10:回数不明の出会い

 

 この世はともかく不条理だ。理不尽で不公平で、一言で言えばクソだ。あぁ、そうさ。俺はこんな世界大嫌いだ!滅びちまえよ、こんな世界!

 

「俺の名前はカミュという!お前、強いな!最高じゃないか!!そうだ、村を救ってくれた礼と言ってはなんだが、俺もお前の魔王討伐の旅に同行させてくれ!」

 

 あぁ、畜生が。これで何度目の自己紹介だ。

 いつもいつも、俺の口は心にもない事をペラペラと喋りやがる。腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ!でも、一番腹が立つのは——!

 

「俺の名前はループ!これからよろしくな、カミュ!」

 

 この何も分かってないボケ顔で毎度ドジを踏みやがるクソ勇者だ!

 目立つところなど何もない。ぼさっとした茶髪に、平凡な顔立ち。勇者としての華やかさはどこにもなく、体つきだって頼りない。ただ、一つだけ特徴があるとすれば、何がそんなに嬉しいのか。キラキラと輝く真っ黒な瞳くらいだ。

 

「俺、カミュが仲間になってくれて凄く嬉しいよ!」

 

 何も知らない前途を夢見るバカの顔が、俺の目の前にある。

 

「俺が仲間になったからには魔王は倒したと思ってもらっていい!なにせ、俺は最強の戦士だからな!」

「うんうん!そうだな、確かにカミュは最強の戦士だ!」

「おっと、さすがは勇者だな。見る目がある!最高じゃないか!」

 

 心にもない言葉が、次々と俺の口から溢れ出る。

 あぁ、もう止めろよ。反吐が出る。俺には魔王は倒せない。分かっている。だってもう何度も経験したのだから。

 

「やっぱりカミュは格好良いなぁ!」

 

 他でもない。俺はこのボケ勇者の尻ぬぐいの為に、何度も何度も死んできたのだ。