番外編1:ハリボテの童貞喪失願望1

 

 光君は手先が器用だ。

 今日も昼休みに俺の教室にやってきた光君が、皆の前でスマホゲームをやってるんだけど、指の動きが異次元だ。画面を滑らせるスピードもタップの正確さも、俺がやったら絶対ミスるような操作を軽々と決めていく。

 

「……すげぇ」

 

 光君の手元を見てると、つい目を奪われる。でもそれは、俺だけじゃない。誰が見てもそうだ。

 

「うわっ、光、指どうなってんの!?早すぎだろ!」

「おいおい、マジで人間技じゃねぇって!」

「そうだろう、そうだろう?これこそが、俺の魂が生み出した神技だからな!」

 

 感嘆の声をもらす周囲のギャル達の前で、本人は得意げに笑ってハイスコアを叩き出してるけど、あの動きはマジで普通じゃない。見てるだけで俺の方が疲れるそうなレベルだ。

 

「アイツの指マン……エグそうだな」

 

 すると、光の指捌きを見ていたクラスメイト達の中から、そんな下ネタをコソコソ話す声が聞こえた。

 

「っっ!」

 

 その声に、俺はとっさに顔を伏せる。

 ヤバイ、今、すごい顔赤くなってるかも。

 そんな風に俺が勝手に焦ってたら、向かい側に座っていた佐藤が俺の耳元で「で、実際どう?」なんて小声で聞いてきた。

 

「ど、どうって……?」

 

 思わずオウム返ししてしまったけど、佐藤のニヤニヤ顔を見て余計に混乱する。どうって何だよ、どういう意味だよ!?

 

「いや、実際どうなのかなって思って。体験者の意見が聞きたくて」

 

 そう追い打ちをかけられて、俺の頭の中は一気に真っ白になった。

 

「た、体験者じゃ……ないし!」

 

 声が裏返ったのが自分でもわかって、ますます顔が熱くなる。佐藤がさらに笑いながら、「マジで真っ赤じゃん!そんなにイイんだ?」と肩を叩いてきて、俺はたまらず机に突っ伏した。

 

「ふうん、俺も光に手マンのコツとか聞いてこよっかな~」

「~~っ!」

 

 佐藤!お願いだから、もう何も言わないでくれ……!

 突っ伏した腕の隙間から、俺は再び光君の指を見た。凄まじい速さで滑らかに動く筋張った指に、全然体の熱が引かない。

 

「……あっ、つい」

 

 光君の手は、手のひらが意外と小さめなのに、指はスラリと長くて綺麗だ。でも、女の人みたいな手というわけではなくて、その骨のラインが綺麗に浮き出ていて、節が少しゴツゴツしているから関節がしっかり目立っている。だから、しっかり存在感があって。うん、そうだ。

 

 体験者として言うなら、確かに光君の指は——