〇
橘庄司は溺れていた。
まぁ、これは完全に比喩ではあったが、確かに庄司は溺れていたのだ。息もまともにできないくらい。庄司は宮古に抱き潰されていた。
どぢゅっ、じゅぽっじゅぽじゅぽっ!ぬぷぬぷぬぷっ!どちゅっどちゅっどちゅ!ぐりぐりぐりっ!
「あんっ、ああぁんっ!っひ、み、あこっ。もっ、むいっ。むりぃっあああっ!にゅいてっ!もっ、いあっ!っあぁぁんっ!ちんちぬいてっ!ぬいてぇっ!」
「あーーっ、くそっ。むりじゃねぇよ。やっべ。こんなケツマンコしといて、誰が抜くかよ。くそっ、マジでいい!おらっ!出すぞっ!」
「っはぁぁあぁっん!」
庄司の中で、宮古のペニスがブルリと震えるのを感じた。熱い。どうやら、また宮古はイったらしい。なのに、それなのに。
「ぁっん!やっ、なんでぇっ?」
「っは、なんでだろうな?」
それでも庄司の中の宮古が萎える気配は毛頭ない。ビンと張り詰めたソレは、きゅうと庄司が中を締め付ける度に、そのハッキリとした輪郭を感じ取ってしまう程にバキバキだった。それがまた、庄司を堪らない気持ちにさせる。
このオスは、俺に夢中なんだと。そう、真っ白になる意識の片隅で、熱い優越が腹の底からわきあがってくるのだ。
「あっあっ!ひゃんっ、ちんちん。みやこのちんちん、しゅごいっ!あちゅい!こあい!かたいぃっ。もっ、やぁぁっ!」
ズプズプッ。どちゅんっ!ずりずりずりっ。
自分の口から漏れる卑猥な言葉と、響き渡るいやらしい音に、庄司は宮古の口元が形の良い笑みを浮かべるのを見た。
「っはぁ、いいっ!この穴、マジで……最高」
宮古の口から吐き出された熱い息に、腹の奥がキュンとするのを止められない。
「みぁこ、も、おなか、いっぱい」
「あ?何言ってんだ。テメェが孕むまで止めねぇよっ!」
「っっひぅ!」
ズプン!と再び激しく挿入された宮古のペニスに、庄司は目の前が真っ白になった。
宮古の激しいピストンの度に、精液がジュプッと結合部分の隙間から飛び出す。
もう、入りきらないのだ。庄司の腹の中は、既に宮古の精液で、その閾値を超えていた。
吐き出されたオスの匂いが、庄司の頭をクラクラとさせた。
「やっ、もっ!くるしいっ。はいらないっ!らめらめっ!どちゅどちゅしないれぇっ!っぁぁぁん!」
「あー、すげぇわ。マジで」
もう、宮古も庄司もイくのは何度目になるのか。
宮古は元より数える気などないし、庄司も五度目の精液を力無く放ってからは、最早数えるのを止めた。
今や、庄司のペニスから潮すら出ない。完全に萎えたソレは宮古に揺さぶられながらペタペタと腹の上で力無く跳ねた。
「っひぅっ、やぶれうっ!みあこ、おにゃかっ、やぶれるうぅっ!やあぁんっ!おくまで、みやこの、ちんちん、きてうっ!っひ、あぁぁんっ!」
「テメェのまんこが俺のちんぽにむしゃぶりつて来てんだろうがっ!くそっ!このまんこすげぇっ!とろっとじゃねぇか。マジで突き破りてぇ」
「っひ!やっぁん、あぁぁんっ!えっ、ぁんっ!んっんっん゛――!」
普段より、宮古の言葉数が明らかに多い。
あぁ、セックス中の宮古って、こんなに饒舌になるんだな、と庄司は最早ハッキリとしないザラつく意識の片隅で思った。どうやら快楽が潤滑油となり、いつもは面倒がって口にしない事でも全部脳直で口にしているらしい。
「っく……」
「っはぅ、っふく、っは、っはぁ。んっ」
またイッった。
宮古は肩で息をしながら、漫然とした動きで、庄司の脚首を掴み上げ、目を細めて庄司を見下ろした。
「ん、んぁ?」
「あー、エッロ。さいこうじゃねぇか」
「はっふ、ふぅう」
そこには、様々な体液でドロドロに汚れかえった庄司の姿があった。恋人の体を汚し、全身に纏わりつくドロリとした液体は、殆どが宮古の精液だ。
「はぁっ、しょうじ……」
健気にヒクつきながら、宮古のペニスを締め付けるアナルは絶景としか言いようがない。更に、普段外に晒される事のない太ももの裏側は白く、そこに飛び散った乳白色の液体が、タラリと結合部分に向かって零れ落ちていく。
この光景、何度見てもエロイ。
「っはぁ。かわいい。しょうじ。まじで、かわいい」
「っ!み、みやこ?」
その瞬間、初めて庄司は宮古と目が合った気がした。
庄司が最初に宮古に足を開いた瞬間から、理性の飛んだ宮古の行動は完全に本能に埋め尽くされていた。そのせいで、目が合っても庄司は宮古と目が合っている気がしなかったのだ。
それが、今、ハッキリと目が合わせられる。
そして、ハッキリ合った目が、余すところなく庄司の全てを映し出す。そして、腹の底から愛おしそうに言うのだ。
「かわいー、すげぇ、かわいい」
「ぁ、あ、あ」
庄司の、捨てていた筈の羞恥心が戻ってくる。可愛いなんて、そんな。三十路の男に一体何を言っているんだと伝えたかったが、渋滞する感情の渦に言葉が出てこない。
そもそも、宮古は庄司の返事など待っていないのだ。
これは、庄司に伝える為の言葉ではない。
腹の底から湧き上がる、感情の射精だった。