勇者ヒスイは石化した

勇者ヒスイは石化した

7:勇者ヒスイは見送った。

とうとう、“その日”は来た。 「イシ君! 今日はとうとう出発の日だよ! 心配しないで! 気を付けて行ってくるから!」 (ダメだ! 行くな、ヘマ!) ヘマは十八歳になった。ヒスイが魔王討伐の旅に出たのと同じ年だ。結局、ヘマがヒスイの身長に届く...
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6:勇者ヒスイは黙って聞いてやった。

(ヘマのヤツ、今日は遅せぇな) ヒスイは今日も黙って家の中に立っていた。窓の外から入り込む日の光は随分と濃いオレンジ色をしている。どうやら大分と日が傾いているようだ。 (何かあったのか?) 夕方になると、いつもヘマは転がるように家を飛び出し...
勇者ヒスイは石化した

5:少年ヘマは何度もあやまった。

「あっ! みんな帰って来てる! サンゴは……あ、居た!」 ヘマがイシを拾って六年が経った。ヘマは十六歳になっていた。 子供の成長とは本当に早いモノで、身長は子供の頃より伸び、キンキンと高かった声も少しだけ落ち着いた。 --------オレも...
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4:勇者ヒスイはウンザリした。

(あー、早く死にてぇな) 勇者ヒスイは百年間雨ざらしの生活を送ってきた。 雨風どころか、犬のおしっこをかぶりながら過ごす日々。その長い年月は、ヒスイから元々備わっていた「自信」を磨耗させていくのに十分の時間だった。 (俺、いつまでこんな風に...
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3:幼いヘマは親愛のキスをした。

「朝だ! おはよう!」 ヘマタイトの朝は早い。 理由は特にない、子供はやたらと早起きというだけだ。ヘマは誰もいない部屋で、大きな声で挨拶をする。 まぁ、もちろん誰も返事などしてこない。そして、返事がない事などもちろん気にしない。いつもの事だ...