番外編19:シモン君は……!(シモン×キトリス+教会の子供達)

 

シモン16歳時代

 

ヨアキム「おーい、キトリスー」タタタ!

 

キトリス「ん?」

ヨアキム「ちょうどお前に会いに行こうと思ってたんだよ!」

キトリス「一体どうしたんだよ、そんなに慌てて」

ヨアキム「俺、次の春に結婚する事になったんだ!」

 

キトリス「えっ!もしかして、前に行ってたあの子?」ぱちぱち

ヨアキム「そうそう!あの時は色々相談に乗ってもらって助かったよ!」

キトリス「いや、俺はなにもしてないよ。お前が良いヤツだから相手の子も、お前と結婚したいって思ったんだろうし。本当におめでとう!」にこ!

ヨアキム「キトリス……」じわ

 

キトリスは良いヤツなので、同い年くらいの同性の友達も多いよ!

でも、その多くはキトリスに王様から冤罪がかけられた時に、一斉にキトリスの事を悪く言ったりしたよ(かなしいね)

 

でも、それはおいといて!

 

キトリス(お祝いで渡す金、どうにか準備しないとなぁ。金足りるかぁ。最近みんな、成長期で食費が……)

ヨアキム「それで、キトリスに一つ相談なんだが」

キトリス「ん、相談?」

ヨアキム「そう、結婚式での友人代表でスピーチを頼みたいんだ!」

 

キトリス「え?俺でいいの?」

ヨアキム「お前以外に誰が居るんだよ!お前が居なかったらあの子と結婚出来てないかもしれないんだぞ」にこー!

キトリス「いや、俺は別に何も……」

ヨアキム「頼むよ。お前以外に考えられない」

 

キトリス「……ヨアキム」じわ

ヨアキム「引き受けて、くれるか?」

キトリス「もちろん!大した事は言えないけど、お前の門出を心を込めて見送らせてもらう」

ヨアキム「キトリス……」じわ

 

二人は向かい合って固い握手を交わしたよ!

実はこの若者、キトリスが冤罪をかけられてもちっとも疑ったりしてなかった数少ない友達の一人!

良かったね、キトリス!

 

キトリス「じゃあ、何か手伝える事があったらなんでも言ってくれよー」

ヨアキム「おう!今度飲みに行こうぜ、奢るから!」

キトリス「ああ!」

 

キトリスはにこにこで教会に帰ったよ!

 

 

 

◇◆◇

 

教会

In懺悔室

 

キトリス(……とは言ったものの、結婚式の友人代表スピーチなんて初めてだ。しっかり練習しておかないと。アイツに恥をかかせるワケにはいかないからな)ぐっ

 

キトリスは貴重な紙とインクを使ってスピーチの原稿を書き始めた!

 

シモン「師匠―?……どこ行ったんだろ」キョロキョロ

 

キトリス「ただいま、ご紹介に預かりました新郎の友人のキトリスと申します」

 

シモン「ん?」ピタ

ヤコブ「シモン―、お腹すいたー。ししょーはぁ?」

シモン「しっ、静かに」

ヤコブ「えぇー」

 

キトリス「僭越ながら、友人代表という事で少しだけ、彼……ここでは、いつものようにヨアキムと呼ばせてください。ヨアキムについて、少しだけ思い出を語らせてください」

 

ヤコブ「ししょー、誰も居ない所で一人で喋ってるよ!」

シモン「ちょっと黙れ。ヤコブ」

 

シモンはヤコブの口を手で塞ぐと、一人でスピーチを続けるキトリスの声に耳を傾けたよ!

 

キトリス「……なんて事もあったな。本当にアレは楽しい時間だったよ。アンナさん。もう知っているとは思いますが、コイツは一見するとお調子者のように振る舞います。でも、本当は芯のしっかりしたとても真面目なヤツです。そのせいで、何か自分がキツい目にあった時も無理をして笑っているかもしれません。それが友人としてはとても心配です」

 

シモン「……師匠」

ヤコブ「……ねぇ、ねぇ。シモン」くいくい

シモン「静かにしろ」

ヤコブ「んーー」

 

キトリス「そういう時に、アンナさん。傍に居てあげてください。お互いに、忙しくて昔のように会える事も少なくなると思いますが、アンナさんが傍に居てくれると思うと、親友としてもとても安心です。なので――」

 

ヤコブ「ししょーー!!」

 

キトリス「っへ!?」ばっ

 

シモン「おいっ!ヤコブ、静かにしろって言っただろ!?」

ヤコブ「シモン、離して!はーなーしーてー!」

 

キトリス「ま、まさか。二人共……聞いてたのか?」真っ赤

 

シモン「あ、いや」

ヤコブ「聞いてたーー!」

シモン「ヤコブ!」

 

キトリス「マジか……はずっ!」

 

キトリスは恥かしさのあまり、紙で顔を隠したよ!

耳も真っ赤!手も真っ赤!

 

シモン「っ!(なに、その照れ方……え、かわ)」震撼

ヤコブ「ねー!ししょー!さっきのなにー?」

 

キトリス「……あぁぁもう。スピーチだよ。結婚式の」ぐったり

 

ヤコブ「すぴーち?」

キトリス「……もー、居るなら居るって言ってくれよ……恥ずかしい」真っ赤

シモン「ごめん、師匠。でも、なんか声かけずらくて(師匠。顔赤い……かわい)」震撼

 

思春期のシモン!

キトリスの赤面に大ダメージ!

 

キトリス「……あの、じゃあ。どうだった?」

シモン「えっと、凄く可愛かったよ」

キトリス「え?可愛い?なにが?」ポカン

シモン「あ、いや。間違った」

キトリス「このタイミングで何か間違う事ある!?」

 

ヤコブ「ねー。ししょー」くいくい

キトリス「ん?」

ヤコブ「さっきのすぴーち、おれのもしてー?」

キトリス「へ?」ぱちぱち

 

ヤコブ「ししょー。おれもホメてー」ぎゅっ

キトリス「いや、これは褒めてるんじゃなくて、結婚式の時に読むやつで……」

ヤコブ「おれもして!おれもしてぇぇぇ!!!」ばたばた

シモン「おい、ヤコブ。いい加減に……」

 

キトリス「あいあい、分かったよ。えーっと、じゃあ」

シモン「え?師匠、ヤコブの我儘に付き合う必要ないよ。甘やかさなくていいから」

キトリス「いいよ。スピーチの練習になるかもだし」

シモン「えぇ(なるのか?)」

 

キトリス「じゃあ、いくぞー。ヤコブ君は最初に出会った時、一番泣き虫でおもらしも酷かったですね?」ウインク!

シモン「っ!」

 

思春期のシモン!

キトリスのウインクに状態異常「動悸」が付与!

 

ヤコブ「わっ、わ!おもらし、もうしてないしー!」

キトリス「でも、一番元気で明るくて。ヤコブ君が教会に居ないと、蝋燭の火が全然足りてない夜みたいです。ヤコブ君が居ないと、この教会は真っ暗になります」にこ

 

ヤコブ「っ!!」ぱあ!

シモン「……」

キトリス「そして――」

 

マタイ「なになにー!」

ヨハネ「なにしてるのー?」

 

そうこうしているうちに教会の子供たちが皆して集まって来たよ!

 

マタイ「師匠、私もしてー!」

ヨハネ「わたしもー!」

ヤコブ「まだ、おれのが終わってないからだめ!」

 

キトリス「はいはい、分かった!全員してやるから!順番!」

 

シモン「……はぁ(また、いつものこのパターンか)」とぼとぼ

 

キトリス(シモン?)

 

 

◇◆◇

 

 

シモン「はぁ(師匠って皆に好かれてるよな。気持ちは、分かるけど。でも……)」ぶつくさ

 

キトリス「シモン?」そろり

 

シモン「っ!師匠!」ぱっ

キトリス「シモン、どこ行くんだよ。もうすぐ夕飯だぞ」

シモン「……いや、ちょっと散歩したくて。師匠も早く皆の所に戻らないとヤコブあたりが癇癪を起すよ」

キトリス「いいよ。甘やかすなって言ったのはシモンだろ?」

シモン「……でも、他の皆もしてもらいたがってたし」

 

キトリス「大丈夫だよ、ごはんの時に続きはしようって言ってあるから」

シモン「……そう」

キトリス「シモン君は、出会った頃から周りの子供達の事ばっかり考えてましたね」にこ

シモン「っ!」

 

キトリスはシモンの隣に立つと、その肩をポンポンと二、三度撫でてあげたよ!

もう、身長はとっくの昔に追い越されちゃってる!

 

キトリス「でも、俺には殴りかかったり、反抗したり。そりゃあもう最初はどうなる事かと思いました」

シモン「う」

キトリス「でも、あれが正解です。知らない大人が近づいてきたら、すぐに尻尾を振ったらいけない。あの反抗も、周りの子供達の為だったと、今なら分かります」

 

シモン「師匠…」

キトリス「シモンは、昔から皆の前では頼りになる「兄貴」をやり過ぎる節があるので、俺はずっと心配しています。でも」

 

キトリスは、笑顔でシモンの肩を抱くと自分の方にぎゅっと寄せてあげたよ!

 

キトリス「これからも俺の前では素直に甘えて発散してください!以上です」

シモン「……ししょう」

キトリス「さ、シモン。今日の夜はどこまで先に進めるか。修行楽しみだな?」

シモン「……うん!」

 

シモンは半分泣きそうな顔を隠すと、自分よりも小さくなった師匠に抱き着いたよ!

良い師弟だね!

 

キトリス「それじゃあ、そろそろ戻るか」

シモン「うん」

キトリス「夕飯何にすっかなー」

 

シモン(甘えて発散するって……どこまでヤっていいのかな)じっ

 

 

良い師弟かなーーーー!?

この頃には、既に自〇のお世話はしてもらってます。でも、多分それだけじゃ物足りなくなってきてるあたりかと!