番外編4:天才のお喋り(カルド×ヨハン)

≪前書き≫

 

本編から少し後。

 

ヨハン視点の二人の夜の営み。

R18となっております。

 

カルドはどんな時も黙らない。

全部を口に出す。言葉責めとも違った何か。

そんなカルド相手に、ヨハンは一体どうやって気持ちを伝えるのか。

 

では、どうぞ。


 

 

 

 

番外編4:天才のお喋り

 

 

 

 カルドは昔から楽しそうに喋る人間だった。

 

「先日、学会でコペルナスの原理について新たな解釈が発表されるということで話を聞いてきた。しかし、何の事はない。ただ、既存の枠組みをアスカのマナで置き換えただけのモノだったよ。まったく、あれは果てしなく無駄な時間だった……いや、キミとの時間の事を言っているワケじゃない。それは勘違いしないように」

 

 急に焦ったような表情で此方を見てくるカルドに、俺はウンウンといつものように頷いた。すると、カルドは焦った表情から一転して、再びその顔に満面の笑みを浮かべた。

 

「あ、待ってくれ!今、素晴らしいアイディアを思いついた!素晴らしい!この素晴らしいアイディアが生まれてきた記念に、さぁ、ヨハン。“いつもの”を私にしてくれないか?」

 

 今日も今日とてヨハンは俺のような凡庸な人間に向かって、その輝く青い瞳を俺に向けると、大仰に両手を広げてみせた。そんな、まるで舞台俳優か何かのような彼の姿に、俺は声もなくクスクスと笑うと、彼の腰かける椅子に向かって歩を進めた。

 

「さぁ、ヨハン」

「……」

 

 “いつもの”

 それは、まだ“いつもの”というには回数も年月も経ていない行為だったが、カルドがルーティンに組み込んだのだから、もう“いつもの”だ。

 俺はカルドの形の良い唇に、ゆっくりと自身の唇を重ねると軽く、ちゅっと音を立てて離れた。どうやら今日は深い方の“いつもの”はしないらしい。いや、別にガッカリなどしていない。……少ししか。

 

「……まてまて。ダメだ、ルーティンは感情で左右されるべくものではない。しかし、アイディアをヨハンに話すこと、ヨハンと共に果てないマナの中を彷徨うこと。どちらも魅力的で、ともかく選べそうもない。人生とは選択の連続の末に歩む道だというが、それにしてもこれ程までに私が選択に迷うなど……」

「……」

 

 おや、カルドが思考の海に潜ってしまった。

 こうなったカルドは、最早浮上するまで私の頷きすら必要としない。だとすれば、俺はカルドのシャツや、汚れてしまったベッドのシーツを洗濯すべきだろう。そう、思うのだが。

 

「選べない選択肢が目の前に二つある場合、次に行うべきは優先順位をつけること。だとすれば……」

「……」

 

 カルドのその美しい手が俺の腕を掴んだまま離さない。

 今、俺はカルドの体に半分自分の体を預けているような状態だ。体重をかけたら、カルドが苦しい思いをするだろう。そう思った俺は足で体を必死に支えた。

 

「っ!」

 

 するとどうだ。次の瞬間には、カルドの手が、俺の腰へとソッと触れた。この触り方には覚えがある。行きついた想像の果てに、俺ははしたなくも体が熱くなるのを感じた。

 

「私の最大の優先順位は、ヨハンと果てのないマナの旅に出る事である。そうだろう、ヨハン?」

「……」

 

 言葉の意味はよく分からない。しかし、カルドが何を言いたいかは理解出来てしまった。俺は少しだけ恥ずかしさに俯きながら、けれどいつものように小さく頷いた。すると、それまで添えられるように握られていたカルドの手がギュッと俺の体をひっぱる。

 

「っふ、ん」

「っ…っふ、っはふ」

 

 再び俺の唇がカルドによって塞がれた。

 今度は深い“いつもの”だ。カルドは俺の下半身をユルユルと撫でながら、その美しい青い瞳で俺の顔を見つめている。喜びのあまり、緩み切って、とてもみっともないであろう顔を。

 

「……ヨハン、君は本当に可愛らしい。私のアイディアはベッドの上で、全て終えてから聞いてくれないか?ヨハン」

 

 カルドの固く隆起した精器を腰に感じながら、俺は未だに慣れる事のない“あの”行為を思い出し、深く頷いた。

 

 

        〇

 

 

 カルドは本当に楽しそうに喋る人間だった。

 それがどんな場所であろうと。どんな状況であろうと。カルドは黙る、という事をしない。それが例え、二人だけの神聖な営みの間であったとしても。

 

「っはぁっ、ヨハン?気持ち良いか?今、君のペニスは先端まで張り詰めて、熱を含み、震えている!まるで、私に早く触れて欲しいと言っているようだ!あぁ、なんて可愛いんだ。たまらない。たまらないっ……!」

「っっっ~~~~!!」

 

 カルドは俺のはしたなく勃起した精器を美しい手で上下に擦り上げながら、自身は獣のように激しく腰を振り、俺のナカへといきり立つ性器を突き立てた。その間もカルドのお喋りは止まらない。器用なモノだ。俺は必死にカルドの言葉に頷こうとするが、余りの快楽に顎を突き出し首筋が反り返ってしまう。

 

「っっは、っふ、っはっっはーーーっ~~~!!」

 

 あぁ、頷いてあげなければ。カルドの話を聞いてあげなければ。

 そう思うのだが、カルドの暴力的なまでに膨れ上がった怒張が、俺の中をズプズプと行き来するせいで、視界がピカピカとする。カルドにしがみ付くように巻き付いた自分の足が、カルドの激しい腰の動きのせいで、降り落とされる。暴れ馬のようだ。

 

じゅぷっ、ずりゅっっ、ぬぷぷっ!

 

「ヨハンっ!っく、っは。キミのナカは本当に素晴らしいっ。排泄器官とは思えないっ、ここは私を受け入れる為にある場所だとしか思えないっじゃないか!何という事だっ……肉が淫らに私のペニスに絡みついてくる」

「っは、っふ、っふっはーーっ」

 

 耳元でカルドの淫らな言葉が延々と大波を食らわせてくる。合間に首筋にむしゃぶりつかれるモノだから、耳と肌両方を同時に犯されているような感覚だ。

 

「ヨハ、ンッ。君は……ほんとうにっ、淫らで、美しいっ。キミのアナルは、私のペニスに絡みついて、絶対に離そうとしないっ!入口も痙攣して、もっともっとと、私のペニスを更に奥まで咥え込もうとしている!」

「っふ、っふ、はふっ」

 

 どうやら、頷けない俺に嫌気はさしていないようだが、ともかくカルドの言葉は俺のナカがどんな風で、どれ程快感を及ぼしてくるのかを懇切丁寧に説明し続ける。ぬプぬプと、カルドの精器が俺のナカを満たしながら卑猥な音を立て続ける。そんな音を背景に、ヨハンの美しい声は淫らに苦しみの中にある劇作家のように語り続けた。

 

 あぁ、頭がおかしくなりそうだ。

 

「あぁっ、これはっ、ヨハン……キミが私を、心の底から、求めていると、いう解釈でいいのかっ!っは、っキミが、もし嫌がっていても……っ、止められないっ。私はもう、とうの昔に知性を手放しているんだっ」

「っは、っふぅ、っふぅ」

「よは、んっ……きみは、いま、どうっ思ってる?」

 

 切ない表情で此方を見下ろしながら、腰を振りたくる美しい天才の姿に、俺は蕩ける意識の中、必死に考えた。口の利けない俺がカルドに安心して良いと伝える為にはどうすればいいだろうか。

 口付けか?いや、口付けをしようにも、カルドはずっと話し続け、苦しみの中腰を振りたくるせいで、彼の口を塞ぐ事は出来ない。

 こんな時、声が出せれば、恥も外聞もなくカルドに快楽を伝える事が出来るのに。

 

(っひもちぃっ!かるど、かるど、しょこっ。もっと、こりこりしてっ。乳首も吸って、もっと奥まで出して、キミで満たしてっ!)

 

 頭の中でいらやしく叫ぶ自分の心の声を、機能しない声帯はカルドに届けてはくれない。でも、伝えなければ。喋れないからとカルドに甘えてばかりいては、彼を苦しませるだけだ。苦し気で、不安げなカルドの姿に、俺は頭の中がパンと弾けるのを感じた。

 

「っ、よ、ヨハン!」

「っは、っは、っは」

 

 その瞬間、俺は激しく動くカルドの腰に合わせてみっともなく尻を振った。股を大きく開き、はしたないを通り越し、最早みっともないとしか言えない姿でパンパンパンと激しく腰を振りながら、カルドの性器を奥まで飲み込んだ。

 

 もっと奥まで欲しいと、これで伝わっただろうか。

 

「っは、っく。あっ、あ゛っ、あ゛っ、っっ!ヨハンっ、ヨハンっ!キミが私のモノを奥まで誘ってくれているんだなっ?これ以上ないと思っていた奥の部屋まで解放してっ!あぁっ!素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしいっ!!!」

「~~~~~っっ!」

 

 ドチュドチュと今まで聞いた事のない音を響かせ、肌と骨のぶつかる音が寝室に響き渡る。けれど、俺も理性が完全に飛んでいるせいだろう。もう無我夢中で腰を振った。

 

「っはぁっ、出るっ!ヨハン……私の種子をっ、受け止めて、くれっ!っっくぅっ」

「っっっっっ!!」

 

 俺の中でカルドの怒張が震えた。

 同時のカルドの多量の精子が腹を満たすのを感じる。熱い。熱くて仕方がない。射精をしながらも、カルドは種の残滓を全て俺の中に注ぎ込むように、グチュグチュと中を泡立てながら腰を振り続けた。

 

 そんなカルドの腰の動きを汗ばんだ肌の向こうで感じつつも、俺は重くのしかかってくる瞼に抗えず目を閉じた。

 

「っは、ふぅっ」

 

 あぁ、カルドの優秀な種が俺の中で無為に死んでいく。

 そう思うと腹の中の熱さが可哀想で愛おしくて堪らない気持ちになった。俺は腹の中を温もりで満たすカルドの愛しい種子に語りかけるように、手を腹に乗せゆっくりと撫でた。

 

(あぁ、俺の中でカルドの種が元気で生きていければいいのに)

「ヨハン……もう少しで、君に俺の子を孕ませられるよ」

 

 俺の愚かな望みを見透かすように、カルドは俺の心に寄り添った言葉をくれた。あぁ、カルド。まさか、君に心の内を見透かされるなんて。さすが、カルド。

 

 天才だ。

 

 

 

 

 

 

 しかし、そんな愚かで頭のおかしな願いを、まさかカルドが本当に叶えてくれるとは、その時の俺は露程も思わなかった。

 

 

 

 


 

【後書き】

途中までノリノリで喋り散らかす癖に、急に不安になるカルド。

そんなカルドをよしよしと落ち着かせる為に、ヨハンはどんどんボディランゲージ(セックス的な)が開放的になっていくのであった。