番外編21:くんくん!これは初代様の匂いじゃない!(初代×犬)

 

—–旅の途中

 

 

カランカラン

 

 

宿娘「いらっしゃいませ…っ!」

 

初代「おい、犬。今日はこの宿に泊まるぞ」

 

宿娘(めっちゃ!格好良い男来たーー!)

 

犬「はい。わかりました。受付をしてきますので、お待ちください」

初代「おう」

宿娘「お泊りですか?」チラ

犬「はい、一泊でお願いします」

 

宿娘「……お部屋は?」チラチラ

犬「えっと、二つ部屋を…」

 

初代「一つでいい」

犬・宿娘「え?」

 

初代「もったいねぇだろうが(どうせ抱いた後、そのまま寝るんだからな)」

宿娘(お金が無いのかしら?なら、)

犬(俺は犬だし、これからは床で寝ろという事だろうか?)

宿娘「あぁ、ちょうど良かったです」にこ

 

宿娘「今、閑散期で部屋が空いているのでお一人の料金で二部屋お貸ししましょうか?(夜、部屋に遊びに行っちゃお!)」

犬「えっ!いいんですか?(凄く良い宿だ)」

初代「ちっ(余計な事を)」

犬(舌打ち…?俺、何か余計な事したかな)

宿娘「じゃあ二部屋で…」

初代「一部屋で大丈夫ですよ?」

 

犬・宿娘「え?」

 

初代「二部屋で一人分の料金なんて悪いですよ。それに、急な団体のお客さんが来た時に、お断りする事になったら、それこそ他の方にも迷惑がかかりますので」にこり

犬(う、うわぁ!久々に見た初代様の外面……凄いなぁ。凄いなぁ!)二回言う

宿娘(顔も良ければ、性格も良い!)

 

初代「部屋の鍵を頂いていいですか?」

宿娘「あっ、ハイ。お待ちください(それなら……!)」

 

初代「今後は一部屋で取るようにしろ」コソ

犬「あ、はい。承知しました(俺、これから床か…)」

 

宿娘「はい。こちらが鍵です。あと、うちのサービスなんですが、洗濯物がある場合は出されてください」

 

犬「えっ、いいんですか?」

宿娘「ええ。これは皆さんにしているサービスなので。遠慮なく出されてください(ウソだけど)」

犬「わぁ、ありがとうございます(良い宿だ)」

初代「行くぞ」

犬「はい」

宿娘「洗濯物は此方にお持ちくださいねー!」

 

初代(あー久々にベッドでヤれるわ)

犬(床かぁ)

 

 

in部屋

 

 

犬「初代様、洗濯物を頂きます」

初代「あ?」

犬「さっき、洗濯物を出したらやってくれるって宿の人が…」

初代「…ヤだ」

犬「(言い方が…)えっと、どうしてですか?あの、もしかして宿の人に申し訳ないとか…」

初代「んなワケねぇだろ」

犬「(ですよねーー!)じゃあ、何でですか?」

 

初代「…言いたくねぇ」フイ

犬「あ、えっと。余計な事を言いました。すみません(どうしたんだろう)」オロ…

初代「…」俯く

犬「…(土下座した方が良いかな)」

初代「おい、土下座はいらねぇからな」

犬「あ、はい。すみません(何で分かったんだろう)」オロオロ

初代「…あー、クソ。まぁいいか」

 

初代「昔、宿で下着盗まれた事があんだよ」

犬「へ?(マジか)」

初代「盗まれたり、別のとすり替えられたり。キメェんだよ。マジで」

犬(イケメン過ぎると、男でもそんな被害に……)

初代「でもいい。絶対そうされるワケじゃねぇし。出して来い」

犬「あ、あの」

初代「なんだ」

犬「俺、子供の頃のあだ名が”犬”で…」

 

初代「あ?お前はずっと犬だろうが」

犬「(初代様、本気で言ってる…)あ、はい。そうですね」

初代「で?ガキの頃から犬呼ばわりされてたから……何だよ」

犬「あ、はい。俺、他の人より鼻が良くて。忘れ物とか、匂いで誰のか当てられるんです(保育園の頃が人生で一番輝いてたな)」

 

初代「…で?」

犬「なので…その。盗られたり、隠されたり、他のと取り換えられたりしても、俺が気付けます」

初代「へぇ、お前。俺の匂いを覚えてんのか?」

犬「はい。なので、ご安心ください」ペコ

初代「っはは、マジで笑えるわ。好きにしろよ」

犬「はい」ゴソゴソ

 

初代(俺の匂いねぇ…)ムズ…

犬「初代様、洗濯物を出してきます」

初代「おう。出したらすぐ帰って来いよ(抱くから)」

犬「はい、分かりました」タタタ

 

 

      〇

 

 

宿娘「洗濯物ですか?(あ、イケメンの連れだ!)」

犬「はい、お願いします」

 

宿娘「他のお客様と混じるのを防ぐ為に、お一人分ずつ仕分けて下さい(絶対、アンタのは要らないから)」

犬「はい。これとこれが…(モテ過ぎるっていうのも考えモノだな。もしかすると、初代様はモテ過ぎて闇落ちしたのかもしれない。…可哀想過ぎる。初代様の下着は、俺が守らないと)」決意

 

宿娘「はい、確かに承りました。明日、出発される際にお渡ししますね」にこ

犬「はい、よろしくお願いします(良い宿だ)」

 

 

——-

—-

次の日

 

 

初代「あー、スッキリした」

犬「(部屋一つでいいって…こういう事だったんだ)いてて」

初代「なんだ?腰でも痛てぇのか?(ちょっとヤり過ぎたか)

 

犬「いえ、大丈夫です(この程度、なんてことない…いてて)」すた、すた

初代「なら、行くぞ(まだ余裕か。なら今度はもう一発、いや二発くらいは…)」スタスタ

 

宿娘「あ、ご出発ですか?(あー、やっぱイケメン過ぎ!)」

 

犬「はい(腰痛い)」

宿娘「こちらが、昨日お預かりした洗濯物です」

犬「あ、ありが…ん?」

宿娘「どうされました?」

 

犬「…」ジッ

 

宿娘「あの…」

初代「おい、い…じゃなかった。お前。どうした?」

 

犬「ちがう」

宿娘・初代「へ?」

犬「これ初代様の下着じゃない」

宿娘「いえ、コレですよ?(同じモノ準備したもの!)」

犬「違います。だって…くんくん」

 

 

下着の匂いを嗅ぐ犬!

 

 

初代「っ!おいおいおい!おいっ!何やってんだ!?」

犬「初代様の匂いがしない」

宿娘「え?それは洗濯したから…(何コイツ、キモイ)」

犬「洗濯したって初代様の匂いくらい分かります。下着、返してください(初代様の下着は渡さない)」真剣

 

初代「…」ムズ…

宿娘「そ、そんな事言われても」

 

犬「くんくん、くんくん。これとこれは大丈夫。でも、これと、こっちの下着は違う(パンツばっかり狙われてる。この子、可愛いのに変態だ)」

宿娘「ちょっと!言いがかりはよしてください!(全部バレてる……てか、こいつキモ過ぎ!)」

初代「…ふーー」天を仰ぐ

 

宿娘「あ、あの…(イケメン、助けてよ!)」

初代「この二つは……お返しします」にこ

宿娘「え?(う、うそ?)」

初代「うちの犬の鼻は確かなので。それに」にこ

宿娘「あ、え?い、犬?」

初代「間違いがあってはならないと…目印も付けていたので。うん、これは確かに俺のではないようです」にこ

 

宿娘「(う、嘘!目印なんか無かった筈!)そんな…」

初代「ん?」にこ

宿娘「っ(この目、完全にバレてる!!)」

初代「一ついいですか……(この変態女)」コソ

宿娘「っ!(声が)」

初代(この事は口外しないでおいてやるから、もう一泊タダで泊めさせろ)

宿娘「ぁ、ぁ」

初代(どうなんだ?)

 

宿娘「…わ、わかり、ました(こわい)」

初代「ご理解頂けて本当に良かった」

 

犬(どうしたんだろう?)

 

初代「もう一泊する事になった」

犬「っへ?そうなんですか?(下着は?)」

初代「ああ、部屋に戻るぞ」

犬「は、はい。あの、下着は?」

初代「あの二つは返す。他のは確かに俺のか?」

 

犬「はい!大丈夫です!」

初代「念のためもう一回確認しろ」

犬「はい!(初代様の下着を守らないと)」

 

 

犬が初代様の衣類をくんくんしているよ!

 

 

初代「……」ムズ…

犬「はい!大丈夫です!ここにあるモノは全て初代様の衣類で間違いありません!」

初代「…そうか。すぐに部屋に戻るぞ」ムズムズ

 

犬「はい!…くんくん(うん、間違いない)」

初代「行くぞ」

犬「はい!(この特技が、また役に立つなんて思いもよらなかった)」にこ

初代「ふーーーっ(抱き潰してやる)」スタスタ

 

宿娘「…何なの、あれ」

 

 

 

 

2月22日は猫の日!猫も可愛い!犬も可愛い!そんなワケで犬のお話でした(どんなワケだ)

 

初代様の下着の匂いをいっぱい嗅ぐ犬。

犬が自分の下着をくんくんしている姿に興奮する初代様。

イケメンの下着を盗もうとした可愛い宿の女の子。

すなわち、全員変態!

 

でも小学校の先生をしてる友達が言ってたんだよ。匂いでお友達の落とし物判別してくれる男の子が居るって!

ほんとだよ!