番外編18:初代様、ごはんを食べましょう(初代×犬)

 

——再会して二日後くらい

 

犬「初代様」

初代「何だ」

犬「あの、何かする事は」

初代「俺の側に居ろ」

犬「それ以外は…」

初代「今のところない」

犬「…あの、初代様」

初代「まだ何かあんのか」

犬「本当に、申し訳ございません。あの、俺」

初代「あ?(コイツ、何か様子が変だな。顔色が…)」

 

犬「…なにか食べるモノを頂いてよろしいでしょうか」ぐう

初代「あ(ヤベ、コイツ人間だった。飯くわねぇと死んじまうじゃねぇか!)」

犬「すみません!無理にとは言いません!許可を頂けないのであれば、食べませんので!」

初代「そこは俺の許可なんか取らずに食えよ!?死にてぇのか!?」

 

犬「いえ!初代様が何も口にされないのに、俺ばかり食べるワケにはいきませんので!」

初代「あのな!?俺はもう人間じゃねぇから何も食わなくても死なぇんだよ!」

犬「そ、そうなんですか?」

初代「ああ。だからお前は気にせず飯を食え。餓死したら承知しねぇからな」

犬「はい」

初代「…ただ」

 

犬「ただ?」

初代「ここには人間の食いモンがねぇ」

犬「でしたら、俺が買いに行きます」

初代「は?ダメに決まってんだろ。俺が行く」

犬「いえ!俺の食べ物を初代様に買いに行って頂くなんて!とんでもない!」

初代「あ?俺に逆らうのか」

犬「いえ!そんなつもりは…!」

初代「だったら黙って」

 

犬「では、一緒に連れて行ってください!俺のモノを初代様だけに御足労頂くのは我慢できません…」

初代「(確かに、俺じゃ何を買ったらいいかわかんねぇしな)…仕方ねぇ。その代わり、俺から離れたらタダじゃおかねぇからな」

犬「はい!ありがとうございます!」

初代「絶対だからな」

犬「はい!」

 

 

ーーーーー

ーーー

買い物終了

 

犬(ずっと手を繋がれてたな……ちょっと恥ずかしかった)

初代(次からは下僕を呼んで買いにいかせねぇと。毎回外に出てたら、いつまた犬が逃げるか分かったモンじゃねぇ)

 

犬「それでは、今から食事を作ってきます」

初代「おう」

犬「あの、初代様」ソロソロ

 

初代「あ?」

犬「調理器具や食器まで買ってもらって…本当にありがとうございます」土下座

初代「んな事してる暇があったらサッサとメシ作って食え。マジで死んだらぶっ殺すからな」

犬「はい(今の俺は初代様の命令なら、いつでも死ねるなぁ)」

初代(いや、殺したらダメだろ。何言ってんだ。俺)

 

 

ーーーーー

ーーー

料理完成!

 

犬「出来ました」タタタ

初代「あ?」

犬「どうぞ。あ。もう少し多くよそいますか?」

初代「は?」

犬「え?」

初代「…俺はもう魔族だから、人間のメシを食う必要は」

犬「っ!すみません!そうおっしゃっていたのに!これまでの癖で!」

初代「…(あぁ、そうか)」

 

初代(つい最近まで、コイツは人間だった頃の俺に、メシを作ってたのか…)

犬「すみませんでした!これは、明日の朝、俺が食べます!食材を無駄にはしません!」

初代「…いや、いい。食う(人間の食べ物なんて…いつぶりだ?)」

犬「あの、無理されなくても…」

初代「食う。もう黙れ」

 

犬「っ!はい!」ソソッ

初代(人間のメシ…いや、犬の作ったメシなんて。コイツが居なくなって以来だ)

犬「お口に合わなかったら、遠慮せず残してください」

初代「ああ(良い、匂いだ。懐かしい)」

犬(大丈夫かな。嫌いなモノとか増えてないかな…)ジッ

 

ぱく

 

初代「……」

犬「……」

 

ぱく

 

初代「…うめぇ」

犬「よ、良かったです。俺も、いただきます」ホッ

 

初代「……」ぱく

 

ーーーーあなた、またそうやって食事を残して。

ーーーーお父様、食べられないのですか?

ーーーーいや。

 

初代「…うまい」ぱく

犬「ふふ。良かった」

初代「……」ぱく

 

ーーーーっう゛ぇぇっ!っはぁ、っはぁ

 

ーーーー犬、メシは?

(あとで、スープを持って行きますね)

ーーーーこの、ウソつきが

 

初代「……」ボロ

 

犬「え?(初代様?)」

初代「っう」ボロボロ

犬「え、え、えっ!初代様!どうされましたか!?」

初代「っな、んでも、ねぇ」

犬「え?でも。でも(初代様が……な、泣いている!)」

 

初代「っう、っ」ボロボロ

犬「あ、あの!美味しくないのであれば、さ、さ、下げますので!あの」ガタ!

初代「美味いっつってんだろうがっ!」ボロボロ!

犬「っ!(初代様、めちゃくちゃ泣いてるーー!)」

初代「っひぐ。もう、なにも、いうな」

犬「は、はい(えぇ、この状況で…食事?えぇ…)」

 

初代(やっと、食えた。やっと…犬の、メシが)

 

ぱく

 

ーーーー後で作って持っていきますね。スープの準備は出来てますよ?

 

初代(おせぇ、おせぇよ)

 

ぱく

 

初代「う、まい。っう。めぇ」ボロボロ

 

犬「…(めちゃくちゃ食べ辛いなぁ)」ぱく

 

 

途中の台詞は「番外編8:初代様はひとりぼっち」より

犬と再会して初の初代様の食事でした。何百年ぶりだったのかな?

 

再会した時

 

「腹減った。おい犬。メシ」

 

とは言ったものの、もう本当は何も食べなくても良かった初代様。再会した直後からヤりまくっていたせいで、すっかり食べるのを忘れていました。これから毎日食べようね。

 

 

 

○おまけ○

 

せがれ「い゛やーー!これ、い”やーーー!」ブンッ!

 

ガシャン!

 

犬「あぁ(コレもダメかぁ。初代様は好きなんだけどなぁ)」いそいそ

 

初代「おいっ!せがれ!好き嫌いしねぇで食え!この贅沢モンが!」

せがれ「い゛やーーー!」

初代「ったく!誰に似たんだ!」

 

犬「…」(遠い目)