(6)

 

◇◆◇

 

 

 その後、僕の意識がしっかりと戻ったのは、どうやら丸一日経った後でした。

 

 

「……あ」

「ラティ……!」

 

 目覚めた先に見たケインは酷く狼狽しており、体を起こそうとしたら、まるで鈍器に頭を殴られたような衝撃が走り起き上がる事が出来ません。あれ?僕はまた鎖のケインが体に巻き付いているのでしょうか?

 

 いいえ、違います。僕の体には何も巻き付いていません。ここまで考えて、僕はじんわりと記憶が蘇ってくるのを感じました。

 

「けいん……僕、あたまが」

「ラティ……あぁ……良かった。もう、目覚めてくれないかと思った」

「……あー、おふろ」

 

 僕は酷く疲れた様子のケインに、僕は手を伸ばそうとしましたが、それすら叶いませんでした。どことなく、まだ体が熱い気がします。なんだか、体をひんやりさせたい気持ちです。

 

「ケイン」

「どうしたっ、何か飲むか?水ならここにっ」

 

 ケインが棚に置いてあった水を差し出そうとするより先に、僕は言いました。

 

「鎖のケインをちょうだい」

「……は?」

「ケイン、鎖のケインを僕につけて」

 

 僕は呆けた顔で此方を見下ろすケインに自分の首を指さすと、ゆったりとお願いしました。首輪もないし、なんだかスースーして寂しいです。僕はケインに「おねがい」ともう一度口にすると、その瞬間ケインはムスとした表情に変わってしまいました。あれ、僕は何かいけない事をいったでしょうか。

 

「ケイン?あの……」

「俺が居るんだから、鎖はいい」

「あっ、ああ!」

 

 ケインは吐き捨てるように言うと、側に置いてあった鎖のケインをポイと部屋の端に投げ捨てました。

 

「あぁ……ケインが」

「違うだろうが!ケインは俺だ!」

「そうだけど……」

「ラティ、今日は俺がずっと此処に居てやる」

 

 その瞬間、僕は投げ捨てられた鎖のケインから人間のケインの方へと向き直りました。すると、そこには先程までの不機嫌そうなケインではなく、少しだけ得意気な表情を浮かべるケインが居ました。

 

「ほ、ほんと?」

「ああ、お前が鎖鎖言わなきゃな」

「っう、うれしい……」

 

 ケインがお昼間に僕の傍に居てくれるなんて、とても幸運です。僕は鎖のケインの事なんかすっかり忘れると此方を見下ろすケインをジッと見上げました。

 

「で?俺と一緒にラティは何がしたいんだよ」

「あ、えっと……えっと」

 

 僕は嬉しさの余り少しだけ思案すると、ハタと一つの答えに行き付きました。

 

「あの、ケイン?あのね」

「ああ」

 

 僕は掛け布団を微かに隙間を作ると、お星さまのようなケインに向かって言いました。

 

「ケイン、一緒にお昼寝しよう」

「……マジかよ」

「ダメ?」

「……まぁ、いいけど」

 

 僕はケインをお布団に誘うと、そのままケインに抱きしめて貰いながら眠りました。鎖のケインも、人間も、固いけれど僕はとても好きです。

 

 

 

おわり


≪後書き≫

 

ケイン、鎖のケインに嫉妬する。自分が付けさせたのに。

本番もしっかり書こうとしたのに文字数超過したので、本番は次回で。ケイン視点で。

 

ちなみにケインはラティの尻が好きです。

何かある度に撫でまわしてます。多分、ケインが王太子の時から派手に撫でまわしたかったけど、昔は階級もあって控えめにしか触れなかったんじゃないでしょうか(触ってはいた)