幕間:進展

 

 

 

 こうして、本村洋と杉薫は、互いに顔も名前も知らぬまま奇妙な文通を行い続けた。

 

 11時間という時間を越え、互いに届く手紙。

 

 少しずつ近くなる気持ちとは裏腹に、彼らの距離は曖昧だった。

 互いに街ですれ違ったとしても、気付く事はない関係。

 

 だが、次第に互いは無くてはならない存在となり―――

 季節はいつの間にか、春を越え、夏を越え、秋の到来を迎えていた。

 

 

 そして、奇妙な文通の終わりも、刻一刻と迫っていた。