111:迎え撃つ

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「……えっ、なになに。これ一体どういう状況っすか?」

 

 

 夜勤当日。

夕刻とは言え、冬という季節柄、完全に日の落ちた時間帯。最早、上着に襟巻、そして手袋必須になった完全防備な格好で、俺はアバブを職場の前で迎え撃った。

 

「アバブ、元気になったみたいで良かったよ」

「いやいやいや。良かったよ、じゃないっすよ!?これどういう状況っすかって聞いてるんですけど!」

 

2日ぶりに職場に現れたアバブは、最後に見たあの時とは異なり、顔色も普通で完全に体調は良くなったようだ。一安心である。

 

「アウト先輩、この極上級に顔の良い集団は、一体なんなんですか!?」

「アバブが喜ぶかと思って連れてきた!どう!?初級教本の続き、見つけられそうな気がしてこない?」

「ちょっ、連れて来たって……?お願いですから私と“会話”してください!アウト先輩!」

 

 そう言って悲鳴にも似た叫び声を上げるアバブに、俺は大満足だった。やっぱりアバブも女の子だ。とても顔の良い男達に、とても喜んでいるようだ。

なんたって、こんなに真剣な顔で俺に詰め寄ってくるなんて初めての事だからだ。

 

「さぁ、アバブ!よく見て!触りたければ自由に触ってもいいよ!好きでしょ?かっこいい男!前にアバブの言ってた、ぱらだいすってやつ作ってみたつもりなんだけど、これで合ってる?」

「ちょっ!!そんな人聞きの悪い言い方を大声でしないでくださいよ!?他の人見てます!見てますから!」

 

ここまでしたのだ、きっとアバブはあの初級教本の続きを持って来てくれるに違いない。

 

 そう、俺は、俺達はアバブを迎え撃った。

 

 バイと、アボードと、トウと、ウィズを連れて。

全員で迎え撃ったのだ。