第1章:俺の声は何!? 58:新しい基準 その日。ちょうど二人が庭に出て遊んでいる時だ。 『金弥!どこに居るの!?金弥!』 『っ!』 『早く帰って来なさいって言ったでしょう!あんまりお邪魔すると、仲本さん家にもご迷惑になるからって!どうして言う事を聞かないの!?』 金弥の母親が、... 2022.09.04 第1章:俺の声は何!?
第1章:俺の声は何!? 57:山吹金弥 山吹 金弥は元来、自分という存在を上手く認識できない子供だった。 『きん君って……なに』 『きん君って……どこ』 『きん君って……いつ』 そんな、不思議な事を言う子供だった。 『きん君って……だれ』 そして、そんな金弥には、父親が居なか... 2022.09.04 第1章:俺の声は何!?
第1章:俺の声は何!? 56:三つ目のごほうび 「……」 俺の言葉に、弾かれたように顔を上げたイーサが、じょじょに俯いていく。その姿に、俺は思わず自身の口に手をやった。 しまった、余計な事を言ってしまった。 「……ごめん。俺、意地悪な事を言ったな。今の忘れてくれ」 「……」 「ごめん... 2022.09.04 第1章:俺の声は何!?
第1章:俺の声は何!? 55:手紙と言う名の 「これが、手紙?」 鋭い声が、俺の耳の奥を刺した。 「えっと……」 あぁ、またイーサが、“イーサ王”になってしまった。歪だ。なんて、歪なんだ。 イーサの中には、幼い暴君のような五歳児のイーサと、高貴で気高い国王のイーサの二つが眠っている... 2022.09.04 第1章:俺の声は何!?
第1章:俺の声は何!? 54:二つ目のご褒美 「サトシ、目を逸らすな。此方を見ろ」 「……イーサ王子。か、勘弁、してください」 思わず敬語になる。同時に、声が上ずった。ダサ過ぎる。 「何度も言わせるな。此方を見ろ。俺を、イーサを見ろ」 「む、無理」 「こっちを見ろと言っている」 尚... 2022.09.04 第1章:俺の声は何!?