第4章:即時、一杯の酒

第4章:即時、一杯の酒

254:吐露と交代

〇 『子供の頃は、大人になったほうが何でも出来るんだって思ってた。けど、それは違ったんだ!』  それまで穏やかだったインの声が、徐々に大きく、そして激しくなっていく。それはまるで、鉄砲雨のように激しく俺の身に降り注いでいた。  もう、相槌も...
第4章:即時、一杯の酒

253:家出

〇 「へぇ、ここがアウトの中かぁ!広い広い!すっごい!これ、普通に“世界”じゃん!」 「……ここが、アウトの」  俺の隣で、ヴァイスがはしゃぐように草原を駆け回る。その姿は、あまりにも彼の見た目に合っており、元々この世界の住人なのではないか...
第4章:即時、一杯の酒

252:降り注ぐ雨

『マスター。風邪って物凄く辛いんだよ。知ってる?』  そんな、なんて事のない問いかけから始まった彼の話に、俺は、うん、うん、とひたすら静かに頷いた。ぽつり、ぽつりと語られる彼の言葉は、まるで降り始めたばかりの雨のように、少しずつ俺の身を濡ら...
第4章:即時、一杯の酒

251:幸福の遺りカスと

インが死んだ。  けれど、俺は未だに生きている。ダラダラと、特に意味のない毎日を、ただただ無為に生きている。  正直、インが死んだ後の俺の人生で、記憶に残るような事は殆ど何もなかった。インから贈られた“あいたい”という言葉を見た瞬間、俺は完...
第4章:即時、一杯の酒

250:キミの話を聞かせて

「っは」  ヴァイスにとっては、俺の精神がアウトのマナに弾かれて消えて無くなろうが、そんな事はきっとどうでも良いのだ。 いや、それを言うなら、コイツが口癖のように口にする“お気に入り”に該当するアウトすら、ヴァイスの“退屈”をしのぐ好奇心の...