第2章:俺の声はどう?

第2章:俺の声はどう?

75:マナと感謝は霧散する

〇 「くそ……、死ぬかと思ったっぷ、うぇっ」  俺は盛大に腹の中のモノを吐き出しながら、チラと周囲を見渡した。  すると、そこは先程まで出立式の行われていた、美しい景観の王宮前広場ではない。 「ここは……うえっ」  あぁ、もっと周囲を見渡し...
第2章:俺の声はどう?

74:その誰かは、俺でいいだろ?

『なぁ、サトシぃ。この焼き鳥、食ってもいー?』 『っ!』  思わず飛び起きた。  すると、視界の端に、なんてことない顔で立つ金弥の姿があった。どうやら、勝手に冷蔵庫の中を覗いているらしい。まぁ、いつもの事か。 『……きん?』  時計を見る。...
第2章:俺の声はどう?

73:第十六話「遠い過去の自分を」

---------- ------- ----  昔は、そうでもなかった筈なんだ。  俺だって、昔からそうだった訳じゃない。女の子にも、普通に話しかける事が出来ていた筈だ。 でも、いつからだろう。  話しかけるのが、怖くなった。 『あ。あの...
第2章:俺の声はどう?

72:嫉妬の痛み

『ソラナは絶対に私が守るわ』 『だったら、ポルカは私が守る。敵は全員皆殺しよ』 『ソラナは、すぐそうやって殺そうとする』 『ポルカだって、すぐ死のうとするじゃない』  そう、物騒な事を囁き合いながら、二人は笑い合った。本気のような冗談。冗談...
第2章:俺の声はどう?

71:姫事

---------- ------- ----  とある高貴な部屋の一室で、二人の女が向かい合っていた。 一人の女はメイド服姿にピシリと束ねられたポニーテール。そして、その体は、どこか怯えたように微かに肩を震わせていた。  そんなメイド相手...