第3章:俺の声はどうだ!

第3章:俺の声はどうだ!

136:ベイリー役のオーディション

『タンタンちゃん』  その呼び方は、幼いテザー先輩が上手に一人で“靴下”を履けなかった事から、そう呼ばれ始めたらしい。 「ベイリーの故郷では、靴下の事を幼い子供に言う際“たんたん”と呼ぶと言っていた」 「へぇ」  だから、“タンタンちゃん”...
第3章:俺の声はどうだ!

135:先輩の甘えたい相手

「……なぁ、お前さ。こんな声っつったら……もしかして、出せる?」 「え?」 「いや、無理だとは思う。ただ、お前だったら……少しは、似せた声で言って貰えるかもって思ってさ」  そう、先輩が、煮え切らない様子でボソボソと告げる。どうやら、先輩に...
第3章:俺の声はどうだ!

134:テザー先輩へのお礼

なんて、勢いよくテザー先輩の部屋に来てみたはいいが。 「……どうしよ」  俺は完全に部屋の前でたじろいでしまっていた。         〇  テザー先輩の部屋は、俺の部屋の二つ上の階にある。部屋の場所も知っている。一度入った事だってある。 ...
第3章:俺の声はどうだ!

133:飲み会の約束

「あ、ありがとうございます!」 「おう。だから気にせず来い」 「ふふ。良かったね。サトシ」 「うん、良かった」  打ち上げ。飲み会。まさか、この世界でそんな集まりに呼んで貰えるなんて、ここに来たばかりの頃は思いもよらなかった。 「飲み会かぁ...
第3章:俺の声はどうだ!

132:久々の再会

「あれ……もしかしてサトシ?」  懐かしい声が聞こえてきた。  久々に聞いた気のするその声は、最後に聞いていた声とは違い、特有の張りと円みを帯びていた。 声だけで分かる。元気になったのだ、と。 「……おう、エーイチ。元気になったみたいだな」...