第4章:即時、一杯の酒

第4章:即時、一杯の酒

240:飛べない鳥

「アウトの中に入らせてくれない?」 「ん??」  俺の中に入る?それはどういう意味だろう。下世話な事を考えて申し訳ないが、情交的なソレしか思い浮かばない。 「それは、俺と……情交したいって事?」 「わお!ほんとにアウトって情緒の欠片もないね...
第4章:即時、一杯の酒

239:かったるい世界

「そうそう。ビヨンド教ってさ。ずっとあったんだけどね。今みたいになったのは、僕のせいなんだよ!」 「へえ」  急に明るい声で語り始めたヴァイスに、俺は適当に相槌を打つ。 そんなの、今更どうだっていい。始まりも終わりもない事を、他でもないヴァ...
第4章:即時、一杯の酒

238:真っ白な手帳

「あぁ。だから、だったのか」  俺はヴァイスのお話を聞きながら、心の底までストンと落ちて行く“何か”を感じた。  そうか、そうか。  そう言うことか。  俺はいつも思っていた。  どうして“ぎょうかん”なんてまるで読めない俺が、あんなにも無...
第4章:即時、一杯の酒

237:憎い世界

「ヴァイス。泣いていいよ」 「何言ってるの。他人にばかりそんな事を言って。アウトだって、いっつも我慢してるじゃないか。僕たちは、正反対だけれど、こんな所は良く似ている。もう、泣けないんだよ」 「泣けない……」 「そうさ、アウト。君は優しい。...
第4章:即時、一杯の酒

236:鍵を持たぬ者

「一つもない時も、ある」 「え?」 「それがまさに、アウト。君たちのように、前世の記憶を持たない者達だ」  それまで、遠い、遠い、すごく遠くの物語の中だと思っていた世界の中に、一気に俺の名が入ってきた。 「アウトのように前世の記憶の無い人々...