ヨル×スルー①-3

 

 

        〇

 

 

 その日、ヨルは大岩にやってくるのが遅かった。何かあったのだろうか。俺は心配になりながら、ともかくヨルが来るのを待った。

 

待っている間に、少しだけ眠かったので、大岩の上で眠った。

あれ?これと同じことが以前にもあったような。そう思った時には、俺は深い、深い眠りに落ちていた。

 

 

 

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『スルー』

『む』

 

 俺は、体が宙に浮くような感覚で目を覚ました。薄い光が、薄く開いた目の中にピカピカと入りこんでくる。まぶしい。

 

『スルー』

 

 ヨルの声がする。ヨルの匂いがする。んんん?これは、ヨル、ヨルの匂いか?

 

『ヨル?おまえ、変だぞ?』

『変なものか。さぁ。スルー、一緒に風呂に入ろう』

 

 そう言って、いつの間にか連れて来られていたヨルの屋敷の風呂場で、俺は既に裸だった。

そういえば、ヨルも既に裸だ。

ヨルは裸の俺を抱え、いつもは全くしないような表情で俺を見下ろしている。どうりで、抱きかかえられているだけで、気持ちが良いと思った。

 

『スルー、共にあそぼう』

『よる、よる。なぁ、もしかして、よる』

 

ヨルは、物凄く、にこにこしていた。いつも白い頬は、仄かに色づき、そして一番の変化は。

 

『ヨル。酒臭い。お前は、ダメだと言ったのに、たくさん飲んだな?』

『あれしきで、俺は酔わん』

『ヨル。絶対にお前は、酔ってるぞ!』

『スルー、そんな事はいい。早く風呂で種まきあそびをしよう』

『……』

 

おふろ。

そこは、泥だらけで遊んだり、汗をたくさんかいたら、ヨルが『入って行け』と連れて来られるようになった場所。ここに来ると、俺もヨルも裸になって、温かい水に飛び込むのだ。最初は、ぬるぬるの洗料の使い方も、捻ったら温かいお湯が出てくる取っ手の使い方も分からなかった。

そして、今やここは、俺とヨルがよしよしして遊ぶ場所。

 

“たねまきあそび”

 

 そう、いつものアレを、そう呼ぶのは俺だけで、いつものヨルなら口にしない。やっぱりヨルは酔っている。酔っていなければ、こんな、最初からヨルが俺の乳に吸い付く筈ない。

 

『スルー、お前はここを赤ん坊に吸われるように、俺に口吸いされるのが好きだな』

『んっ、よる。まずは、おゆを、体にかけないと、だめだろ?こら、この酔っ払いめ!きたないぞ!俺の体は汚いから、病気になっぁん』

『スルー、何を言う。お前のどこが汚い。言ってみろ。ほら、もうここは立ってるじゃないか。可愛い、どこもかしこも、かわいい。お前は、かわいいしかない』

 

 ぴんと、指ではねられる俺の乳。意味のない場所であったそこが、ヨルの手によって、どんどん大きなっていく。

 

『スルー、かわいい。たまらない、たまらない』

 

 あわわわわ!

ヨルが完全に酒に酔って、頭がいつものヨルではない。だって、いつものヨルは俺に「かわいい」なんて言わない。俺はたくさん言うけど、ヨルは言わない。

なにせ、俺は自分では可愛いと口にするが、本当に可愛い訳ではないので、いつものヨルが合っている。

 

『スルー、スルー、するー、するー』

『よる、っあう、だめだ。耳のちかくで、あんまり、名をよぶと』

『かわいい、俺だけのスルー』

『~~~~っ!』

『ふふっ、耳が真っ赤になったぞ。するー。うれしいのか?うれしいんだな?俺に名を呼ばれ、耳を赤くして。かわいいな』

 

 ひいいいい!

俺の目の前に居るのは誰だ!満面の笑みのヨルが、俺の鼻に口吸いを落とす。

 

ちゅっ、と可愛い音を立てて、今度は顔中に口吸いを落とされる。

 

『かわいい。なんて、かわいいんだ。お前は。やしきで、かいたい。ずっと俺のそばで、撫でて、やりたい』

『っひ』

 

 頭がバカになるくらい、可愛いと言われている。だめだ、だめだ、だめだ!

いつものヨルこそ、正解のヨルなのだ。今日は不正解のヨルだ!ダメだ!ヨルは酒に酔うと、俺の足を舐めたりする、“変わり者のヨル”になるのだから!

 

『ヨルヨルヨル、待つんだ。ヨル。っひえ、もうヨルはヌルヌルなのか?大きくなってるのか?あれ、あれれ?早いぞ、よる。どうしたんだ!ぁっ、あっ、っひん。もう入る?ぁっ、あっ、あっ!』

『スルー、いつもと同じだ。お前に見えないようにしているだけで、俺はいつも、お前の体を見ると、すぐこうなる。かわいい、俺のスルー。たまらない。ここも、俺だけの場所』

 

 ヨルの綺麗な手が、まだまだ汚い俺の体に、蛇のように這いまわり、そしてすぐに、種を蒔く、俺の穴へと触れた。

 しっとり濡れる、温かい霧の中。ヨルは何度も何度も俺に「可愛い」と口にしてくる。

ヨルが壊れた。完全に壊れた!

 

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、と音を立てて、俺の乳に吸い付くヨル。ヨルはそのまま、俺の口に自身の口を持ってくると、獣のような勢いで、俺の口にかぶりついた。

 俺の口の中が、ヨルの舌でいっぱいになる。ぐるぐるする。俺の舌を絡めとるように、動き回るのが、物凄く気持ちがいい。

 

『っふぅ、んぅ』

『っは、っく』

 

 口吸いをしているのに、ヨルはたまに、我慢の限界であるかのように、口同士が離れた隙間から『かわいい、スルー、かわいい、かわいい』と、可愛いを吐き出してくる。その拍子に、俺とヨルの唾液が、口の横からたくさん垂れる。

 

 こんなの、発情期の獣と同じだ。

けど、もう、この辺りから俺の頭も随分とおかしくなっていた。あんまり、ヨルが熱を帯びた目で、うっとりするような表情で、俺を見て『かわいい』と連呼するものだから、俺まで自分の事を、本気で可愛いと思うようになっていた。

 

いつも口にする『俺より可愛い』なんか、目じゃない。

 

『ヨルヨルヨルヨルっ。っひ。よる。おれ、かわいい?かわいいか?』

『かわいいっ!かわいい、お前がこの世で一番かわいいっ!』

『ふわふわの、けもるたちより?うさぎより?みんなより?おれがいちばん?』

『あぁ、あいつらなんか、目じゃないっ!どんな生き物より、お前が』

 

———一番、かわいいっ!

 

 そう叫んだヨルのモノが、俺の中で何度も、何度も種まきをした。奥の奥まで、こすり付けるように、ヨルは蒔いた後も、何度も腰を動かしてくる。

 本当の音かは分からないが、俺の奥で、くちゅくちゅと音がした気がした。そこで、物凄く、たくさん種を蒔かれて、立ち込める温かい霧の中、俺はとうとう頭が狂ってしまった。

 

『よる、どうしよう。おれは、びんぼうだから。赤ん坊ができても、もうそだてきれない』

 

 そう、自分が雄である事は分かっている筈なのに、何故かそんな事を思ってしまった。しかも、本気で、だ。俺とヨルの下半身は、互いの種で、もうぐちゃぐちゃだ。

 インとオブの元がまざっている。あれ?そしたら、インとオブの混ざった子が産まれるのか?

 

 あれれ?もうよく分からない。

 

『するーっ、しんぱい、しなくていいっ』

『んっ、っひ。っひん』

『おれは、金持ちだっ!何人生まれても、面倒みれるっ!育てられるっ!だから……するー。心配せず』

——-孕め。

 

 ヨルに耳元でそんな事を言われた俺は、心底安心した。

 そうだった!俺は貧乏だけど、ヨルは金持ちだった!だから、大丈夫だ!何人生まれても、何人孕んでも!

 

『……うんっ!』

 

 俺は、ヨルの体にきつく抱き着くと、ともかく、何も考えずに二人の大事な“種まき遊び”に夢中になった。

 俺もヨルも、この遊びに、とても。

 

 

 夢中だ。

 

 

 

         〇

 

 翌晩。

 

『あははっ!ヨルの口にあった酒で、俺も酔っぱらっていたな!』

『…………』

『赤ん坊なんて出来る筈ないのに、俺もヨルも、昨日は酔っ払いだった!あはは!』

『……もう言うな』

 

 大岩の上で、顔も首も、そして耳も真っ赤にしたヨルの隣で、俺は大いに笑った。だって、昨日はあの後、薄く世が明けるまで種を蒔いたのだ。最後には、二人で生まれてくる赤ん坊の名前を決めて遊んだ程だ。

 

『でも、楽しかったー!ヨル、また酒を沢山飲んできていいぞ!あのヨルも、俺は好きみたいだから!』

『……言ったな?』

 

 先程まで頭を抱えていたヨルが、急に俺の上に乗っかってきた。顔は未だに真っ赤だが、俺にのしかかるヨルの目は、もう狼だ。

 

『っははは!また噛んできた!ヨル狼だ!』

『……ふふ』

 

 昨日やりすぎたので、今日は種まきはしないだろう。けれど、今から俺達は二人で、原っぱに寝転がって、狼の子らがやるじゃれあい遊びをする。

 これも、楽しい楽しい俺達だけの遊びだ。

 

 さて、まだ季節は夏が始まろうとしているばかりだ。ヨルの帰る次の次の秋まで。たくさん、たくさん、遊ぼうか!

 

 


 

 他のCPとのR18の扱いの差よ。

 ヨルとスルーはじゃれあいながら、坂を転げ落ちるように交接して欲しいなぁという私の希望を全て込めました。他のCPも良いシチュエーションが浮かんだら、今度は【小説】形式で書きたいと思います〇