番外編3:似たモノ同士

 

くつしたがドッグランに来たばかりの頃

 

 

イアン「おーい、くつした?今日は少しだけでも走ってみないか?」

くつした「くぅ」ピタ

 

くつしたはひたすらに俯いてイアンの足に頭を押し付けてるよ!

 

イアン「やっぱり今日もダメか(でも、家ではあんなにお喋りなのに……どうして)ん?」

 

ヒソヒソ

 

赤髪のテイマー「アイツか、毎年大会で表彰台に登るイアン・ダンバーってのは」

 

イアン「っっ!!」ピシ

 

茶髪のテイマー「ああ、そうだ。今回はあの狼で大会に出るらしい」

青髪のテイマー「なんだ、今回は大丈夫そうじゃないか。あの狼は大した事なさそうだ」

白髪のテイマー「いや、油断するな。相手はあのイアン・バンダーだ。よく観察しておいた方がいい」

 

ジーーーッ

 

イアン(なっ、なんで……そこで俺を見るんだよ!大会に出るのは俺じゃなくて、くつしたなのにっ!見るな!コッチを見るな!……つーか!くつしたの事を大した事ないって言ったヤツ絶対許さねぇ)ぐっ

 

「許さなねぇ」なんて思いつつ、イアンは周囲からの視線に耐えかねて俯いちゃった!

そしたら、自分と同じく俯くくつしたが見えたよ!

 

くつした「……くぅ」

イアン(……きっと、狼にも色々あるんだろうな。もしかして、くつしたも周りの狼から何か言われてたりして)

 

◇◆◇

 

赤褐色の狼『あら?あの狼、なんだか凄く強そうな子ね』

 

くつした『っっ!!』ピシ

 

白色の狼『なに?まぁまぁまだ子供じゃない。でも、あの子いいわね。番いたいわぁ』

灰色の狼『あー!あの子は前来た時に私が先に目を付けてたのよ!番うなら私が先!』

 

くつした(うぅ、なんであのメスはずっとくつしたを見るんだ。こわい、こわい。帰りたい、イアン。帰りたい)グググッ

 

くつしたはくつしたで、周囲のメスの狼達からの視線にビビって頭をイアンにグイグイ押し付けてる!

まだまだ子供のくつしたに、メスの狼の視線は怖いみたい!

 

◇◆◇

 

くつした「ぐぅぅ、ぐぅぅ」ぐいぐい

イアン「くっ、くつした!おっ、おい!あんまり押すな!危ないだろ!?」

くつした「ぅーー」ぐいぐい

イアン「おい、くつし……」

 

赤髪のテイマー「今後、イアンがどう動くか。何か変わった事を始めたら報告し合おう」ヒソヒソ

茶髪のテイマー「分かった。他の奴らにも伝えておこうぜ」

 

イアン「~~っ!(聞こえてんだよっ!?どうせならちゃんと聞こえないように言えよ!?もう、俺も帰りたい……)」

 

シーザー「お!そこに居るのはイアンじゃないか!奇遇だなぁ!」すたすた

 

イアン「……し、シーザー」

シーザー「なんだぁ?今日もダメそうなのか?」

イアン「っダメじゃねぇよ!くつしたをダメって言うな!」くわっ

 

シーザー「何言ってんだ。俺は一度もくつしたをダメなんて言ってない。俺が〝ダメそうか?〟って言ったのは、お前だよ。イアン」

イアン「っ!!」

 

シーザー「お前まで俯いてどうするんだ!優秀なヤツは注目されるのが常だ!お前も俺を見習った方がいい!」

イアン「お、お前なんか……見習いたくねぇし」ぐっ

シーザー「ま、そう言うと思ったよ。……お?」

イアン「な、なんだよ」

 

シーザー「せっかく来たんだストローと一緒に散歩でもどうだ?」

イアン「ストローと?」

シーザー「くつしたもストローとならまだマシみたいだし」

 

イアンが足元を見てみると、フスフスと互いに鼻を近づけ合うくつしたとストローの姿があったよ!

 

イアン「ほ、本当だ」パチパチ

 

◇◆◇

 

ストロー『おまえ、なんでつよいクセに下ばかり向いてる?』

くつした『だって、だって……』

ストロー『メスなんかがこわいのか?』

くつした『……だって、きもちわるい』

 

ストロー『わからなくもないが、そんなに下ばかり向いていると、お前の飼い主がバカにされるぞ』

くつした『いあんが?』

ストロー『そうだ』

 

くつした『なんでー?』

ストロー『だっておれ達の飼い主は、おれ達を従えるのがやくわりだ。それなのに、お前がそんなんじゃ、飼い主がムノウだって思われてバカにされる』

くつした『っっ!!!』ピン!

 

ストロー『いいか?お前の飼い主はおれの飼い主の〝なかま〟だ。だから、お前がしっかりしないと、おれのシーザーまでバカにされる。しっかりしろ』

くつした『……うーー。わかった。くつしたも、くつしたのイアンがバカにされるのはイヤだ』

 

くつした、さっそくストローの言った「おれのシーザー」を真似っこしたよ!

 

ストロー『そうだろ。お前の飼い主はおれのシーザーの友だ。何かあったらおれも助けてやる。だから、まずは顔をあげろ』

くつした『わかった。ありがとう。すろとー』

ストロー『……ストローだ』

 

\くつしたは、ストローの友達になった!/

 

くつしたがストローにだけは狼見知りをしなかったのは、イアンがシーザーにだけは普通に話してるからだよ!

使い魔は、いつだって飼い主を見てる!

 

◇◆◇

 

シーザー「ところで、イアン!この後、うちに来ないか!新しい狼用の噛歯剤が手に入ったんだ!」

イアン「……ストロー、やっぱり良い狼だな」うっとり

シーザー「ははっ、無視か!」

 

ストロー『くつした。お前は普通の狼じゃないな?なにものだ』

くつした『くつしたは、神獣ホーラントの子ぞ!』

ストロー『ホーラント……?』

 

くつした『すろとーのは誰の子だ?』

ストロー『……ストローだ』

くつした『すとろーの子かぁ』

ストロー『……ぐるっ』

 

くつした&イアン、ストロー&シーザーに対しては安心して地を出せる!

 

ちなみに、ストローは内心「ストローって言えんじゃねぇか!?」と思ってる。

でも、なんか突っ込む気も失せてる。