⑧(オメガバースパロ最終話)

 

「セワって誰ですか?」

「あ、セワ君は……えっと、ファンの子だよ」

「ファン?」

「うん、全部の作品に感想を送ってくれてた子」

 

そうか、ファンか。恋人かと思った。いや、恋人では無い事はすぐに分かった。

なにせ、先ほど部屋の掃除に対して大豆先輩は頑なに「金を持って行け」と言っていた。恋人に掃除をお願いして金を支払うヤツは、あまり居ないだろう。

 

「俺のお世話を焼いてくれるから“セワ君”って呼んでる。本名は知らない」

「知らない?」

「……うん、興味ないから」

 

どこか投げやりに口にされた説明に、俺はゴクリと唾液を飲み下した。

 

「興味が無い?」

「うん、全然興味ない。だから、何回名前を言われても覚えきれないんだよね」

 

大豆先輩の言葉に、一瞬だけホッとする。だからと言って俺の嫉妬の熱は一向に収まろうとしない。

だって、その「セワ」というヤツは今大豆先輩の部屋に居る。そして「仕事用」ではない連絡先を教えてもらっている。

 

あぁ、腸が煮えくり返りそうだ。

 

「あの、その方には……どうやって知り合われたんですか?」

「……えっと、確か」

 

俺にとって「恋人」かはどうでもいい。だって俺は、大豆先輩の恋人になりたいワケではない。俺がなりたいのは、大豆先輩の唯一無二の「ファン」だ。

 

「セワ君も腐男子でね……俺がこの喫茶店で小説を書いてたら、リアルタイムに自分の居場所をSNSに上げたらダメだよって、偶然店に居た彼が教えてくれたのが最初だったかな」

「……偶然?」

「うん、たまたま俺のSNSを見てた時に隣の席に座ってたんだよ」

 

そんな偶然あってたまるか。絶対にソイツも、俺のように大豆先輩のSNSを辿ってこの店にたどり着いたに決まっている。

これだから、大豆先輩は迂闊過ぎる。昔からそうだった。

 

「しかも、いつも熱心にコメントをくれてた子だったから……最初はビックリした」

 

その時の事を思い出しているのか、大豆先輩は曇っていた表情に微かに笑みを浮かべた。その顔は、昔と違い微かに妖艶さを帯びていた。

俺は、こんな大豆先輩は……知らない。

 

「そこから、俺がここに来るたびに彼が居てね。今大学四年生で暇みたい。そしたら、話してるうちに部屋の掃除とかご飯の準備をしたいって言ってくれて。男の子だし、学生のお話とか聞けるからいいかなって、今みたいになったんだけど……失敗したなぁって思ってる」

「失敗?」

「うん、大失敗」

 

大豆先輩は、先ほどまでの嬉しそうな顔を、気だるそうな表情に染め上げるとテーブルに肘をついた。初めてみる大豆先輩の心底鬱陶しそうな表情に、俺は心臓がヒクリと縮み上がるのを感じた。

 

大豆先輩のコーヒーはそろそろ無くなりそうだ。

 

「俺にとってファンって“個人”じゃないんだよ。そういうカテゴリ」

「っ!」

 

ファンは個人ではない。

昔の大豆先輩からは絶対に言わない言葉。なにせ、ファンは「キッコウ」だけだったから。ファンというカテゴリと個人は、常にイコールだった。

 

「だからさぁ、あんまりこっち側に入り込んで来て欲しくないんだけど……彼、どんどん俺の生活に入り込んで来ようとするから。今はお金で線引きしてるトコ」

「……」

「でも、あの調子じゃ、どうせお金は取ってないだろうなぁ」

 

大豆先輩はプライベート用というスマホを片手でスルスルと弄りながら喋り続ける。心底面倒くさそうに。

 

「俺としては、セワ君にはただのファンで居て欲しいんだよね」

 

チラリと画面を見るとそこにはズラリと“セワ君”という名前が着信履歴に並んでいた。なんなら、今も新たに“セワ君”からの着信でスマホが揺れている。

 

「BL小説なんてさ、皆にとってはただの娯楽なワケじゃん?私生活に何かあると、一番最初に手放されるモノでしかない」

 

言い返せない。まさに“俺”がそうだった。

 

「でも、俺はそれで良いと思ってる」

「え?」

 

そんなワケないだろう。大豆先輩は大人しい癖に承認欲求だけは人一倍あった。そんな貴方が、そんな気持ちに心から納得出来ている筈がない。

 

「刹那的に楽しめる時間潰しの消費コンテンツ扱いしてくれた方が、俺にとっても都合が良いもん。だって、そしたら俺も同じように扱える」

「BL小説が、時間つぶしの……消費コンテンツ……?」

「うん。個人サイトも、投稿小説サイトも皆にとってはそんなモノでしょ。っていうか、そうあるべきだし。だからこそ、俺もファンは個人扱いするつもりはない。いつ消えても良いようにね」

 

なんて、大豆先輩の口からツラツラと述べられる感情の薄い言葉。その様子は、まるで家まで尋ねてきた大豆先輩に対して「迷惑だ」と無視を決め込んだ……俺の様子をそのまま表しているようだった。

 

「ファンにとっては、俺はたくさん居る作家の一人。だから、俺にとってのファンも同じ。それでお相子」

 

大豆先輩は言っているのだ。

セワを通して、俺に対して「こちら側に入ってくるな、迷惑だ」と。その証拠に、仕事用のスマホには机の上に投げ出されたまま、大豆先輩は触ろうともしない。

 

「ま、とは言ってもさ。俺も出来ない事全部お願いしちゃってるし。今突然居なくなられても困るんだよね……それに、なんか凄い好かれちゃってるから」

「え?」

「だから、まぁ、彼が就職するまではいっかって思ってる」

 

恨めし気な台詞とは裏腹に、その声は、どこか愉悦に満ちていた。今、大豆先輩は一番「セワ」によって、自己の承認欲求を満たしている。

 

俺じゃない「ファン」によって。

 

「っあの、大豆先輩!」

「ん?」

 

悲鳴のような俺の声に、大豆先輩が目を瞬かせる。

その瞬間、大豆先輩の目が過去の……いや、その他大勢に見せる「社交的なおいだきさん」の目になった。

 

「あ、あの……」

 

しかし、今となってはその目は俺を安心させてくれるモノではなかった。だってソレは、大勢のファンに見せる「よそ行き」の目だ。

 

「どうしたの?茂木君」

「大豆先輩……」

 

いやだいやだいやだ。

俺を「茂木君」と言う個人ではなく、「ファンの一人」としてカテゴライズしてくる大豆先輩に叫び出しそうになる。

他にファンが居るのはもう仕方がない。なにせ大豆先輩はそれだけのモノを表現し、世に出してしまっている。

 

俺が、手放したせいで。

大豆先輩は、【まろやか毎日】という小さな檻から飛び出してしまった。俺は、どうしてあの時手放してしまったのだろう。

 

「だいず、せんぱい」

「どうしたの?茂木君、顔色が悪いみたいだけど」

 

たくさんのファンが居る中で、せめて俺が一番でありたい。俺が最も神の近くでかしずく奴隷でありたい。

貴方の全ての魅力を知っているのは“俺だけ”でありたいのに!

 

セワ君。

—–突然居なくなられても困るし……なんか、凄い好かれちゃってるから。

 

俺よりも近くに居るファンが居た。しかも、随分と大豆先輩に頼られている。まるで、昔の俺そのもだ。今や、その立場を取って替わられてしまった。

 

「……でも、俺には一つだけ、お前にないモノを持っている」

 

俺が唯一その「セワ」に勝てるモノ。

それは、「過去」だ。

 

「あの【まろやか毎日】は、これから、どうされるんですか?新しいサイトは無いようですし、どこにもリンクは貼られてないみたいですが」

「……まろやか毎日?」

「ええ、そうです。昔の作品も、本当に素晴らしいモノばかりですし……もし大豆先輩がお望みなら、俺が」

 

俺は縋るような気持ちで大豆先輩を見た。あそこは正真正銘、俺と大豆先輩だけの場所だ。他のヤツは入る事は出来ない。なにせ、現在も未来も意思によって変える事は出来る。けれど、唯一「過去」だけは……変えられ――。

 

「……リンクなんか貼るワケないじゃん。あんな恥ずかしいサイト」

「え?」

 

大豆先輩の吐き捨てるような言いぐさに、視界が揺らいだ気がした。

 

今、大豆先輩はなんと言った?

 

「最初に新しいアカウントを作って投稿し直す時に、サイトは消そうとしたんだよ。でも、色々IDもPWも忘れちゃって、どうにもできなくて」

 

大豆先輩が残り僅かなブラックコーヒーに口を付ける。

昔は確かに飲めなかった筈のブラック。俺に番が出来て、家に来た大豆先輩を無視した後から、いつの間にか飲めるようになっていた。

 

「あそこに置いてある話さ、今更自分が書いたヤツだって思われたくないんだよね。稚拙だし、一人よがりだし。あんなの小説じゃないよ」

 

真向から否定される。他でもない、大豆先輩に。

 

「……どうせ誰も見ないだろうし、大丈夫かと思って放置してたけど、茂木君にはバレちゃったね」

 

少しだけ短くなった髪の毛。特に前髪が顕著だった。昔は前髪で視界を隠すように伸ばしていたにも関わらず、今はきちんと目が合う。

大豆先輩の目が、ハッキリと俺をとらえる。逃げられない。

 

「あ、そうだ!茂木君って【まろやか毎日】の共同管理人をしてくれてたよね?俺だけじゃ管理出来ないからって」

「え、ええ」

 

嬉しそうな顔で俺を見つめる大豆先輩。その顔に、俺は背中に嫌な汗が流れるのを感じた。

 

——茂木君、もしか良かったらなんだけど、一緒にサイトを管理してくれないかな?

 

そう、昔大豆先輩のサイトのトップ画面が崩れた時に、俺が治した事をきっかけに「共同管理人」に、と言われて管理画面のIDとPWを教えて貰った。

 

あの時は、本当に嬉しかった。大好きなサイトの管理が出来る事もそうだが、あの中には、他でもない「キッコウ」からのたくさんの感想メールが残っていたから。

 

それどころか、その全てに消えないようにとメールに「保護」がかけられていた。

大豆先輩は、俺からの感想を「特別」「唯一」だと、心から大切にしてくれていたのだ。あの時の俺は、一生この人だけを推して行くと心に誓った。

 

けれど、その数か月後。俺はアッサリと神を捨てた。

 

「悪いんだけど【まろやか毎日】消しといてくれる?確か管理画面の一番最後に【ホームページを削除】ってコマンドがあったと思うんだけど」

「……けす?ぜんぶ、ですか?」

「うん、変に残ってても気持ち悪いし。昔の作品なんて見たくないし、誰にも見せたくないもん」

 

何の感慨もなく放たれる言葉。

いや、何も、ではない。そこには微かな“嫌悪”があった。

 

「ほんと、誰に見せるワケでもない自己満足の文章って、どうしてあんなに読みにくいんだろ。ダラダラしてて文章に抑揚もなかったし……ほんとに、恥かしい」

「……」

 

そこには、過去の俺とのやり取りに対する名残惜しさなどは微塵も感じられなかった。ホームページを消せば、俺からのメッセージももちろん消える。そうなると、俺が大豆先輩と過ごした数年間も……全て消えて無くなる気がした。

 

「あれ?もしかして、茂木君もIDとPW忘れちゃった?」

「……あ、えっと。はい」

 

とっさに嘘をついた。これ以上、大豆先輩の口から「恥」だと切り捨てられる【まろやか毎日】の話を聞きたくなかった。

 

「だよねぇ。作った俺ですらこんななのに、他人の茂木君が覚えてくれてるワケないか」

 

すると、大豆先輩は疑った様子など微塵もなく再びコーヒーに口を付ける。しかし、大豆先輩のコーヒーは空だった。

 

「ごめんね、茂木君。今のは忘れて」

 

いやだ、と心が叫ぶ。

大豆先輩が昔と変わっていない?俺の目は節穴か。

大豆先輩は、変わってしまった。

 

—–全部消して、今度は別の人に、構ってもらう……から。

 

あの時、確かに大豆先輩はそう言った。そして、その言葉通りになった。

カランと、店の扉が開く音がする。

 

「あ、セワ君だ」

「え?」

「どうしよ、今日は書く気分じゃなくなったから……もう帰ろうかな」

 

大豆先輩は入口にから此方に向かってくる、一人の若い男に目を向けると、いそいそと帰る準備をし始めた。

 

「あの、大豆先輩……あの連絡先を」

 

行かないで、と心が悲鳴を上げる。

 

「ん?あぁ、そういえば途中だったね」

 

そうやって、大豆先輩が机の上に放置されていた「仕事用」のスマホに手を伸ばした時だった。

 

「亀太さん、迎えに来たよ」

「セワ君」

 

一人の年若い、学生風の男が俺達のテーブルの脇に立っていた。髪は栗色で明るく、柔らかくパーマのかかったソイツは、それまでの大豆先輩なら嫌煙しそうな手合いで……しかも、アルファだった。

 

「わざわざ迎えに来なくても良かったのに」

「ううん、今日は荷物が多かったから。大変かと思って」

 

言いながら「セワ」はチラリと俺を見て、微かに目を細めた。その瞬間、俺はハッキリと理解する。コイツは「高校時代の俺」そのものだ、と。

 

「あのね、セワ君。俺は男だからそんなにひ弱じゃないよ」

「ううん。亀太さんの荷物を、俺が持ちたいの」

 

まるで俺に見せつけるように口にされるセワの言葉。その言葉に、俺は腹の底の嫉妬心が燃え上がる。けれど、今の俺にはコイツに対抗する術がない。その事実が、更に腹の熱を灼熱へと滾らせる。

 

「ねぇ、亀太さん。この人誰?」

「セワ君には関係ない人だよ」

「でも……」

「関係ない人です」

 

ピシャリと言い切る大豆先輩の言葉に、それまで勢いのあった「セワ」の勢いが一気に削がれた。

 

「そうだ。セワ君、キミ。お金取ってないでしょう?」

「……と、とったよ」

「嘘つき。これで、部屋に戻ってお金が減ってなかったら、部屋の鍵は返してもらうからね」

「ごめんなさい、とってない」

「やっぱり」

 

俺が、これまで聞いた事のないような冷たい声が大豆先輩の口から紡ぎ出される。

 

「はい、今日の分」

「……」

 

そう言って大豆先輩が財布から取り出したのは、一万円札だった。しかし、「セワ」は一向にその一万円を受け取ろうとしない。

きっと、お金でやっていると思いたくないのだろう。自分だから「頼られている」と思いたい。「セワ」の気持ちが、俺には手に取るように分かった。

 

けれど、大豆先輩は容赦なかった。

 

「ふーん、受け取らないんだったら、部屋の鍵は返して」

「っあ、ありがとう、ございました!」

「よろしい」

 

金を払って、一線を引かれる「セワ」。でも、そうしないと今のポジションを保てないその姿に、一瞬だけ同情しかけた。

しかし、それでもコイツは俺よりも随分大豆先輩よりは近い場所に居る。今の俺は、コイツ以下だ。

 

「よし、じゃあ。帰るね、茂木君。久々に会えて良かったよ」

「だ、大豆先輩!」

 

そのまま伝票を持って帰ろうとする大豆先輩に、俺は勢いよく立ち上がった。このまま大豆先輩を帰してしまったら、もう二度と俺は彼に会って貰えない気がした。「仕事用」でも良い。俺は、大豆先輩との繋がりを持ちたかった。

 

「あの、連絡先は?」

「あー」

 

もう【まろやか毎日】はその役割を果たしてくれない。

 

「茂木君、連絡先はやっぱり要らなくない?」

「え?」

「作品の感想なら、SNSか投稿サイトで十分だろうし」

「でも、それじゃあ……何かあった時に」

「何かあった時?俺、別に茂木君から急ぎで連絡貰うような事……ある?」

「っ!」

 

コテリと首を傾げる大豆先輩。本気でそう思っている顔だ。

 

「連絡先を交換してても、メッセージを見ようとしてなかったらソレまでだし。もう良いと思うんだ」

「……ぁ」

 

 

【アカウントを削除してよろしいですか】

Yes

——

茂木君、運命の人が現れた?

——

既読

 

 

俺が二度も手放した神様は承認欲求を満たすべく「別の人」の元へと去って行った。

「ファン」という、自らが魅力的な作品を生み出す度に沸いて出る無尽蔵な「個人ではない存在に」大豆先輩はドップリと依存してしまっていた。

 

大豆先輩は、もう「俺個人」なんて欠片も求めちゃい。

 

「じゃあね、茂木君。俺はこれからもずっとBL小説を書いてるから……好きな時に、「おいだき」を消費にし来てよ。俺はずっとソコに居るから」

 

大豆先輩は俺のスマホを指さすと、本当に楽しそうに笑った。

 

その姿こそ、本当に「神様」らしかった。

 

俺が、大豆先輩を……本当の「神様」にしてしまったのだ。

 

 

 

——–

—–

 

 

喫茶店から大豆先輩が「セワ」と共に消えて、どれくらいが何時間経っただろうか。俺は、職場にも戻らず、ずっとその喫茶店に居た。

 

「……いやだ」

—–俺はずっとソコに居るから。

 

そう言って指し示されたスマホの中。俺は、ぼんやりとした意識の中、投稿小説サイトへ飛ぶ。

すると、そこにはフォロー中の「おいだき」さんが新しい小説を更新していた。更新時間はほんの数分前。

 

「……大豆先輩」

 

俺は、もうここでしか大豆先輩に会う事は出来ないのか。

習慣のように大豆先輩の更新した小説の最新ページに飛ぶ。スクロールし、大豆先輩の紡いだ文字を取り込む。

 

その瞬間、俺の心は燃えた……いや、萌えた。

 

「……はは、なんだよ。これ」

 

そこに描かれていたのは完全なるR18。

大学生の攻めに、三十手前の受けが激しく抱かれている場面だった。

 

「……最低だ」

 

攻めが受けを激しく抱く描写が、そりゃあもう生々しく描かれていた。情事中の水温や温度、果ては匂いまで感じられそうなソレは、まるで、体験談のような臨場感が漂っていた。

そう、大豆先輩は昔俺と関係を持っていた時も、体験した情事をそのまま文章に書き下すような書き方をしていた。

 

だとすれば、これは――。

 

「ありえないありえないありえないありえない」

 

これまでの情事中の場面を全て見返す。もしかすると、コレも、アレも。

 

「全部、アイツとヤッたんですか。大豆先輩」

 

答えのない問いが、静かに喫茶店に流れるジャズの音楽にかき消されていく。その中で、俺は目の前に残された、空のコーヒーカップを見た。大豆先輩が使っていたカップ。

 

「最低で、最高です。大豆先輩」

 

俺はそのカップに手を伸ばすと、大豆先輩が口を付けていた部分にソッと舌を這わせた。

 

「……いいでしょう。また、一通目のメールから始めますよ」

 

貴方の中で「過去」が消えたのであれば、また作るまでだ。

 

 

——

初めまして。キッコウと申します。

 

突然のメールを失礼します。豆乳さんの作品があまりにも素晴らしいので、どうしても感想を伝えたいと思い、メールをさせて頂きました。

豆乳さんの作品は全て読ませて頂きました。語彙力が無くて本当に申し訳ないのですが、どのお話も本当に素晴らしかったです……

——

 

 

【まろやか毎日】にある、俺のメール。

全てはそこから始まった。見返りなんて欠片も求めていなかった。あの、一通目のメールから、俺はまた始める。

 

そして、

 

 

「必ず、神を俺だけのモノにしてみせる」

 

 

俺の腹に滾る熱は、まるで俺が発情期になったかのように留まる事がなかった。

 

 

 

おわり

 

 

——–

【あとがき】

どうだでしたでしょうか。私のバッドエンドはスカッと「ザマァ」する感じではないので、胸〇悪かったら、いや、気持ち悪かったら……すみません。

 

こんな感じになっちゃいました^^ぱぁ!

 

茂木はとても気持ち悪いですが、一度食らい付いたら諦めない男でもありますので、ここから凄まじい猛攻が始まると思います。

そして、「セワ」君とはガチガチにバトると思います。

(私の中では世話焼きチャラ男攻めのつもりで書いたけど、まぁ、何でも良いです)

 

大豆は完全にプッツン来て、突き抜けちゃいましたね。

大豆「どうぞ、俺を軽く消費出来るコンテンツとして楽しんで?うんうん、それでいいよ。楽しかった?それは良かった」にこ

 

みたいな感じ。

さて、最後にちょっとだけおまけを。

 

 

  • おまけ●

 

 

喫茶店

 

カランカラン

 

 

茂木「あ、大豆先輩。こんにちは」にこ

大豆「あ、茂木くん。また来てたの?」

セワ「……」じっ

 

茂木「ええ、偶然ですね(ええ、毎日来てますので……というか何でセワまで居るんだ)」イラっ

セワ「亀太さん、そろそろ店を変えた方がいいんじゃない?俺のおすすめのお店紹介するよ(コイツ、絶対毎日来てる)」イラっ

 

大豆「セワ君の紹介する店、若いお客さん多いからヤだ」

茂木「っふ(お前みたいな陽キャの権化の紹介する店になど、大豆先輩が行くわけないだろう)」

セワ「隠れ家っぽいお店見つけたんだよ!一回行ってみようよ!それか、俺が部屋でラテアートしてあげる(茂木ってヤツ、マジでムカつく!)」

 

大豆「はいはい。ちょっと締め切りが近いから、また今度ね」

セワ「絶対だよー」ニヤ

茂木「っく!(アイツ、神に馴れ馴れしく……こうなったら)」イラッ

大豆「ん?」

 

茂木「あの、大豆先輩十年前に共同運営していたサイトの……大豆先輩の書いた例の小説の事なんですけど(これで、どうだ!)」ニヤ

セワ「えっ、十年前?共同運営……亀太さんの小説。え、え?なにそれ(え、俺。亀太さんの小説で読んでないヤツが、あるって事?)」がばっ!

大豆「ちょっと!茂木君!!」真っ赤

 

セワ「(この反応、ガチじゃん!っつーか、茂木って何者だよ!?)ちょっ、亀太さん!なにそれ!」

茂木「あぁ、キミは知らないのか?大豆先輩は昔、学生時代に……」

 

大豆「あーあーああーーーーーー!知らないっ!しらないっ!もう、どっか行って!締め切りが近いだってばーーー!」真っ赤!

 

 

 

こんな感じになるといいなと思っている!

長々とお付き合い頂きありがとうございましたー^^

 

 

本当のおわり!