第4.5章(外伝):金持ち父さん、貧乏父さん その3

第4.5章(外伝):金持ち父さん、貧乏父さん その3

82:金持ち父さん、貧乏父さん(82)

『そう、だったな』  オポジットはそれまで、自身の声も何か妙な緊張で上ずっていた事を知った。自分としたことが、やはりいつもとは違う状況に、心を乱されていたらしい。  そう、内心笑って思えるくらいには、子供達の会話は彼を平常心へと戻してくれた...
第4.5章(外伝):金持ち父さん、貧乏父さん その3

81:金持ち父さん、貧乏父さん(81)

『おい、村長。スルーはアンタの息子だろう』 『村の責任者として、息子かどうかは度外視すべき事だ』 『それにしたって、権抜はあんまりだ』  オポジットはもう一度深く息を吸い込んだ。 そう、それは、どう考えてもやり過ぎだ。 権抜とは、この村の自...
第4.5章(外伝):金持ち父さん、貧乏父さん その3

80:金持ち父さん、貧乏父さん(80)

その時、既に日は大きく傾いていた。  山奥に沈みかけた赤く色付く太陽を横目に、体の大きなその男は腰に手をあて周囲を見渡していた。 『……もうすぐ、日が落ちるな』 『どうする、オポジット』 『どうしたもんかね』  オポジットと呼ばれたその体の...
第4.5章(外伝):金持ち父さん、貧乏父さん その3

79:金持ち父さん、貧乏父さん(79)

『なぁ、イン』 『どうしたの、お父さん?』  こちらを見上げ首を傾げてくる我が子を、俺はソッと最後にもう一度抱き締める。インの体は昔よりも随分大きくなった。きっと、このままどんどん大きくなって、俺なんてすぐに追い越してしまうのだろう。 『も...
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78:金持ち父さん、貧乏父さん(78)

○ 『っは、っは、っは』  駆け抜ける、駆け抜ける。  俺は地面を蹴り、足を前へと必死に動かす。動かし続ける。 一晩。野生を知らぬ、人の手の中で生きていた家畜達にとって、昨晩は一体どんな気持ちで過ごしたのだろうか。  楽しかっただろうか。 ...