第2章:生酔い、本性違わず

第2章:生酔い、本性違わず

63:先生

「さぁ、どうぞ?」  そう、どこか舞台に上がる役者のように俺に向かって差し出された左手の優雅な動きに、俺は不覚にも見とれてしまっていた。 ただ、そんな舞台を夢中で見つめる観客のような気持ちは、もちろん長くは続かなかった。  それはそうだろう...
第2章:生酔い、本性違わず

62:怒り

--------- ------- ----  僕は今、久々に怒っている。あぁ、怒っている。  誰にかって。そりゃあ、ここまで僕の気持ちを乱高下させる事の出来る人間なんて、この世にたった一人だ。 『イン、なんでまた髪の毛が濡れてるんだ?』 ...
第2章:生酔い、本性違わず

61:恐怖

「さて、約束のモノだが。どうだろう。アウトの絵を僕が描くというのは」 「えっ、えっ。絵をくれるって」 「そう、だから。僕がアウトに、アウトの絵をプレゼンとしよう」 「そんな悪い!こんな下手くそな絵を見せただけで、そんな……」  アズからの余...
第2章:生酔い、本性違わず

60:絵

「あの日、大丈夫だったかい?」 「あぁ、えっと。まぁ。ハイ」  アズの言う“あの日”に俺はあの日からの一連の衝撃展開を思い出し、なんとも言えない表情を浮かべてしまった。  大丈夫だったかと問われれば、特に日常に何の変化もない。  けれど、俺...
第2章:生酔い、本性違わず

59:再び、画家

〇 「あぁ、いらっしゃい!お久しぶりですね!アウトさん」 「あ、ハハ。お久しぶりです」  そう言って笑顔で迎えてくれた店主の笑顔に、俺は懐かしさと少しの後ろめたさで乾いた笑みを浮かべた。  あぁ、本当に久しぶりだ。 「今日はどうします?」 ...