第4章:即時、一杯の酒

第4章:即時、一杯の酒

259:家出と癇癪

〇 『インっ!おい!こら!インっ!?』  俺はエプロンを投げ捨て、入口へと勢いよく駆け出した。けれど、外には大勢のお客さんが居たようで、インはその人込みの中へスルリと入り込むと、一気にその姿を消してしまった。 『クソッ!さすが、森育ちの野生...
第4章:即時、一杯の酒

258:月の同族嫌悪

『なんなんですか!マスターがお休みって書いているのに!貴方にはコレが見えないんですか?』  俺と扉の間に、一人の兵士の格好をした若者が割って入ってきた。  俺を見上げてくる、その戸惑ったような表情。あぁ、どうやら、コレもどこかで見覚えがある...
第4章:即時、一杯の酒

257:大切な名前

『おや?貴方は初めて見る顔だね』 「ん?」  そう、俺が吸い込まれるように一歩、また一歩と酒場への道のりを歩いていると、急に隣から声を掛けられたていた。  まさか、この世界の住人に声を掛けられるとは。俺は思わず目を瞬かせて、声のする方に顔を...
第4章:即時、一杯の酒

256:アウトの酒場

〇 「これはまた驚いた!普通に街じゃないか!」 「そうだな」  広い草原を抜けた先にあった、民家の立ち並ぶ場所。そこは一歩足を踏み入れると、不思議な事に、一気に周囲の様相を変えた。  そこは建築様式こそ様々だが、至って普通の城下町の風景が広...
第4章:即時、一杯の酒

255:真名

『オブはインとの約束、忘れてないよ。今でもインの事だけを待ってる。もう、大丈夫。悲しい事なんて何もないから』  そう、腕の中のインへと、俺が溶け込もうとした瞬間、俺の体はインから乱暴に引きはがされていた。 『なにを、言っているの?』  そう...