番外編64:ずっと思ってる(初代×犬)

 

今回のお話しはお喋りではなく小説です。

番外編51【いっそ殺せ!】の内容を踏襲したお話(R18)です。

 

手コキ/手マン/攻めフェラ/受けによる顔射/乳首責め

などが入ったお話となります。

 

 

もし「あれ?番外編51ってどんな話だったっけ?」という方は

番外編51:いっそ殺せ!(初代×犬)

をご一読の上読むと、より楽しめるかもしれません。

 

それでは、ヤってるだけですが久々の小説での二人をどうぞ~!

 


 

 

 

「あぁぁぁっ、急に吹雪いてきやがって!このクソ山がッ!」

「初代様、あそこに山小屋があります」

「でかした、犬。あそこで一旦体制を立て直す!」

「はいっ!」

 

 ソア雪山。

 氷の女王が統べるこの雪山は年中、吹雪に見舞われ、ひとたび足を踏み入れた人間を永遠の眠りの中へと誘うと言われている。そんな北の大地に暮らす民の間には、古くから言い伝えられてきた話があった。

 

「っくそ、小屋の中でもこの寒さかよ……クソ寒ぃな」

「初代様、あの。コレを」

「あ?なんだソレ……酒?」

「はい」

 

——氷の女王に見初められぬよう、ソア雪山では前後不覚になるまで酔っ払ってしまえ。

「はい、アルコールは体温を内側から上げてくれるので、ソア雪山に登る時は必ず持っていくように、と。ふもとの村での昔からのならわしのようです。なので……」

 

 どうぞ。

 そう、俺が差し出した酒を初代様は苦々しい表情で見下ろした。

 

◇◆◇

 

 酔っ払った初代様を可愛いと思えたのは、本当に最初だけだった。

 

「いぬ。おまえ、あったかいな」

「っ!」

 

 そう言って、背中に回された腕に力が込められた途端、俺の目はキラリと輝く琥珀色の瞳に釘付けになった。酒のせいか、いつもより分厚く張る涙の膜が初代様の瞳を更に宝石のように輝かせる。目元にはうっすらと赤みが差していた。

 

「あ、えと……それは、良かったです」

「でも、まださむい」

 

 初代様の顔は普段と変わらない筈なのに、ジッと此方を見つめてくる表情や口調はどこか子供のようだ。

 

「あ、あの。初代様。寒いなら、もっと火を強くしてきますので……」

「いいっ!おまえは、おれのそばをゼッタイにはなれるな!わかったか!?」

「で、でも……!」

「へんじは何ておしえた!?」

「はいっ!」

 

 これはもう完全に酔っ払っている。

 初代様が口にした酒の量は本当に微々たるモノだったが、それでも飲み慣れていないアルコールならばこうなって然りだ。それにしても、まさか初代様がここまで下戸だったとは。頭の片隅でそんな事を考えていると、ソッと耳元で艶のある低い声が響いた。

 

「だって、ほら……いぬが一番ぬくい」

「しょだい、さま?」

 

 舌ったらずな子供のような口調にもかかわらず、鼓膜を揺らす声はどこまでも低く、そして鋭い。気が付くと、もう片方の手がスルリと服の中へと滑り込んできた。

 

「あの……ッ。初代様、そこはっ」

「なんだ、ダメなのか?ここのほうが、ぬくいぞ」

「ッン、いや、あの。ダメというワケでは……っひ!」

 

 先ほどまでの幼子のような乱暴さを含んだ手つきが服の中に滑り込んできた途端、それまでにないねっとりとした色香を帯び始めた。

 まさか酔っ払っているワケではないのか。そう思って初代様の顔を見れば、そこにはやはり甘えたような表情で此方を見下ろす、いつもの精悍な彼の姿があった。

 

「なんだ。ここ、なにかあるぞ」

「っぁ……、ひっ、ン~~っ!」

 

 冷え切った指に容赦なく乳首をこねられた瞬間、腰がビクリと跳ねた。普段、あまり触られる事はないソコは、もちろん女の人のように膨らみがあるワケでも、柔らかいワケでもない。

 

「あっ、ンっ……!っぁん!」

「ふうん」

 

 にもかかわらず、俺は初代様の指使いに耳を塞ぎたくなるような甘えた声を止める事が出来なかった。少しの刺激にすら敏感に反応してしまう。太く大きな指先なのに、どうしてこんなに繊細な動きが出来るのだろうか。

 

「どんどん立ってくるな。おとこのクセに、そんなにここは気持ちが良いのか?」

「~~っ!」

 

 そんな俺の反応を面白がるように、初代様の指先は動きに激しさを増し始めた。

 力いっぱい乳首を指で摘まみ上げられたかと思えば、爪先で先端を弾かれ、指の腹で押し込まれる。最初は冷たかった初代様の指先は、いつの間にか俺の体以上に熱を帯びていた。

 

「っぁ、しょ、だいさまっ!ちょっと……もう、やめて」

「なんで?」

「あの……これ、以上されたら」

 

 あぁ、そうだ。これ以上されたらズボンの中で性懲りもなく勃起しかけるペニスが後戻りできなくなる。そう、疼く下半身を初代様から隠すように身を捩ろうとした時だった。

 

「……っは。ここも、あつそうだ」

 

 目ざとくズボンの膨らみに気付くと、初代様は乳首を責めていた手とは反対の手で服の上から俺のペニスに触れた。

 

「っひ……っぁ!」

 

 それまでどうにか支えていた体は、初代様によって山小屋の固い床に押し倒されていた。服は完全に胸の位置までたくし上げられ、カチャカチャとズボンのベルトを解かれる音が容赦なく響く。パチリと、暖炉の中で火が爆ぜる音が聞こえた。

 

「……なんだ、ぬれてるぞ」

「っん゛、んぁっ」

 

 あっけなく脱がされたズボンは躊躇いなく床に投げ捨てられ、勃起したペニスを下着の上から観察するようにクリクリと弄ばれる。こんな極寒の冬山で、申し訳程度の焚火しか起こせていない中にもかかわらず、俺の体はどこもかしこも熱くてたまらなかった。

 

「ははっ。どんどん汁があふれてくる。ぐちゃぐちゃだ」

「っあ、あッ。しょだい、さ、まッ……ぐり、ぐりしないれっください」

「ガキみたいに、もらしやがって」

「っぅ~~!」

 

 子供みたいになってるのはどっちだよ!?と言い返せるワケもなく——ただひたすらに興味津々といった様子で先走りで濡れる下着を至近距離で見つめる初代様に、俺は腕で視界を覆った。

 もう、こんなの見てられない!何が悲しくて酔っ払った相手に、局部を観察されなきゃいけないんだ!

 

「どうなってんだろうな」

「っへ!?」

 

 そんな子供のような呟きの直後、先走りと共にべったりと張り付いていた下着が勢いよくズラされた。

 

「……うわ」

 

 うわって何だよ!うわって!?

 いくら視界を塞いでも——いや、視界を塞いだせいでより鋭敏に他の感覚が鋭敏になる。どこか感心したような初代様の声。しかも、それだけじゃない。彼の熱い息使いが、震えるペニスの幹に触れ、どれほどの距離で観察されているのか嫌でも感じ取れてしまう。

 

「よく、見えない」

「えっ?」

「もっとちゃんと見せろ」

 

 え、と思った時には遅かった。初代様は俺の両足を勢いよく開かせると、内腿をガシリと掴んだまま足を戻せないように固定させてきた。

 

「っぁ、やめ……初代様っ!そんな、あのッ!そんなに、見ないでくださいっ!」

「なんで?」

 

 恥ずかしいからと視界を塞いできたが、今はそんな事を言っている場合ではない。俺は肘を尽き上半身を微かに起こすと、俺の足の間で起立するペニスを観察する初代様に声を上げた。

 

「なぁ、何でだめなんだ?」

「っぁ、だって……」

 

 初代様をこんな体勢から見下ろす事なんて普段は無い。

 ジッと此方を見上げながら無垢に問いかけてくる初代様に、息が詰まる。顔が、熱くて堪らない。

 

「だって、あの……んッ。そんなに。み、見られたら……」

 

 フルリと起立するペニスに熱いモノがせり上げってくるのを感じた。

 言えるワケがない。貴方に見られてるとソレだけでイきそうになるから、なんて。そんなの、まるで変態じゃないか。

 そう、俺が湧き上がる羞恥心に初代様から目を逸らしかけた時だった。

 

「ん、っふ……」

「っぁ、っひ!っぁ、っえぇ!?」

 

 勃起するペニスの幹を下から上へと舐められた。まるで溶けたアイスでも舐めるように、丁寧に、丁寧に。しかもそれだけではない。エラの部分に到達した途端、くびれに沿うように舌を這わされ、甘く腰が跳ねた。

 

「~~~~っっ!」

 

 声にならない悲鳴と共に、快楽で目の前が弾ける。

 

「っはぁ……はぁ、はぁっ」

 

 イッてしまった。ほんの少し体を触られただけで。見られただけで。舌を這わされただけで。あっけなく。「ウソだ」と呆然としつつ、ふと下半身を見下ろした時。俺は思わず悲鳴を上げた。

 

「っぁ!!!あ!しょ、初代様!?」

「……なんか、いっぱいでた」

 

 初代様の綺麗な顔に、俺の吐き出した精液がべったりと付いていた。輝く金色の髪にも、綺麗に通った鼻筋にも、張りのある頬にも。

 

「あ、あ!ほ、本当にすみません!あの、タオルを……!」

「変なにおいだ」

「ごめんなさいっ!!」

「ん。変な、あじがする」

「ちょっ、そんなの舐めないでぇっ!」

 

 酔っ払っているせいか、放たれる言葉がいつも以上に真っすぐで堪らない。あぁ、俺が初代様を汚してしまった。タオルを取る事も出来ないまま、俺は必死に片手を伸ばし親指で彼の頬に纏わりつく白濁を拭き取る。

 

「ごめんなさい。本当に、ごめんなさい……」

「おまえ、何をあやまってる?」

 

 確かに、それは一体何に対する謝罪なのか。

 

「もう、ヤだ……」

「何が、いやなんだよ。おれか?」

「ちがっ……ちがうんです」

 

 本当に、何が嫌だというのだろう。

 こんなにも綺麗な十八歳の彼を、自らの汚い精液で汚してしまった事か。それとも、初代勇者の子孫である自分が、数奇な巡りあわせの末、全ての原初である彼にその精をかけている姿に——。

 

「……おい、なんか。また、たってるぞ」

「~~ごめ、なさいぃ」

 

 興奮してしまったからなのか。

 いつもだったら勢いよく土下座してみせるのだが、今は初代様に体を固定されているせいで、まともに身動きも取れない。俺の精液を纏う初代様に、浅はかな欲望を余すところなく見られているという状況が、ともかく気持ち良くて堪らなかった。

 

「ふぅん、おもしろいな。先っぽからどんどん汁がこぼれてくる」

「いっ、言わないで……ッん」

 

 初代様が少しだけ眠そうなトロンとした目で、ジッと俺のペニスを見つめる。かと思えば、口元に深い笑みを浮かべ、溢れ出る先走りに向かって人差し指を立ててきた。

 

「っひん!」

 

 イったばかりの亀頭に容赦なく固い指先がグリグリと触れてくる。ダメだと分かっているのに、あまりの気持ち良さに小刻みに腰を震わせ、初代様の指先に先端を擦り付けるような動きをしてしまう。

 

「っぁ、っあ、んっ、っふぁ……ひもち」

「へぇ、きもちいのか。コレ」

 

 思わず口から漏れた「気持ち良い」という俺の言葉に気を良くしたのか、初代様は更に深い笑みを口元に浮かべると、尿道に捻じ込まん勢いで爪を立ててきた。痛いのに、気持ちい。ピリピリとした痛みが、体を甘い感覚と共に駆け巡る。

 

「っぁん、っひもち!それ、好きれす……ぁっ、あっ!」

 

 もう、認めるしかない!俺は、変態です!

 酔っ払って前後不覚になった初代様の指をオカズに、俺はこれでもかというほど乱れた。両足をはしたない程に開き、恥ずかし気もなく腰を振る。

 

「しょだい、さまっ……!っん、そこ、もっと触ってぇっ」

「ん、ここか」

「っんぁ゛~~~!」

 

 どこかで、今の初代様は酔っ払ってるからきっと大丈夫という何の根拠もない考えが、どんどん俺の中から行動のタガを外していく。いつもはされるがままの俺も、この時ばかりは「もっとシて欲しい事」がポロポロと口から零れ出た。

 

「っはぁ。あっつ」

 

 ジッと俺の痴態を見つめてうっすらと笑みを浮かべる初代様の額には、微かに汗が滲んでいる。どうやら、もう寒くはないらしい。よく見ると最初よりも顔が真っ赤だ。その熱が酔いからくるモノなのか、それとも興奮からくるものなのか。

 

 しかし、何度確認しても、初代様の下半身は特に反応してはいなかった。まぁ、酔っ払っているのだから仕方ないのかもしれない。

 

「……っはぁ。しょ、だいさま」

 

 微かに「残念だな」という想いが脳裏をかすめる。しかし、何が残念なのかという答えには触れない事にした。これ以上、酔っ払った彼にあらぬ情動を抱いている自分に気付きたくない。

 

「……やっぱり、気になる」

「っへ?」

 

 すると、それまで楽しそうに俺の亀頭を指で弄っていた初代様の手がピタリと止まった。あともう少しで二度目の射精を迎えそうな程に熱の高まっていた俺は、跡形も無く消えた甘い刺激に、思わず呆けた声を上げてしまう。

 

「あ、の。初代様。どう、したんですか?」

 

 ここまできたのだ。さすがに、最後までシて欲しい。

 ただの〝犬〟でしかない自分は口が裂けてもそんな事は言えないが、それでもズクズクと疼く下半身に「初代様?」と甘えた声を上げるのを止められなかった。

 

「……ここは、もっとぬくそうだな」

「ここ?」

「ああ、ここだ」

 

 その言葉の直後、ピタリと後ろの穴に熱を帯びた指先が触れた。思わず「ひっ」と悲鳴にも似た嬌声が漏れる。

 

「あ、あの……そこは」

「気になってた。ずっと、ヒクヒク動いてて」

「っぁ、なっ、ナカは……っひぅぅっ!」

 

 先ほどまで先走りを受け止めていたせいか、初代様の濡れた指先がヒクつく穴へ容赦なく捻じ込まれた。肉壁を容赦なく掻き分けて奥へと分け入る硬い指先が、先ほどまで感じていたモノ足りなさを、これでもかと満たしていく。

 

「っひん!しょだい、さまっぁ……っ~~!」

「すげ」

 

 ビクビクとこれまで以上に激しく腰を揺らす俺に、初代様の驚いたような声がボソリと漏れる。

 あぁ、そうだ。俺はずっとそこにも触って欲しかった。初代様と体を重ねるようになってから、前でイくより後ろでイく回数の方が断然多く、むしろ前だけでは物足りなさすら感じてしまうようになっていた。

 

「やっぱ、ここ。すげぇぬくい」

「っふぁぁ、っぁ、ンン……っなか、きも、ちっ」

「ぬくくて、やわくて……ここ、良いな」

 

 はぁっ、と熱っぽい息を吐き出す初代様は、表情こそあどけないが微かに細められた瞳は興奮を据えかねる獣のようだった。

 

「どんどん、熱くなる……すげ」

「ンっ、んっ……っはぁ」

 

 ゆっくりと抜き差しされる固い指先は、とめどなく流れ落ちる先走りの助けもあり、一突きごとに最奥を更新していく。同時に粘膜をグリグリと擦られ、穴を左右に押し広げられる感覚に、俺は身体の全てを初代様に暴かれているような羞恥心とも安心感ともしれぬ奇妙な快楽に呑まれていく。

 

「っいぬ、そういえば……おまえ、ここも好きって言ってたな」

「しょ、だいさま?」

 

 キラキラと輝く琥珀色の瞳が視線をジッと此方に——いや、最初にこれでもかというほどに弄っていた乳首へと向けられる。

 

「っぁ、いや……待って、あの、そこはもうっ」

 

 その好奇心旺盛な目に、さすがの俺も激しく首を横へ振った。今、そんな所まで触られたら、確実におかしくなってしまう。

 しかし、初代様が俺の言う事など聞いてくれるワケがなかった。

 

「やだ」

 

 穴に指をハメられたまま、初代様の体が俺の上半身へと押し寄せてくる。再び、背中が固い床に触れた。そのまま、初代様は再び俺のシャツを胸の上までたくし上げると、今度はその口で激しく俺の胸に吸い付いた。

 

「ん……、ンッ」

「あ、あぁっ!はぁっっ、ん!あちゅ、いぃぃっ」

 

 敏感になっていた乳首が、生暖かい口内で力いっぱい吸い上げられる。まるで赤子が乳に吸い付くような無垢さすら含んだ動きに一瞬「可愛い」と騙されかけるが、その瞬間、下半身を責める指先が、ある一点を掠めた。

 

「い゛っ~~、ひっ、っぉ!っあ、っぁぁぁん!」

「っふ……んっ、ん」

 

 またイってしまった。

 ペニスから激しく漏れる精液が、容赦なく初代様の服を汚す。しかし、どうやら初代様は俺がイった事など気付いていないようで、与えられる快感は一向に止む気配を見せない。それどころか、指の抜き差しも、吸い付いてくる舌の動きも激しさを増すばかりだ。

 

「もっ、イったからっ!やめっ、っひぃっ!おっぱい、も吸わないでぇっ……やぁぁっ!おしりも、も……やめぇっ!」

「っふ、っはは。ヤダ」

「っふ、んぅぅぅっ」

 

 勃起もしていない初代様にとって、俺の穴に指を挿れて一体何の意味があるのだろう。それに、胸だってそうだ。こんな硬くて膨らみなど皆無の胸に吸い付いたところで何も楽しくはないだろうに。

 

「っはは、いい。すげぇ、いいっ。なぁ、いぬ。お前は……どうだ?」

「しょだい、さま……」

 

 しかし、初代様は両方の乳首をこれでもかと吸い上げた後、顔を上げて楽しそうに問いかけてきた。その顔は、いつもの初代様のツンとした棘が全て抜け落ち、なんだか本当に無邪気な子供のように見えた。

 

「いぬ、おれは……お前と、こうするのが楽しい」

 

 初代様は真っ赤な顔でそれだけ言うと、そのままゆっくりと唇を重ね合わせてきた。汗と精液で濡れた初代様の服が、俺の腹にジワリと張り付く。初代様の口内からは微かにアルコールの味がした。

 

「っは、ン……しょだい、さま」

「あぁっ、あっつー」

 

 パチパチと焚火が爆ぜる音が絶え間なく聞こえる。

 ここは北の大地でも最北端の位置するソア雪山だ。氷の女王が統べるこの地は、年中雪に覆われ、ひとたび足を踏み入れた人間を永遠の眠りの中へと誘うと言われている。

 

 それなのに、なんだこの暑さは。初代様も俺も互いの体を汗で濡らし、俺なんか殆ど服すら纏っていない状態なのに、欠片も寒いと思えない。

 視界の端に、転がった酒瓶が見えた。

 

「……なぁ、いぬ」

「なん、でしょうか」

 

 初代様は顔を真っ赤にしながら、自分も服を脱ぎ始めると手の甲で額の汗を拭いながら言った。

 

「もっと、やりたい」

 

 子供が友達を遊びに誘うように発せられたその言葉に、俺も考えるのはやめにした。

 

「おれも、楽しいので。もっと、したいです」

 

 その言葉を皮切りに、互いを遮る布を全て取り払った俺達は性欲処理でも何でもない、ただ肌を重ねて熱を高め合う遊びに興じたのだった。

 

◇◆◇

 

 一夜明けて、あれほど酷かった吹雪がピタリと止んだ。

 

「おう、犬。いつまでグズグズしてんだ。すぐ出発するぞ」

「は、はい!」

 

 山小屋で互いの体を重ね合わせどうにか暖を取り合った俺と初代様は、毛布にくるまったまま驚くほど穏やかな朝を迎えた。目覚めた初代様には二日酔いの症状などはまるで無かったが、どうやら前日の事は何も覚えていない様子だった。

 

「えっと、忘れ物は……あ、お酒お酒」

「おい、そんな無駄なモン置いていけ。酒なんてあったところで、何の役にも立たねぇんだからな」

「は、はぁ」

 

 いや、大いに役立ったとは思うのだが——。

 

——ぬくくて、やわくて……ここ、良いな。

 

 その瞬間、昨日の幼子のような初代様の姿を思い出し、顔に熱が集まるのを止められなかった。互いに服を脱ぎ去った後の初代様もそりゃあもう凄まじかった。胸に吸い付くのは、特に気に入った様子で……って、これ以上は止めておこう。

 

「じゃ、じゃあ……コレは置いて行きますね」

「おう、そうしろ。ただでさえ、防寒具で荷物がかさんでんだ。いらねぇもんをダラダラ持ち歩くなよ」

「はい」

 

 でも、初代様が昨日の事を覚えていないのは不幸中の幸いだった。きっと覚えていたら、俺だってこんなに普通な顔で初代様と顔を合わせる事が出来なかっただろう。

 

「今日こそボスを倒してこんな山、さっさと下りるぞ!」

「はい!」

 

 俺は街の人から貰った酒を山小屋に置いて行くと、ズンズン先を行く初代様の背中を慌てて追った。まぁ、酒がいつまでもつかは分からないが、この酒が次の冒険者の命を繋いでくれればそれはそれで幸いだ。

 

「初代様、寒かったら言ってください。もう一枚コートを出しますので」

「……おう」

 

 そう何気なく声をかけた初代様の横顔は、何故か昨日以上に真っ赤だった。なんだろう、まだアルコールが残っているのだろうか。その横顔に、ふと昨日の酔っ払った初代様を思い出す。

 

——いぬ、おれは……お前と、こうするのが楽しい。

 

 酔っ払った彼を可愛いと思えたのは、本当に最初だけだった——

 

「……可愛いな」

 

 ワケではなく。絶対に言いはしないけれど、俺はけっこう頻繁に彼を可愛いと思ってしまっている。

 

 

◇◆◇

 

 

(あぁぁぁっ!死にてぇぇぇぇーーーーー!!!!)

 

 

初代様は、酒には死ぬほど弱いけど記憶は飛ばないタイプ!

 

 

おわり

 


 

あとがき

久々の初代様のR18話でした!

初代様は犬のとセッを性欲処理だとは思ってないよ!

ただ、ただ……好きで、楽しんでる!