!【まろやか毎日】のキリバンは茂木君専用だよ」

「ハーーーーー」

 

 天を仰ぐより他なし!

 どうやら、大豆先輩は「キリリク小説」にハマってしまったようだ。きっとサイト運営時、自分もやってみたくて仕方がなかったのだろう。

 

「踏み逃げ厳禁です!」

「……踏み逃げなんてそんなもったいない事しませんよ」

 

 俺はスマホから【まろやか毎日】へ飛んでみると、仕事の早い事にそこには一つ新しい部屋が出来ていた。

 

【キリリク部屋】

 

「……豆乳さん」

「はい」

「ありがとうございます」

「いいえ!」

 

 豆乳さんはニコッと嬉しそうな笑みを浮かべると、公園のベンチから立ち上がった。そうか、もう出勤する時間か。できればこのままトイレの個室に入り込んで、神が俺の為だけに書いたR18作品を読みふけりたい。

 しかし、そうも言ってはいられない。

 

 今日も一日働いて、早く大豆先輩と一緒に暮らす部屋を借りなければ。

 

「読んだら、感想送ります」

「ふふ、無理しなくていいよ」

「いえ、必ず送りますので」

 

 待っていてください。

 

 

 その日、俺は仕事が終わるのを今か今かと待ちわびた。

大豆先輩には悪かったが、まだ電話対応をする先輩を横目に、俺は定時で上がる。なぜなら、今日俺はやれねばならない事がある。

 

 それは、もちろん

 

「っはぁ、っはぁ。豆乳さん、あなた、俺のをこんな気持ちで咥えていらっしゃったんですかっ?苦しくて、でも気持ち良い。オスの匂いが鼻孔に広がって?あぁ、あの時、俺の匂い、かいでいらっしゃいましたもんねっ!豆乳さん!」

 

 豆乳さんの書いたリクエスト小説で、自慰に耽る為だ。

 

「っは、っは。喉の奥に、精液のひっかかる感覚がする……でも、俺はそれを、全部飲み干す。大好きな彼の味が、鼻の奥からツンと香った……へぇっ!そうでしたかっ!苦しそうにしながら、そんな事を考えていたんですねっ!まったく俺の神様は最高にいやらしい!」

 

 何故、俺がわざわざリクエスト小説を踏まえた性行為にフェラを選んだのか。それは、俺のモノを咥え込む行為を、豆乳さんの視点でもう一度追体験する為だ。

 

「っはぁ、いい。最高だ」

 

 通常のセックスの描写は、もう既に何度も見せてもらっている。ただ、濃厚にフェラやイマラチオだけに特化したモノはまだない。それに、俺のペニスを豆乳さんがどう描写するのか知りたかった。

 

 もう、俺は救いようのない変態だ。

 

「っはぁっ!」

 

 射精した。これで三回目だ。まだまだヌける。

 もう一度スクロールをして、最初からあの日をもう一度……そう、俺が思った時だ。小説の中の受けが直接俺に語りかけてきた。

 

『ね、きもちい?』

 ねえ、気持ちいい?キッコウさん?

 

「はははっ!豆乳さん!最高に気持ちいですっ!もう……これだから、貴方は神なんだっ」

 

 俺は文字を追い、記憶を追い、神様の手に誘われるように、何度も何度も精を吐き出した。

 

 やっぱり、豆乳さんは。俺だけの神だ。

 

 

 

 

おわり


 

やっぱり茂木君は気持ち悪い。