番外編2:人間は難しい(くつした×イアン)

 

本編直後

イアン宅

 

イアンの家に憲兵が来たよ!

 

憲兵「じゃあ、お前のところにも来てないんだな……その、えっと何だったか」

イアン「……」

 

憲兵は手元の手配書を見て名前を確認してる!

 

憲兵「マックス・フォン……ヘク、トール?リンクスラ、インサー……ブアルフ・パウ……カールス・ストロング、ハートは」

イアン「ええ。そんな長い名前の狼は、俺の所には来てません」ジッ

憲兵「そ、そうか。本当だろうな(こ、コイツ、目力が凄いな)」

 

イアン「本当です部屋の中を探してかまいませんよ……そんなに広い家じゃないので、すぐ終わると思いますし」ジッ

憲兵「まぁ、居ないのは見たらわかる。もし、そのマックス……もういい。狼がお前の所に来たら、すぐに引き渡すように。いいな(目が、逸らせない。凄い圧だ)」

イアン「はい、わかりました」ジッ

 

憲兵「ちなみに、後ろの彼は?」

 

銀髪の美青年「……」ジッ

 

憲兵はイアンの後ろに立っている絶世の美青年に目を向けたよ!

実は最初からずっと居るし、なんならずっと憲兵を睨んでる!

 

 

イアン「えっと、彼は……」ソワ

銀髪の美青年「くつしたはイアンの番!」

憲兵「くつした?番?」

 

イアン「あっ、えっと、その!くつしたと言うのは、えっと彼の愛称のようなモノで」あせあせ

 

憲兵(なんだ?さっきまで堂々としていたのに、急にこの態度は……怪しい)

 

イアン「ほら、奥に行ってろ。お客さんは俺が相手をするから」

くつした「いやだ!知らないヤツの匂いが部屋に入る!いやだ!」

イアン「くつした!吠え……騒がない」チラ

 

憲兵「失礼ですが、彼とはどういった関係で?弟さんですか。まさか息子さんという年齢ではないでしょうし(というか全く似てないしな)」

イアン「どういった関係って……それは」ソワソワ

 

くつした「番って言った!イアンとくつしたは番!なんで、聞いてない!?」

憲兵「つがい……(さっきも言っていたが。番というと、まさか)」

イアン「くっ、くつした!奥に行ってなさい!」じわ

 

くつした「くつしたはイアンと子供を作るの!たくさん作るの!」

イアン「くつしたっ!」真っ赤!

憲兵「……失礼しました。ご夫夫でしたか。でも、記録にはイアンさんは独り身だと書いてありましたが」

 

くつした「ちょっと前に番になった!イアンがくつしたの子供を欲しいって言ったから!」にこ!

イアン「くーつーしーたぁぁ?いいのか、それ以上言う事を聞かなかったら……おやつ」ジッ

くつした「あっ、あっ!おやつ!おやつは……おやつはちゃんとしないとダメ!絶対ダメ!」すたこら!

 

くつしたはイアンの言葉に慌てて部屋の奥に走って行ったよ!

 

憲兵「……」

イアン「……すみません。あの、えっと。もうよろしいでしょうか」俯

 

イアンの耳は真っ赤だよ!

もう恥ずかしくて堪らないって顔をしてる!

 

憲兵「(番というのは、どうやら本当のようだな。ただ、夫夫にしては親子のようだが……まぁいいか)はい、けっこうです。新婚のお宅に長居してしまいすみません」

イアン「しっ、し!」真っ赤!

憲兵「お幸せに。狼が来た場合はよろしくお願いします。隠し立てすると、貴方にこれからの門出に水を差す事になる」

 

イアン「わかりました」

憲兵「あと、もう一つ」

イアン「な、なんでしょう?」

憲兵「……さっきの彼、尻尾が見えたような気がしたんですが」

 

イアン「っっっ!!!きっ、気のせいです!何を言ってるんですか!?人間に尻尾なんか生えるワケないでしょう!?」くわっ

憲兵「あっ、そうですよね。すみません!?」

 

くつした「イアンー、イアンー!こっち、来てー!くつしたのこと見てー」

 

イアン「っあ、あぁ!ちょっと待ってろ!……もういいですか!?夫が呼んでるので!」

憲兵「あ、すみません。では失礼します!」

 

憲兵は追い出されるように、イアンの家から出て行ったよ!

 

くつした「イアンー、イアンー」トトト

イアン「もう、なんだよ!隠れてろって言ったのに!」

くつした「知らない雄が縄張りに入ってきたら、戦うのが狼の当たり前!」

イアン「知らない雄って……まぁ、知らないヤツだけど」

 

くつした「イアンはくつしたの番だから、イアンはくつしたが守る!」

イアン「……そりゃどうも。でもさ、それより」

くつした「どうした?くつしたは良い子か?」にこ!

 

イアンの前で絶世の美青年が満面の笑みを浮かべてる!

すっごい褒めて欲しそう!

 

イアン「ぐっ!」

くつした「良い子か?」こて

イアン「……い、良い子です」じわ

くつした「なら、する事があるんじゃないのか!」にこー!

 

イアン「あー、もう!良い子良い子!!」

くつした「ぅーーー!」にこーー!

イアン「良い子良い子!(尻尾……全然しまえてねぇだろ、気を付けろ!って言いたいんだが……)

くつした「うーーー!」ぶんぶんぶんぶん!

 

美青年の満面の笑みの後ろで千切れるほど横に振り散らかされる尻尾に、イアンもほだされちゃった!

くつしたの人間への変化は未だに不安定で修行中だよ!

 

イアン「くつした、お前は可愛いなー!ちゃんと人間になれてエライなー!」

くつした「ふーー!」ぶんぶんぶんぶん!

イアン(……番も、大好きと楽しいで縛らないとな)にこ

 

憲兵さんが来たり「ヤバイぞ!」って時、くつしたに人間になってもらってやり過ごすイアン。

 

イアン「なぁ、くつした」

くつした「なに!」ぶんぶんぶんぶん!

イアン「尻尾を隠せたら、俺はもっとくつしたの事を好きになるだろうなぁ」にこ

くつした「っあ!」ピン!

 

ちなみに、くつしたの見た目年齢は十代後半くらい。

※犬としては生まれて1年半くらい。

そのせいで、イアンは若いツバメを捕まえたと周囲から噂されてます。