凡庸な男に明け暮れた、とある天才の話

凡庸な男に明け暮れた、とある天才の話

4:天才の新しい日課

〇  天才カルドのルーティンは、ある日を境に激変した。  そして、その友である俺の日常も、多いに変化した。いや、ぶち壊されたと言った方が良いだろうか。  退院の日、俺は大勢の医者や看護師に見送られ、カルドと共に病院を出た。カルドの姿を見るま...
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3:天才の恐怖

---------- ------- --- 「っ!」  目覚めた。  ツンと薬品の匂いが鼻孔を擽る。いつもと違うフワリとした弾力のあるシーツの感触が肌に触れる。  ここは、病院か。 「っヨハン様!目覚められたのですね!」  すぐ傍に居た看...
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2:天才の不機嫌

「私がこないだキミに話した気象学理論のマナの件なんだが……」  カルドの声があまり耳に入ってこない。美しいカルドの顔も。あの無邪気な笑顔さえ、今の俺には認識が難しい。 「聞いているのか?ヨハン」  いつもの天真爛漫な笑顔ではなく、怪訝そうな...
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1:天才の日課

我が友、カルド・ダーウィングは幼い頃から変わった子供だと、皆から遠巻きにされていた。 「先日、学会で発表された【フーガの相対的な価値と今後の展望】という論文を読んでみたが、あれはとてつもなく面白いモノであった。面白いと言っても“興味深い”と...
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プロローグ:とある天才について書かれた著書

私の父は天才である。 神は父に二物を与えた。美しい容姿と天才的な頭脳だ。しかし、神はその代償として父から“一つのモノ”を奪った。 それは、「他人の話を聞く耳」である。 父はいつも自分のアイディアの話ばかりをする。そして、他人の言葉には一切耳...