番外編21:BL小説はお花がいっぱい(ヒスイ×ヘマ/初代×犬)

 

 

—-魔王城居候中

 

ヘマ「ヨーサンサプリ―!」

犬「今日もありがとうございます。大賢者様」

ヘマ「(ヘマなのに…)いいよ。ねぇ犬のお母さん。いま、赤ちゃんは何日才?」

犬「(犬のお母さん…)な、何日才……?えっと、俺も、よくわからなくて」

 

ヘマ「そっか。まだお腹がペタンコだから、百日才くらいかもね」よしよし

犬「はぁ、そうなんですね(相変わらず独特だなぁ)」

ヘマ「犬のお母さんは、今日何をする予定?」

犬「あ、えっと。初代様から、あんていき?に入るまではあまり動くなと言われていて……」

ヘマ「そっか。じゃあ、する事がない?」

 

犬「っ!は、はい。俺は今、何の役にも立てません。俺は、犬なのに」

ヘマ「そんな事ないよ。犬のお母さんは赤ちゃんを育ててるよ」

犬「でも実際は寝ているだけ。俺は役立たずのごく潰しだ……」

ヘマ(あわわ、これは!またにてぃぶるーだ!こういう時は週刊誌!……は魔王様に盗られちゃったし)

 

犬「俺は、何の為にここに居るんだろう……。侵入者も追い払えず、初代様の食事の準備も出来ない。面白い事も言えない。コミュ障で暗いし……」

ヘマ(どうしよう!どうしよう!何か、犬のお母さんが元気に、楽しくなれるモノは……)あっ!!」

 

——これを読むとね、自然と微笑んじゃうの。

 

ヘマ(そうだ、アレがあった!)

 

——ヘマちゃんも旅の途中で辛そうな人が居たら、これを見せてあげて。きっと元気になるから。

 

ヘマ「犬のお母さん!これ!これ読んであげる!」

犬「へ?」

ヘマ「びーえる小説―!」

犬「えっ、BL!?」

ヘマ「知ってるの?犬のお母さん!」

 

犬「あ、いや。お、お、オタクなので……じゃ、ジャンルとしては…知って、ます。あ、あの。男性同士の、あの…ソウイウ(こっちにもBLって存在するんだ)」

ヘマ「(おたく?)そうそう!男の子同士が結婚して仲良く暮らすやつ!じゃあこの話は知ってる?」

犬「この話?」

 

ヘマ「【勇者パーティから追放された魔術師の俺は異世界からやってきた勇者に懐かれて不労所得を得る旅に出る〜一攫千金で手に入れたお金で買った家が魔王城なんて聞いてない!〜】だよ!」

犬(タ、タイトルが長い。というか、この世界にもこういうのがあるのか……)

ヘマ「ねぇ、知ってる?」

 

犬「あ、知らないです」

ヘマ「ふふ。じゃあコレね、すごく面白いからオレが読んであげる!」

犬「え?BLを?」

ヘマ「うん!悲しい気持ちも、これを読むと無くなるからね!」

犬「あ、はい。じゃあ…(BLって絶対にいやらしい場面があるイメージだったけど、コレはそういうのじゃないのかな?)」

 

 

ヘマ「その日!俺は追放された!」

犬(あ、もう追放されちゃった……)

 

 

        〇

 

 

スタスタ

 

初代「おい、ザコ。勇者と戦闘して壊れた場所、ちゃんと修理しとけよ」

ヒスイ「はぁ!?なんで俺がンな事しなくちゃなんねーんだよ!」

初代「ったりめぇだろうが!テメェが壊したんだから!」

 

ヒスイ「っちげーし!あれはサンゴのヤツが!」

初代「じゃあ、今度そのザコその2に修理するように言っとけ」

ヒスイ「俺とアイツを横並びにすんじゃねーし!」

初代「あ?俺からすりゃ、俺以外は全員ザコなんだよ。ザコが」

ヒスイ「……ヤバ。コイツ性格、クズだわ」

 

初代「あ゛ぁ!?テメェに言われたく……ん?」ピタ

ヒスイ「どうしたんだよ?また侵入者か?」

初代「……ちょっと黙れ(犬の部屋から、声が)」

 

ヘマ「~~」

 

ヒスイ「……ん、ヘマ?」

 

ガチャ

 

ヘマ「勇者は、魔術師の、二つの、いろづいた、せんたんの、かじつを、ゆびで、ぴんと、はじきました!」

 

犬(めっちゃR18の場面があるやつだった)

ヘマ「ねぇねぇ。犬のお母さん」

犬「あ、はい(出た、大賢者様の優しい過度な注釈)」

ヘマ「これ、何かわかる?『二つの、いろづいた、せんたんのかじつ』って」

犬「あ、はい。なんとなく」

ヘマ「はぁ、犬のお母さんはすごいね」

 

ヘマ「オレは最初に読んだ時、急に果物が出てきたんだと思って、何回も読み直しちゃった。どこから取ってきた木の実なんだろうって」

犬(素直過ぎる……)

ヘマ「他にも、つぼみ、とか、みつをしたたらせる、とか。お花の言葉が出てくるけど、これはお花の事を言ってるんじゃないんだよ」

 

犬「はい、わかります(R18の場面はいいから、先の展開が知りたいな。追放したパーティがどれだけザマァされるのか知りたい)」

ヘマ「じゃあ続きを読むね!……すると、そのしゅんかん、からだに、あまいいかずちに、撃たれた……えっとね、ここは甘いワケじゃないんだよ!」

犬「はい(進まないなぁ)」

 

ヘマ「それにね、本当にいかづちに撃たれたワケじゃないんだ。それくらい気持ち良かったって事。本当に撃たれたら死んじゃうからね」

犬「はい(大賢者様。最初に一人で読んだ時、どういう話だと思って読んだんだろう)」

 

ヘマ「コレはね、気持ちは分かるんだ。イシ君がしてくれる時に、これが『甘いいかづち』かあって思う事があるから。犬のお母さんは分かる?」

犬「あ、はい。分かります(大賢者様相手だと何を言っても全然恥ずかしくないなぁ)」

ヘマ「あれ、気持ちいよね?」にこ

犬「はい、凄く気持ち良いです」にこ

 

ヘマ「ね!今日、イシ君にしてもらおー!」にこにこ

犬(大賢者様、全然続きを読んでくれなくなった……本、貸してくれないかな。最後だけ読みたい)

 

部屋の外

ヒスイ「よーし、今日ヘマに甘い雷ぶっぱなすかー!」チラ

初代「……」俯

ヒスイ「……(ニヤ)魔王も甘い雷ぶっぱなしてやれよ!」バンバン

 

 

初代「……」俯

ヒスイ「あっ、ごめん……今、魔王、アレだったな。元気出ないんだったな……元気出せって。元気出ねぇだろうけど……ぐはっ」みぞおち!

初代「オイ、あの技、俺も覚えてもいいだぞ」

ヒスイ「…ゴメンナサイ」

 

 

初代様、犬からの夜の感想をこうやって聞いた事がないから本当は嬉しかったみたい!俯いている顔の下は、ホントは笑ってたんだよ!でも、元気は出ないよ!そして、ヘマは自分が読み聞かせたいからって、犬に本を貸してくれなかったよ!

 

 

〇おまけ〇

 

初代(早く生まれろ早く生まれろ早く生まれろ)念

犬(今日のハンドエコーは、えらく長いなぁ)

 

 

産まれた後の方がご無沙汰になったよ!赤ちゃんは泣くのが仕事だからね!

下ネタごめん!