番外編35:十勝、神に教えを乞う

 

 

オメガバパロじゃないヤツ

 

十勝宅

十勝(BL小説か…さて、どう書けばいいのか。今まで結構な作品数を読んで来たが、いざ書くとなると話が違ってくる。聴衆とプレイヤーでは大違いだな…)

 

十勝はパソコンの前で考える人のポーズを取ってるよ!

 

十勝(萌えとか癖とか言われても、俺には分からん)

 

 

十勝(ただ、BL小説も届けるべき相手が居るという点においては営業活動と何も変わらない。まずはペルソナ設定をし、顧客を絞る。そして、その顧客に合わせ、人気の設定をランキング上位から選定し、それに合わせて構成し顧客に提供すればいい。普段やっているマーケティングと何ら変わらない)

 

十勝(まずは、顧客設定だが。まぁ、大豆でいいだろう。そして、ランキング上位100位のBL小説の要素を洗い出し、大豆に合わせたカスタマイズで話を構成する。今やるべきは、要素の洗い出しか)

 

十勝はランキングサイトのタグの上位100をデータに取って行ったよ!

 

十勝(やはり、人気はもふもふ…)

 

十勝(ショタ、おっさん……待て待て。相反する二つが並ぶってどういう事だ!?他に多いのは……不憫、クズ……なんなんだ!この世界は!クソ、これでどうやって物語を構成すればいい!)ガン!

 

十勝はパソコンの前で拳を握り込んだよ!

 

十勝(…分からん。そりゃあそうだ。俺は初めてBLを書くんだ)

 

 

十勝(初めて登る山には……一度登った事のある人間に聞くのが鉄則……それなら)

 

——

—-

in会社のロッカー

 

大豆「くあ(ねむい…)」

茂木(神よ…、昨日無理をさせ過ぎたか……ん?)

十勝「大豆、おはよう」

大豆「おはよー、十勝」

十勝「……茂木さんも、おはようございます」にこ

 

 

茂木「…おはようございます。十勝さん」

十勝「なぁ、大豆。一つ聞きたい事があるんだけど」

大豆「ん-、なぁに」ごし

十勝「BL小説の書き方を教えてくれ」

大豆「っへ!?」

茂木「っは!?(十勝、一体何を…!)」

十勝「俺も、今一本書きたいと思っててさ。ただ難しくて、大豆に教えて欲しくて」

 

 

茂木「っ!(コイツ!有象無象の分際で、直接神から教えを乞おうというのか!?いや、というかBL小説を書く事をダシに神に接触を持とうと…汚過ぎる!)」

大豆「あ、えっと……お、俺なんか、十勝に教えるなんて……!」にっこー!

茂木「っく(承認欲求モンスターの大豆先輩が、完全にご機嫌に!)」

 

 

茂木(承認欲求とは……こういう満たし方もあるのかっ!十勝、やはりお前は抜け目ない!)

十勝「なぁ、大豆。これを見てくれ」すっ

 

十勝は鞄からタブレットを取り出したよ!

 

大豆「っ!十勝も小説を書いたの!?」

十勝「いや、今はまだペルソナを設定しと小説の要素を抜き出した所なんだが…」

 

 

大豆「ぺ……ん?」ぱちぱち

十勝「ああ、ペルソナ。つまり商品を届けたい顧客の設定だが、ひとまず大豆。お前を設定させて貰った。次に要素だが、これがランキングサイト上位100位以内によく見られたタグを集めたモノだ」

大豆「…」ぽかん

十勝「ここから、お前の好きそうな【執着攻め】と」

 

十勝「【ツンデレ攻め】【年下攻め】を加え、受けは【平凡受け】とはなっているが、これでは余りにもおおざっぱだ。ここを詳細に深堀して……この後どうすればいい?」ジッ

大豆「…どうって」ポカン

十勝「ああ」

大豆「好きに書けば?」

十勝「いや、好きにと言われても…」

 

 

大豆「俺はね、自分が読みたいのを書くよ。ランキングサイトで読んでて、こういうの読みたいけど無いなぁって思った”こういうの”を書くよ?」

十勝「ぺ、ペルソナ設定は…過去の自分、か。ここが一番の難関だ」

 

十勝はタブレットを抱えたまま頭を抱えたよ!滑稽!

 

茂木「っはははは!」

十勝「っ!」

 

茂木「さっきから聞いていれば……お前はBLが何たるかを一切分かっていない。たとえ、お前が作品を上げたとしても誰も萌えさせる事など出来ないでしょう。何故なら、貴方には”癖”が無いからだ!」

十勝「それは詭弁だ!”癖”も細分化し分析すれば、ただのタグ!分析し、研究すれば……萌えは作れる!」

 

 

茂木「っ可愛いは作れるみたいに言うな!癖も萌えも無いお前に、魂の籠ったBLが書けるワケがない!」

十勝「書ける!商品がある以上、全てはマーケティングで!」

大豆「ねぇ、十勝」トントン

十勝「な、なんだ?大豆」

茂木「大豆先輩!このBLを舐めた愚か者に言ってやってください!」

 

 

大豆「茂木君に習ったら?」

十勝・茂木「は?」

大豆「俺、頭が悪いから……十勝の言う…ぺ、ぺそるな?とかも分からなくて。だから、茂木君に”萌え”と”癖”を聞いて、二人でBL小説を作ったら?」

十勝「え、それは(嫌だ)」

茂木「イヤです!」

大豆「でも、十勝がBL小説を書けるようになったら…」

 

大豆「でも、十勝が茂木君の癖のBL小説を書けるようになったら、萌え作品が増えるよ」

十勝「いや、それなら俺は大豆の好みの作品を書きたいんだが…」

茂木(っコイツ!いけしゃあしゃあと!)

大豆「十勝、俺ね…」

十勝「ん?」

大豆「自分で読みたいのは、自分で書くから」にこ

十勝「っ!」

 

 

十勝(大豆…コイツは、完全なる”職人”タイプだ!顧客に向けて書いたりしない……自分の為にしか書かない。我儘で孤高で、妥協もしない……大豆ってこんな奴だったのか)ゴクリ

大豆「茂木君。十勝の事をよろしくね?」にこ

茂木「っ!い、い(嫌だ!嫌だが……神の頼みに二度も嫌などとは…)」

 

 

 

十勝「ふふっ、大豆(お前って奴は…)」

大豆「ん?」

茂木「あ?」

 

十勝「…お前、面白いヤツだな(ハマりそうだ)」にこ

 

茂木「っ!!(これは…!)」

大豆「っ!!(これは…!)」ピン!

 

—-お前、面白ぇ奴だな

大豆「次は俺様攻めだ!」ばっ!

 

十勝「は?」

大豆「十勝、ありがとう!」

 

大豆「お陰で良いネタが浮かんだよ!」

十勝「あ、あぁ」

大豆「茂木君!十勝をよろしくね!俺、これから仕事してるフリしてネタを考えるから!」

茂木「え?」

大豆「二人とも、頑張ってね!」

 

ロッカーに茂木と十勝が残されたよ!

 

茂木「え?」

十勝「は?」

 

俺が「萌え」を出すから、お前が「書け」!

サラリーマンBL小説バク〇ン爆誕!

 

茂木・十勝「「はーーー!?」」

 

少年漫画あるある。

ライバル同士が共闘しないといけない状況になりがち。アレ、私は大好きです^^にこ

 

十勝の基本設定として「尽くし過ぎて女運が無い」という特殊ステータスがあるので「意外性のある我儘っぷり」を発揮した大豆がズンって刺さったみたい!