「っぁん……んぁ、っは、ン」
「っは、っはぁ……っせんぱい」
既に先走りを漏らしているペニスを上下に扱きながら、ユルユルと尻をジルの体に擦り付ける。尻に感じる硬い感触に、ヒクリと俺にペニスが震えるのが分かった。
あぁ、俺。なにやってるんだろう。気持ち悪いのは、おれじゃないか。
「っあぁ、んっ……っひぁん。いい、においっ。おれ、じるの……においすきぃ」
でも、いい。これで、ジルの意表を突けるなら。
「っはぁ、じる……じる。きょうは、キミが、おれの巣になって」
「っ!」
運命でもなんでも無い俺を、自らの意思で必死に求めてくる……このアルファを。
「は、ははっ!」
「満足」させられるなら。
「やっぱり、あなたは、さいこうだ。……手つなぎさん」
「……ふ、ふ。っンぁ」
いつの間にか、後頭部に寄せられていた手によって体が引き寄せられる。あぁ、キスされる。と、そのままキスをしようとしたら、カチャリとメガネが当たった。
あぁ、メガネが邪魔だ。そう、俺がメガネに触れようとした時だ。
「……ダメ」
眼鏡を取ろうとした手をジルから静止され、そのままいつものように指を絡めて繋がれる。
「貴方も、俺の巣だ。今日はそのままで」
「……ふ、へぇ」
ジルの綺麗な碧眼が、俺の逃げるようとする視線を絡め取る。いつもはぼやけている筈のジルの欲情した目が、擦り付けられる下半身と共に、欲望を肥大させていく。
「今日は、俺の全部“見て”てくだい」
ヤバい。見えるって、実は“見えない”より恥ずかしいかも。
○
「っん、んひぃっ!」
「っはぁ、イイッ!」
俺はジルの腹に片手を付き、本能のままに腰を振った。激しい律動によりジワリと汗が肌に浮かび上がる。風呂に入っていないせいで、ベタつく素肌がヒタヒタと互いの体に吸い付く。
「っはぁ、ぅ……じる、じるっ」
「てつなぎ、さっ」
俺はジルの名を呼びながら、ジルのシャツを手探りで探す。あ、あった。
「っふぅ、っひ……っぁん。良い、においぃッ」
「っは、はは。そ、んなに……俺の匂いはいい、ですかっ!」
「っん、うん、……いい、においっ。すき、すきぃっ」
完全に変態だ。
ジルのシャツの匂いを嗅ぎながら、尻にみっちりと詰まったジルのペニスのくびれたエラを、ゴリゴリと良いところに擦り付ける。
「ん゛ぁぁっっ……ひあぁぁぁッ」
「っく……っはぁ、奥にッ、絡みつくっ」
「っぁ、っあ……んぅぅっ。ひもちぃっ」
あれ、今俺ってオナニーしてたんだっけ?っていうか、何だっけ?いま、なんじだ?
チラリと時計を見てみると、時刻は深夜の一時を回ろうとしていた。もう、寝ないと。と思うのだが、もう少しもう少しと長引いて今になってしまった。
「っひ!」
すると、そんな俺を咎めるように下から激しい突き上げが襲った。
「ンひゃぁっ……っぁ、あ、あっ!いっ、イくっ!」
「巣が……っ時間なんか、気にしないで、くださいよっ!」
「っっひぃん!んっ、んぅぅっ……あっ、じるっ、じる!もっ、まってぇっ!」
激しいジルからの突き上げに、量は少ないもののピュッと精液を飛ばす。もう、何度目の射精か分からない。
「っぁ、やぁっ……!あ゛ぁぁあっ!」
ジルが突き上げる度に腰が甘く震え、凄まじい勢いで視界が揺れる。ただ、買い直したばかりの眼鏡はそんな事ではズレてくれない。涙で微かに歪む視界の真ん中で、しれでもジルの興奮した顔がハッキリと見えた。
「っはは、っふふ!突き上げるっ、度に手つなぎさんっ、の、っはぁっ、……穴の、縁が、締まって……っふふ、たのしい!奥もっ、突く度にっ、痙攣して……イイっ!」
「っぁ、もっ、ちょっ……イって、るからぁ。とまって。じるっ、じるっ、ひっ……っぁぁぁ!」
「いやだっ!」
チラと見下ろしたジルの表情は、ギラギラと欲情に塗れながらも、カブトムシでも観察する子供のように無邪気だ。もう、こんな顔で「いやだ」なんて言われたら、許してしまうじゃないか。
「そうだ!もっと。おれの、巣に匂いをつけないとっ」
「っへ?」
戸惑う俺を余所に、ジルは良い事を思いついた!と更に目を輝かせる。すると、脱ぎ捨てられた下着を掴み、緩く射精を繰り返す俺のペニスに擦り付けてきた。
「っぁ、あ、あ、……それぇっ……はじゅ、かしぃっ!」
「もっと、濃い、においを……おれの、巣にっつけたいっ!」
「〜〜〜っっっ!!!」
既にイきっぱなしの状態から、繰り返される突き上げ。同時に、俺のペニスを下着で擦り上げられる。
「っあ”ぁぁっ…っんぁぁぁっ!」
「っはぁっ、てつなぎさんの……ナカが絡み、ついてっ…っはぁ、いいっ!イくっ!」
激しい突き上げの直後、自身の体重によって更に奥にジルを感じる。次いで腹の奥に、ジワリと熱い感触が広がった。
目の前がシパシパする。長い時間繋がり過ぎて、結合部の境目が分からなくなってしまったようだ。
「っはぁ。てつなぎさん、おれ、きもちーです」
「っは、っぅ……っはぁ、っはぁ……ぁぁじ、ゆ」
満足そうなジルの声に、俺は、ピンと反らせていた体を折り、ジルの首筋に鼻筋を寄せた。深く息を吸えば、ジルの匂いなんだか、俺の匂いだなんか分からない匂いがした。
「じる……」
「っはぁ、っはぁ……なん、ですか。てつなぎ、さん」
ヒタリと体全体がジルの素肌に触れる。ベタベタで気持ち悪い。でも、それが気持ち良かった。
「じる……んっ、っふぁ」
「っふふふ」
俺が名前を呼ぶ合間も、残った精液を出し切るように小刻みに腰を振るジルに、喘ぎが止められない。
「ふふ、ふふふ。手つなぎさんの、ナカ。グチャグチャだ……コレ。ぜんぶ、おれのだ」
「んっ、っも……じる。じる、きいて」
ナカでユルユルになってる癖に。まったく、子供のジルには賢者タイムなど無いようだ。
「ん?何だ?手つなぎさん?わるいが、もー、おれは勃ちそうにない」
「……ちがう」
先程俺の精液を擦り付けた下着の匂いを嗅ぎながら、そんな事を言うジルに、俺も吹き出しそうになった。さすがの俺も、もう無理だ。この辺りが「運命ではない」俺達のセックスの限界だろう。
「ねぇ、じる」
「ん?」
妙な満足感に包まれながら、俺はジルの匂いを吸い込みながら尋ねた。
「おれ、の……すづくり、どうだった?」
すると、それまでスンスンと匂いを嗅ぐのに夢中になっていたジルが、夏休みの子供のように言った。
「最高!またやりたい!手つなぎさん、またやってくれ!いいか!?」
「っふふ」
あぁ。楽しそうで、満足そうでなによりだ。
「……ん、いいよ」
クタクタになっても、親が子供を遊びに連れ出す気持ちが、少しわかったかもしれない。