第3章:俺の声はどうだ!

第3章:俺の声はどうだ!

165:人間のオス

「お兄様!お兄様ったらお兄様!私の方を見て!私の話を聞いて!」 「いやだ」 「むーーーー!聞いて!マティックが大変な事を言ってたの!お兄様と国政について話さなきゃなの!」 「あぁ、うるさい。それは後で聞いてやる。今は出て行け」 「今じゃなき...
第3章:俺の声はどうだ!

164:名前で呼ばれたい

俺は幼い頃からずっと声優になりたかった。 ≪それでは、一体どうして人類はここまで成長できたのか。その数億年に及ぶ、長い歴史を紐解いていきましょう≫ 『ん?この声、誰だ?』  テレビから聞こえてきたナレーションの声に、思わず顔を上げた。淀みの...
第3章:俺の声はどうだ!

163:唯一の自由

「そう、教わってきた」 「え」  イーサの声から、感情が消えた。なんだ、この声は。イーサの、金弥のこんな声は初めて聞く。 「王になる者は、そのように思っていなければならない、と。何故なら、実際に王には、全てを動かす力が手に入るからだ。しかし...
第3章:俺の声はどうだ!

162:顔にかける

『……さとし、さとし。ごめん、ごめんって。ゆるして。きん君、なんでもするから』 『……』  一週間、金弥と口を利かなかったあの時。 金弥が余りにも憔悴するもんだから、きっちり一週間目で、俺は金弥を許してやる事にした。いや、まぁ偉そうな事を言...
第3章:俺の声はどうだ!

161:掌で転がされているのは、

マティックの言葉に、イーサの表情が一気に明るくなる。ついでに、俺を抱き締める腕にも、更に力が籠った。 「っ!あぁ!」 「本当はこの後も、びっしりとスケジュールは埋まっていますが、私が一刻分は調整しましょう。この後、全ての業務に癇癪を起さない...