11時間差レター

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第13話:宣告

「本村先生、ちょっといいですか」  その呼び出しは、突然だった。  それは洋が、いつものように授業を終え、誰も居ない教室で“彼”の手紙へ返事を書いている時だった。  あの、洋が弱気を吐露した手紙以来、二人の手紙のやり取りは、いつの間にか本格...
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第12話:電話

頑張ろう、頑張ろう。  本村洋は自分にそう言い聞かせ、毎日塾に通った。  依然として予習は大変だし、有岡講師からは毎日のように忠告と言う名の嫌味を受けた。  しかし、洋は毎日受け取る手紙で、己を奮い立たせ毎日を過ごした。  いつか有岡講師に...
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第11話:不良とアイツ

午前7時。  俺がいつものように塾を掃除する為、裏口の鍵を開けるようとすると、既に扉は開いていた。中からは人の気配がする。  何だ?  この時間、掃除にくる俺よりも早くこの塾に誰か人が居た事は一度もなかった。  故に最初は不法侵入かと警戒し...
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第10話:平凡とあなた

何で俺はあんな事を書いてしまたんだろう。  俺は手紙を書いて自宅アパートに帰った後、ひどく後悔した。  家の戸を開けた瞬間、何故だか我に返ってしまったのだ。  何で俺はあんな愚痴じみた事を書いてしまったのだろう、と。 「……はぁ」  そう、...
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第9話:不良と励まし

「かおるー。そういやお前、まだ掃除のバイト続けてんだってー?」 「……まぁな」  その日、俺はいつものように無駄に俺の部屋に居座る幼馴染を横目にボソっと呟くように答えた。  俺がこの腐れ幼馴染から悪意に満ちた職の斡旋を受けてから半年以上が経...