魔王城登城中!
ヒスイ「おいっ!ヘマ!付いて来てるか!?」タタ!
ヘマ「はーい!」タタ!
ヒスイ(ヘマのヤツ、全然バテてねぇな。ほんと、ヤってる時もそうだが、意外と体力あるし最高かよ!っし!このまま一気に…っ!)ピタ
タタタ!(追い越し)
ヘマ「あれ?イシ君?こっちじゃ…っ!」チラ
ヘマ「あーーっ!イシ君!」テテ!
ヒスイ(クソがっ!もう夜明けかよ!ダンジョン内に居るせいで全然夜明けに気付けなかった!)
ヘマ「ほんとだね!お城の中だと全然夜明けに気付けなかったね!」
ヒスイ(さすがに一晩で魔王城攻略は無理があったか)
ヘマ「うんうん!一晩じゃ難しかったねー!」
ヒスイ(…ヘマ。最近俺の考えてる事…よく当ててくれるようになったな。ふ、夫婦だからか?)
ヘマ「うんうん。イシ君の事はちゃんと分かってるよ!だって、オレはイシ君の奧さんだからね!」にこ
ヒスイ(っ!さすが俺の嫁だ。っし!なら登城は明日に持ち越しだ!ヘマ、今日はどっかに隠れて休め!)
ヘマ「うんうん?そうだよね、イシ君も早く呪いを解きたいよね!わかった!このまま出来るだけ進め!だね!」
ヒスイ(は!?おいおいおい!何言ってんだ!?ヘマ!俺の声は届いてねぇのかー!?)
ヘマ「聖なる翼よ!此処に舞い降りて。この者の鎖を断て!」
パァ
ヒスイ(これはっ!クソ!ヘマ!)
ヘマ「よし!これで軽くなったね!これからはイシ君はオレが抱っこして歩くよ!ふふ」
だっこ!
ヒスイ(ヘマ!頼むから俺の石化が解けるまでは安全な場所で隠れてくれよ!お前に何かあったら…)
ヘマ「ふふ。恥ずかしいから前向きに抱っこして?ダメだよ!イシ君はオレを見ながら進むんだよ!」
ヒスイ(あ”ーーー!可愛いなこの野郎!?動きてぇぇぇぇっ!)
ヘマ「行こう!モンスターが出たら逃げるから安心してね!」タタタ
ヒスイ(クソっ!マジで大丈夫かよ!ヘマ……!絶対怪我すんなよ!)
ヘマ「ちゅっ!ちゅっ!ふふ」
ヒスイ(あ“ーーーー!マジで何で俺は今、石なんだよ畜生が!!)
ーーーーー
ーーー
一方その頃
サンゴ「皆、大丈夫か?」
アーチャー「おうよ!楽勝だよな?皆!」
魔法使い「そうね。…でも何だか不気味。ずっと奥から呻き声みたいなのが聞こえる」
タンカー「魔王城だからな。何かスゲェモンスターが居るんじゃ…」
ヒーラー「サンゴ、怖いわ」
サンゴ「…ふう」
サンゴ「皆、ここからは今までとは違うダンジョンだと思おう。気を引き締めろ。……皆、必ず魔王を倒して全員で此処を出るぞ」
パーティ一同「おう!」
サンゴ(とうとう此処まで来た。後は魔王を倒すだけだ。そしたら俺は…英雄になれる。もう田舎者なんて誰にも言わせねぇ)
ーーーーサンゴー!
サンゴ(…はぁ、なんで今アイツの事なんか思い出すんだ。まさか、魔王を前に日和ってんのか?俺は…)
ーーーーサンゴー!
サンゴ「絶対にあんな村になんか戻らねぇからな…俺は」
魔法使い「サンゴ!ねぇ!」
アーチャー「おい!サンゴ!」
タンカー「サンゴ!あれ見ろ!」
サンゴ「は?何だ?」
ヘマ「わー!サンゴだ!それに皆も!久しぶり!」タタタ!
サンゴ「は!?ヘマ!」
アーチャー「ヘマだ。アイツ、まさか…」
タンカー「サンゴを追いかけて来たのか?」
魔法使い「怖。ここまで追いかけて来たの?」
ヒーラー「ねぇ、誰なの?」
アーチャー「あぁ、あれは…」
サンゴ「っ!ヘマ!」
ヘマ「っわわ!」ビクッ
サンゴ「お前、何で此処に居るんだよ。それに、何持ってんだよ」
ヘマ「あ、えっと…」後退り
ヒーラー(あんなサンゴ、初めて見る。いつもは凄く優しいのに)
魔法使い「お前の前任のヒーラーだよ」
ヒーラー「っへ?アレが?」
タンカー「そうだ。その…変わってるだろ?」
ヒーラー「変わってるっていうか…」
ヘマ「あ、あの。これは…」後退り
サンゴ「答えろ、ヘマ。お前はパーティーから外した筈だが?何で此処に居る」
ヘマ「あ、えっと。あの、ごめ。あの、」
サンゴ「はぁっ?ごめんじゃねぇだろ!お前、本当に俺の言う事聞いてねぇな!」ガンッ
ヒーラー「っ!」
アーチャー「あーあ。サンゴのヤツキレてる。普段は剣であんな事しねぇのにさ」
タンカー「大事にしてるからな」
魔法使い「仕方ないわよ。確かにヘマと話してるとイライラするもん」
ヒーラー(あの子が使えないから…私がパーティに入ったのね。それにしても、あの子。何を抱えてるのかしら)
サンゴ「せっかく最深部までもう少しだったのに!お前が居るとチームワークが乱れる……帰れ!」
ヘマ「!!」
サンゴ「お前は村で畑でも耕してた方がいい。一人でな」
ヘマ「や、やだ」
サンゴ「は?お前…今何て言った?」
ヘマ「い、いやだ!」
サンゴ「…ヘマタイト。お前、俺に逆らうのか?」
ヒーラー「サンゴ、怖い」
魔法使い「ヘマが居る時はいつもあぁだったわよ。アンタが来て平和だったのに」
アーチャー「あーぁ。士気下がるわ」
タンカー「サンゴ、これで精神が揺らがなければいいが」
サンゴ「帰れ!」
ヘマ「な、なんで?」
サンゴ「何でって…お前。いつまでも幼馴染だからって」
ヘマ「なんで!?なんで関係無いサンゴに帰れなんて言われなきゃならないの!俺はサンゴに会いに来たワケじゃないのに!」
サンゴ「は?」
ヘマ「わ、わかってる!オレはもうサンゴのパーティじゃない!知ってるよ!ほっといてよ!」
サンゴ「お前、何言って…」
ヘマ「オレはイシ君とパーティなの!」
サンゴ「イシ君?お前、その手に持ってるヤツ…まさか」
ヘマ「イシ君だよ!」
サンゴ「拾って来た、あの石かよ…。マジで?」
ヘマ「そうだよ!家族だから!」
サンゴ「ヤバい奴だって昔から思ってたけど。っはは。ほんとにヤバいヤツだったな、お前」
ヘマ「…っ!」
サンゴ「ほんと、気持ち悪ぃな」
ヘマ「気持ち悪くない…イシ君は気持ち悪くなんか…!」
サンゴ「誰がその石を気持ち悪いなんて言ったよ。俺は、お前の事を気持ち悪いっつったんだ。ヘマタイト」
ヘマ「!!」
サンゴ「もう俺に関わるな。俺はあの田舎の記憶ごと、お前も消したいんだ…」
ヘマ「…サンゴ」
サンゴ「さっさと帰れ」
ヘマ「サンゴは、オレが嫌い?」
サンゴ「嫌いだね。田舎も、ダサいのも、古臭いのも、全部嫌いだ。頼むから消えてくれ。俺は魔王を倒して新しく生きるんだ」
ヘマ「…そっか」
サンゴ「は?ヘマ。お前どこに…」
ヘマ「魔王様のところだよ。オレはサンゴと関係なく魔王様に会わなくちゃならないから」
ヘマ「オレは家族の為に行くよ。もう行くね。はいばい、サンゴ」
サンゴ「っ!」
ーーーーオレにもやっと家族が出来た! 早くキレイにしてあげたいから、もう行くね! ばいばい! サンゴ!
サンゴ「…ヘマ」
ヘマ「……大丈夫だよ、平気。オレにはイシ君が居るからね。ぐず」
ヒスイ(…ヘマ)
ヘマ、サンゴと再会するもサヨナラする!
【転生】の一郎もそうでしたが、思春期や、多感な時期というのは「恥ずかしい」という感情が、この世で一番の害悪になりえるのです。
サンゴは、田舎や古いモノ、変な幼馴染。それらを全部捨てたかったのでした。
魔王城の奥
??「うっ、うぇぇぇっ」