<小話11>:スルーとヨル初めての喧嘩

ツイッターお喋りまとめ

〇前世&金持ち父さん貧乏父さん〇

 

 

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ビロウ『おい、お前』

イン『あ!オブにそっくりな子だ!こんにちは!』

ビロウ『はぁ!?お前何言ってんだよ!?俺をあの根暗のジメジメ野郎と一緒にすんな!』

イン『あはは!その「はぁ?」って顔はよくオブがするよ!』

ビロウ『~!お前!貧乏人の癖に無礼だぞ!?』

イン『その顔もソックリ!』

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オブ『あれは……。インと……ビロウ!?アイツ、インに何を!』

 

イン『ビロウはオブの弟?兄弟?』

ビロウ『気安く名前で呼ぶな!ビロウ様と呼べ!』

イン『ビロウサマって名前なの?長いね!短くしてビロウでいい?』

ビロウ『あーー!むかつくーー!こいつバカだーー!あ゛あ゛!』

 

オブ『ぶっ』

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ニア『お兄ちゃん。なにしてるの?』

ビロウ『っは!!(あの子だ!)ってか、お兄ちゃん!?』

イン『オブの弟のビロウサマだよ。短くしてビロウ』

ニア『オブの弟?ふーん。確かにソックリね』

ビロウ『ちがう!?あんな根暗と一緒にしないで!』

オブ『違う!こんな下品なヤツと一緒にするな!』

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エア『ザン!本気で俺を殺す気か!?御者ナシの馬車に俺を乗せて走らせるとか!?事故るとこだったわ!昔からそうだよな!?あの時も俺は池で殺されかけた!兄貴達が止めなかったら死んでたんだぞ!』

ヨル『…』

エア『ちょっ、待て!その目のお前はほんとヤバイから!ちょっと落ち着け!話し合おう!』

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スルー『俺が今日はヨルの好きな歌を歌ってやろう』

ヨル『お前の歌は曲名がわからん』

スルー『なら少し歌ってくれ。そしたら分かるから』

ヨル『…』

スルー『ヨルは歌は下手くそだったな』

ヨル『悪かったな、下手くそで』

スルー『夕まぐれと同じ事を!やはり血は』

ヨル『それ以上は侮辱とみなす』

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ビロウ『近寄るな!この貧乏人!』

イン『…!』

オブ『ビロウ!いい加減にしろよ!あんまりインに酷い事を言うようなら…』

イン『懐かしい!ねえ!オブも最初オレに「ちかよるな!このびんぼうにん!」って言ってたよね!なつかしい!』

オブ『…ぐっ』

イン『さすがきょうだ』

オブ『それ以上は侮辱とみなす!』

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スルー『ヨルのかなりやはどこで捕まえて来たんだ?』

ヨル『捕ま…店で貰った』

スルー『へぇ、店なのに金を払わずともくれるのか!』

ヨル『良い声なのに見た目が地味なせいで売れ残っていた。殺される直前だったんだ』

スルー『小さなヨルは優しい子だな!おいで!ヨシヨシしてやろう!』

ヨル『…』

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スルー『うちのピーちゃんは黄色の鳥だ。夜になるとお喋りをする。かわいいから明日連れてきてやるな!』

ヨル『セキセイインコか』

スルー『ちがう!ピーちゃんだ!なんだその舌を噛みそうな名前は!ヨル、お前は名付の感性がない!』

ヨル『色々と言いたい事はあるが、お前にだけは言われたくない』

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ニア『ゆうまぐれさん?私のダンスはどうかしら?』

エア『う』

スルー『ハッキリ言っていいぞ』

エア『…あ、暴れ馬のようだ』

ニア『あばれうま?それはどんな風ってこと?』

スルー『扱い辛い馬ってことだ』

エア『おいっ!』

ニア『すてき!扱いやすい女なんてまっぴらだもの!』

エア『すごいな』

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エア『お前、歌だけは上手いな』

スルー『俺は歌だけじゃなくて何でも上手いぞ!だいだいが上手い!春も上手に売った!ばいしゅんふなんて簡単だな!』

エア『堅物の俺の弟を虜にする位だからな』

スルー『虜…あぁ!昨日お前の弟をヨシヨシしてやったら物凄く喜んでいたぞ!』

エア『そういう弟のシュミは知りたくない』

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エア『ヨシヨシって……アイツ、普段はあんな仏頂面して。ぶはっ!』

スルー『おい、夕まぐれ。一応、忠告しておいてやる』

エア『あ?なんだよ』

スルー『今後、弟のかなりやには、手を出すなよ』

エア『ほぅ。お前、貧乏人の癖に気位が高いな。そう言われると手を出したくなるのが人間の性なんだよなぁ』

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スルー『もう大人だろうが!弟のモノに手を出すな!殺されるぞ!』

エア『確かにそうだ。けど、バレなきゃ問題ないだろ?お前が黙ってたらバレやしない。どうする?お前を天国に連れてってやるよ。お前が俺から離れがたくなるかもな』

スルー『はぁ?何を言ってる!?お前が天国に連れて行かれるぞ!』

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エア『それにしても変わった歌を歌うな』

スルー『ふふん!俺の声は素晴らしいだろ!?』

エア『こんな男が、何でアイツの“お気に入り”なのかね』

スルー『確かにな!俺は村の皆からは嫌われてるのに、何でだろうな!』

エア『あぁ、アイツ。昔から可哀想なモノが好きだからな』

スルー『だからか!』

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スルー『(ヨルは優しいから、俺が皆から嫌われてるのを気にして仲良くしてくれてたのか!)』

 

—良い声なのに見た目が地味なせいで売れ残っていた。殺される直前だったんだ

 

スルー『(ヨルにとっては、俺は殺される直前のかなりやと同じなのかもなあ)なら、俺は変わり者の嫌われ者で良かった!』

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イン『最近、ニアとお父さんが隠れて何かしてる』

オブ『へぇ』

イン『だからオレ見に行った!そしたら凄いの見ちゃった!』

オブ『へぇ』

イン『ニアと、あの婚姻の宴でお父さんと一緒に踊ってた男の人が一緒に踊ってて、お父さんは歌ってた!』

オブ『うん、インはとりあえず関わらないようにね?』

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【スルーとヨルの初めての喧嘩】

 

スルー『ヨル!俺は今日も変わり者だと皆から嫌われてたぞ!俺はかわいそうだろ!?』

ヨル『…何故、急にそんな事を言う』

スルー『俺はヨルからずっと愛好者で居て貰いたいからな!』

ヨル『それと、お前が変わり者で可哀想である事に何か関係があるのか?』

スルー『な、なんで、ヨルは怒ってる?』

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ヨル『なぁ、スルー。俺がお前とこうして親しくする理由を、お前は何故だと思っている?』

スルー『おっ、俺が歌が上手で、良い声で』

ヨル『それで』

スルー『変わり者で村で嫌われてるから、可哀想に思ってくれたんだろ?殺される直前だった“かなりや”みたいに』

ヨル『っ!スルー、お前…お前は』

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スルー『ヨルは優しいからな!だから、俺はヨルにはずっと俺の愛好者でいて欲しいから変わり者で』

ヨル『不愉快だ。帰る』

スルー『えっ!』

ヨル『俺を馬鹿にするのも大概にしろ』

スルー『えっ、ヨル?待ってくれ。何か俺は悪いことを言ったか?なぁ、ヨル』

ヨル『付いてくるな』

スルー『っ!』

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エア『今日はお早いお帰りだな。何?あのカナリヤ野郎と今日は盛り上がらなかったのか?』

スルー『…』

エア『あんな奴のどこが良いのかと思ったら。アイツ、村では嫌われ者なんだって?カナリヤの時と言い、お前ってホント可哀想な奴が好きだよな?自分でも見てる気分になるか?』

スルー『くそ。また、お前か』

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【仲直りの方法】

 

イン『お父さん、元気ないね』

スルー『……俺はもうだめかもしれない』

イン『だめってどうしたの?』

スルー『ヨルを怒らせてしまったが、俺にはどうしてヨルが怒ったのかわからないんだ。今日謝ろうと思うんだが

俺は何に謝ったらいいんだ?』

イン『(まだ夢の中の友達のこといってる)』

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イン『オレの経験によるとね』

スルー『…えぇ、お前の経験かあ』

イン『オブをよく分からず怒らせた時は』

スルー『それは頼もしい経験だな!』

イン『理由も分からず謝ると逆に、もっとオブは怒るよ。なんで僕が怒ってるかわかってる?って』

スルー『や、やるところだった』

イン『だから、そ言う時は』

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スルー『そう言う時は?!』

イン『オブに何でおこったの?教えて?って聞く』

スルー『…イン、お前は頭がいいな!?』

イン『そうでしょ?でも聞いたら教えてくれる時もあるけど、教えてくれない時もある』

スルー『教えてくれない時は?』

イン『嫌な思いさせてごめんねって言って、帰ろうとする』

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イン『そしたら、慌てて教えてくれるよ!』

スルー『イン!お前ってやつは本当に頭がいい!さすが俺の子だ!すばらしい!聞いて答えてくれなかったら、そうすればいい!よし!そうしよう!』

イン『夢の中の友達と仲直りできるといいね』

スルー『夢の中じゃない!ほんとだ!』

イン『ふふ。そだね』

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※補足

はいじ「インはスルーの言う“夜にだけ会える友達“というのを、スルーの夢の中の友達だと思っています。自分が口にする、オブの父親のヨルと同一人物とは、それこそ夢にも思っていないのでした。そして、インは大分オブを上手に掌で転がしているのでした」

 

 

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スルー『……』

子供達『なー!スルー!お前なんで今日は歌わない!?』

子供達『今日はなんで静かなんだ!?』

子供達『なんで大人みたいになってるんだ!?』

スルー『……』

 

オポジット『確かにアイツ、今日は静かだな』

ヨル『…』

オポジット『(そして、コッチも分かりやすく気にしてんな)』

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※補足

はいじ「忘れてる人も居るかもなので書きます。オポジットはフロムのお父さんです。村の若い衆をまとめてる人です。そして、スルーの飼っていたウサギを何度も焼いて食べたせいで、スルーからは野蛮な怖いやつだと思われています」

 

 

 

 

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【スルーとヨルの仲直り】

 

スルー『…ヨル。なんで、ヨルは怒ったんだろう。不愉快ってヨルは言った。もう、ヨルは俺の愛好者じゃない?わからん。俺はこんなんだから、変わり者で、みんなにも嫌われるんだろうな。俺は…駄目な奴だ。でもインの助言もあるし、アレの通りやってみよう。でも待てよ。ヨルはそもそも待っててくれるのか?』

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——何で怒ってるの?教えてって。聞くよ。

 

スルー『弱気はだめだ。そこは悩んでも仕方ない。そう、ヨルに聞けばいいんだ。でも居なかったら…俺は変わり者だから、昼間はヨルに話しかけられないし……』

ヨル『(これは……わざとなのか)』

スルー『っ!居た!ヨル居た!』

 

独り言が大きいスルー

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スルー『ヨル!昨日はどうして怒ったんだ!?教えてくれ!』

ヨル『…』

スルー『ヨル?お、俺の声が聞こえてないのか?』

ヨル『…』

 

——教えてくれない時は、嫌な思いさせてごめんねって言って

 

スルー『……俺はお前に嫌な思いをさせ』

ヨル『受け取れ』

スルー『これはなんだ』

ヨル『金貨だ』

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スルー『きんか?』

ヨル『そう。金だ。お前らか普段使う小銅貨の100枚分だ。それをお前にやろう』

スルー『な、なんで?』

ヨル『お前が俺と親しくするのは、俺が貴族で金持ちだからだろう?お前は春を売って金持ちになりたいと言っていたじゃないか。俺はお前に好かれていたいから金持ちで良かった』

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スルー『……ヨル。お前は俺がそんな風に思っていると、本気でおもってるのか?』

ヨル『ああ。でなければ、俺のような愛想のない面白味もない男と誰が関わる?お前にとって、俺は春を売る他の客と同じだろう』

スルー『っっ!!ヨル!いくらヨルでもそれは言ったらダメな事だ!絶対にダメなんだ!』

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ヨル『何故、ダメなんだ』

スルー『俺がヨルと仲良くしたい気持ちを、勝手にそんな風に決めつけるのはいけない!俺が好きなヨルを”俺のような“なんて下にしたら行けない!いくらヨル本人でもいけない!俺はヨルが金持ちだから仲良くしてるんじゃない!なのに、そんな風に言われたら!俺は、俺は…!』

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ヨル『腹が立ったか?』

スルー『腹が立ったし!悲しくなった!俺はヨルが家畜でも好きなのに!』

ヨル『家畜は富を産むからな』

スルー『あっ、あっ!ちがう!俺はヨルが……えっと、蜘蛛とか、ネズミとか、蛇とか、そんな害虫でも、好きだ!』

ヨル『っ!』

スルー『あと、あと』

ヨル『っく、ははは!』

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スルー『ヨル?』

ヨル『っふ。そうだろ?スルー。昨日の俺もまさにそんな気持ちだった。勝手に昔飼っていたカナリヤと同じで、可哀想だから自分と仲良くしてるんだろ、なんて言われたら腹も立つ』

スルー『…』

ヨル『気持ちを勝手に不名誉なモノにすり替えられるのも、好きなモノを貶められるのも』

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ヨル『してはいけない。それは相手への侮辱に他ならないからだ』

スルー『ヨル…』

ヨル『何故、俺が怒ったか。分かったか?』

スルー『……わかった。俺は言ってはいけない酷い事をヨルに言った』

ヨル『そうだ』

スルー『……ごめんなさい』

ヨル『今回だけは……許してやる』

スルー『良かったぁ』

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スルー『本当に良かった……もう俺はヨルと仲良くしてもらえないかと思った』

ヨル『……今回のはお前のせいだけじゃないから、多目に見てやる』

スルー『あの、ヨル。これ、返す』

ヨル『あぁ、それか。それは、お前にやろう』

スルー『金はいらんとっ』

ヨル『それは金貨じゃない。チョコレートだ』

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スルー『ちょこれえと?』

ヨル『外側を剥け。そして食べろ』

スルー『…ちゃいろだ』

ヨル『大丈夫だ。毒ではない』

スルー『そんな心配していない!た、たべるぞ』

ヨル『どうぞ?』

スルー『っ!』

ヨル『っはは!どうだ?』

スルー『あまい、あまくて…美味しい!』

ヨル『そうか。なら良かった』

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