番外編29:天下取り男、あげまん男!(初代×犬)

 

 

—-旅の途中

inどこかの街

 

 

初代「この先の村がモンスターで困ってるらしい。行くぞ」

犬「はい!」

 

スタスタ

 

占い師「あら、貴方。ちょっと手を見せて」

初代「え?」

占い師「お代は結構よ。ちょっとだけ、貴方達珍しいオーラが出てるわ」

初代「へぇ」

 

犬(うさんくさ…)

 

初代「へぇ、手を見せればいいのか」

 

占い師「ええ」

 

初代様は掌を差し出したよ!

 

犬(初代様、占いとか信じるタイプなんだ)

占い師「……やっぱり、貴方凄い手相ね」

初代「どう凄いんですか?」ズイ

占い師「貴方、天下を取るわ」

初代「へぇ」にこ

 

犬(ざっくりだなぁ。でも、初代様、満更でもなさそう……ゴチャゴチャ言われるより良いのかもな)

 

 

占い師「貴方は思うまま進めばそれで安泰よ。良い手相を見せて貰ったわ」

初代「いえ、こちらこそ。ありがとうございます」

 

占い師「じゃあ、貴方も見せてくれる?」

犬「えっ、お、俺もですか?(見なくていいし…)」

占い師「貴方も面白いオーラが出てるから。よければ見せて」

犬「で、でも」チラ

 

初代「ほら、見て貰うといい」にこにこ

犬「あ、はい(完全に機嫌良くなってる)」

 

犬も掌を差し出したよ!

 

占い師「貴方も凄いわ。こんなに立派なあげまん線は見た事がない」

初代「あげまん?」

占い師「一緒にいることで男性の運気を上げる女性の事を言うのよ」

初代「へぇ」ニヤ

犬「俺、男です」

 

 

占い師「まぁ、性別はあまり関係がないわ。貴方は傍に居る男性の運気を上げる力があるのよ」

初代「良かったじゃないか」ニヤ

犬「あ、え?はい(初代様、なんかめちゃくちゃ機嫌良くなってる…)」

 

占い師「良い手相を見せて貰ったわ。じゃあね」スタスタ

 

犬(うさんくさぁ)

 

 

スタスタ

 

初代「お前、あげまんだってよ。良かったな」

犬「えっと…はい」

初代「ま、俺はそもそも天下を取んのは確定してるからな。あげまんなんかいらねぇけど」

犬「はい(今日の夕飯何にしようかな)」

初代「さーて、次の村でも弱者を助けてやるか」

犬「はい(何の食材が残ってたかな)」

 

———

——-

—-

モンスター討伐中!

 

 

初代「っしゃぁぁぁっ!」

 

 

犬(すごいなぁ、初代様。どんなモンスターも一人で全部倒すんだから……俺も一緒に戦いたいけど、邪魔になるだろうしなぁ)

初代「あーあ。弱ぇ弱ぇ。村に討伐報告に戻るぞー」

犬「は、はい!あ、でも雑魚がまだ……」

 

 

初代「こんくらいなら、自分達で何とかすんだろ。天下を取る俺に、こんな雑魚の相手なんかしてられっか」

犬「そ、そうですか(初代様。“天下取り”って言葉、気に入ったんだろうなぁ)」

初代「行くぞ!」

犬「は、はい!」

 

スタスタ

 

       〇

 

in剣技の里

 

村長「勇者様!モンスターは?」タタタ!

 

初代「ええ。ダンジョンボスは倒しました。残っているのは雑魚だけです」

村長「ありがとうございます!残りのモンスターは村の若い奴らが片付けますので。勇者様は此方でお休みくだ…」

 

若者「村長…いくら雑魚でも俺達だけだと不安ですよ」

若者「そうです。勇者様に一緒に来て頂きたいです」

 

 

村長「お前ら!勇者様にどこまでやらせる気なんだ!剣技の里の者として恥ずかしくないのか!」

 

若者「…そんな事言っても」

若者「…なぁ?」

 

初代(面倒クセェな…)イラ

犬「(あ、初代様がイライラしてる…)あの、初代様」

初代「なんだ?」

犬「俺が、彼らに同行して残党を叩きましょうか?」

 

初代「あー、そうだな。お前が付いて行ってあげなさい」

犬「はい」

 

初代「ツレが彼らに同行します」

 

村長「え(この人が?)」

若者「え(弱そう)」

若者「え(こんな荷物持ちに何が出来るんだよ)」

 

初代「……ツレに何か不満でも?」

 

村長「めっそうもない!勇者様のお連れ様を同行して頂けるなんて、ありがたい事です!」

 

初代「あの、お連れ様じゃありません」

村長「は?」

初代「俺の、ツレです」

村長「あ、はぁ(どう違うんだ?)」

 

初代「では、行って来なさい」

犬「はい」

 

若者(大丈夫かよ)

若者(人数増やしとこうぜ、何かあったらヤバイし)

 

村長「では、勇者様は此方へ」

初代「ええ」

 

—–

 

村長「勇者様、そろそろ夕食を…」ソロ…

 

初代「いえ、結構です(どうせクソ不味くて食えねぇし)」

村長「そうおっしゃらずに。うちの孫娘が作った夕食は美味しいと評判なのですよ」

初代「(そんな事だろうと思った)いえ。俺のツレが作りますので、けっこ…」

 

バン!

 

若者「村長!」

 

初代「ん?」

村長「なんだ、騒がしい!まさか、まだ出発してなかったのか!」

 

若者「いえ!討伐が終了したので、そのご報告に」

村長「は?もうか!?」

若者「ええ、同行してくださった勇者様のツレの方が本当に素晴らしくて…」

 

初代「俺のツレが何かしでかしましたか?」ズイ

 

若者「い、いえ!彼のお陰で、俺達は皆とても気持ち良く戦えました」にこ

 

初代「気持ち良く…?ツレはどこですか?」

若者「外で皆と話してます」

 

初代「ちょっと失礼」バッ

 

ドタドタ!

 

若者「あれ?勇者様、何か怒っていらっしゃった……?」

 

        〇

 

ワイワイ

 

若者「凄いです!あんなに気持ち良く技が出せたのは初めてだ!」

若者「技を重ねて出して頂いたアレは何ですか!?」

 

犬「あ、えと…ゆ、ユニゾン、アタックって言って……その、仲間とタイミングを合わせて同時に技を出すとダメージが増えるっていう(ソードクエスト7から追加された新要素です)」

 

若者「ユニゾンアタック…」

若者「あれ、凄く気持ち良かったな…」

若者「だな。一緒にキめた時の、あのえも言われぬ感覚といったら…」

 

若者達は新しい快感を覚えたよ!

 

犬「よ、よかったです」おず

 

若者「あの!出来ればしばらく村で稽古を付けてくれませんか?」

若者「ええ、是非そうして頂きたい!」

若者「もう一度、貴方とユニゾンアタックをしたいです!」

 

犬「え、え?」オロ、オロ

 

初代「…おい」

 

犬「っ!しょ、初代様!終わりました!」タッ!

初代「…そうか」

 

犬(あれ?機嫌が悪くなってる?)

初代「食事の準備をしろ。今、すぐに。走れ!」

犬「は、はい!」バッ!

 

若者達はポカンとしているよ!

 

初代「…あの、」

 

若者「どうしましたか?勇者様」

初代「あれは、“俺の”ツレであり、“俺の”あげまんですので…」

若者「は、はあ」

初代「では、失礼」バッ!

 

 

若者「俺の、ツレ?」

若者「俺の、あげまん?」

若者「一体どういう意味だ?」

 

初代「…」スタスタ

 

 

—一緒にいることで男性の運気を上げる女性の事を言うのよ

 

 

初代「……俺じゃないヤツも上げんのかよ」

 

 

—ユニゾンアタック…

—凄く気持ち良かったな…

—一緒にキめた時の、あのえも言われぬ感覚といったら…

 

 

初代「クソがっ!!」

 

 

 

その夜、初代様はプンプンと怒って犬を一晩中離さなかったよ!ついでに「ユニゾンアタック」を自分ともヤれ!と言ってブチ切れたよ!!でも――

 

初代「おらっ!」

 

ぎゃああっ!

 

犬「あ…(初代様が強すぎてユニゾンアタックする前にモンスターが…)」

初代「…」

 

ユニゾン出来なかった!